戦国時代の交通事情①道路と橋
戦国時代は戦の時代でしたので、敵の軍隊が攻め込んできにくいよう、川には橋をかけず、道路は整備されていなかったといいます。
確かに橋のかかっていない川は、天然の堀で、平野部にある城は、川と川の合流点にある高台に築くことが多いですね。
更に後ろが崖や山であれば、申し分がなく「天然の要塞」と呼ばれています。
また道路も、現在残っている官道と呼ばれる道の中で、山間の道は大変道幅も狭く、険しく、まさに隘路とはこのことだなと感慨深いものがあります。
ですから防衛という意味では、確かに道路も整備されておらず、川には橋がないのかもなぁ?と、そんな気もするのですが、戦国時代は100%、日本全国津々浦々そうでした、とは言い難いという話を今回はいたします。
拙作「戦国時代の死生観」をご覧頂けますとありがたいのですが、当時の常識では亡くなる瞬間の心境で、没後の行き先が決まるとされていました。無事に極楽浄土へ行く為には、付け焼き刃ではなく、普段からの生活態度や作善が重要であるとされていました。
当時は死を常に身近に感じる時代で、没後極楽浄土へ行くことを、人生の目的として、皆様は生きておられたそうです。
そして殿の作善の中には、「道路を整備したり、橋をかけたり…」というのがあります。
道路の詳細に関しては、また別項を設けますが、よく使われる道では、排水の為におおよそかまぼこ状に表面を搗き固めて整え、全ての道ではないのですが、道に沿って、かまぼこを維持するために木を植え、整備をされていたようです。
そうした整備された道でも、突然道が狭くなっている場所があり、そこには関所が設けられていたそうです。
しかし国境にあたる山では、隘路のところが多く、また平地部でもあまり使われていないところでは、行き届いていない場所もありました。
橋もところにより、架けたり、架けなかったりです。
当時の川は護岸工事をされておりませんし、しばしば氾濫いたしますので、そんなに橋はかけられません。
ちょっとした川なら、地元民の皆様は浅瀬を熟知されており、そこを渡っていたようです。
大きな川や湖など橋をかけるよりも、渡し舟で行き来していた記録が残っています。
また記録に残っていないだけで、大小に関わらず、往来の多かったり、小さな川でも浅瀬を渡るのが不便だったり、渡しの存在は臨機応変なのかもしれません。
『信長公記』で、庄内川の「松川の渡し」という言葉がでてきます。弟の秀孝が亡くなる場面ですね。
この頃のこの辺りの庄内川がどのくらいの川幅、水深だったのかは分かりませんし、どこに目的地があったのかはわかりませんが、川狩が出来、尚且つ馬で渡れるような浅瀬が近くにあるけれども、渡しが出ていたようです。
その舟のつく湊は、関所の役割をしており、国衆や大名の管理下にありました。
大名が軍を動かす時には、あたりの舟を集めて渡したり、或いは舟橋と呼ばれる舟を横に並べて、板を渡し、そこを通るといった即席の橋をかけるなどしました。
ええ?そうかなぁ?と思われた方もおられるかもしれません。
もう少し、深く話をしましょう。
戦というのは、大名にとって、お金の面でも、人材という面でも、大変負担の大きなものでした。
それは、後の帝国軍との大きな違いだ、と言われています。
血を血であらう戦国時代だからこそ、普段から調略が盛んに行われましたし、武士の教育の中には、経済がありましたし、村のことを学んだり、経営的な勉強もありました。
その中では道路というのは、経済を回して、税を取る、有用な設備でもありました。
江戸時代とは違い、国衆の中には武士でありつつ、商人であるという方は大変多く、例えば信長公の周りでは、母親の実家と言われている土田氏は問丸、側室の実家生駒氏は問丸と馬借を営まれていましたね。
舟を何艘も持つ問丸の国衆は水軍であり、馬を何頭も所有している馬借の国衆は兵糧、道具などを運ぶ荷駄隊になります。
その他近年、田原戸田氏の城が発掘調査されて、大大名や大きな寺くらいでしか所有出来ないと考えられていた陶磁器などが出土し、田原戸田氏が大変豊かな商人国衆だったことが分りました。
また秀吉のお世話になった松下氏も、そういった貴重な陶磁器が出土されており、こちらも豊かな商人国衆だったと見られています。
そして熱田、津島なども同じです。
彼らのように、湊や道を押さえている商人国衆を家臣にすることは、いざ戦の時に、川を渡す舟をコントロールし、高速のジャンクションを閉鎖するような効果をえられるだけではありません。
一番の利点は、湊に集まる年貢や物資を、兵粮として押さえられるということでした。
彼らに不満を持たせず、富ませ、関所を経営させることは、大名を富ませる一環になります。
その為に道路整備は、重要なものでした。
ということで、戦国時代の交通事情の中で、道路や橋というのは、それなりに整備されてたよという話でした。
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