信長公の頭……(訂正2022.6.20)
その時代、その土地で様々な風習、文化があるというのは当たり前です。それがいつの間にか無くなったりするわけですが、その無くなるそのきっかけとか、先端というのか、波頭部分の人っていうのはどういうものなんだろうなという話です。
それは昔、昔のこと、平安時代において、公家から庶民に至るまで、皆様髷をゆい、それを布で包んだり、帽子を被ったりして、髷を見られないようにしておりましたのは有名ですね。
不思議ですね。
なんででしょうか。
その隠しっぷりは見事なもので、例え戦の時でも、兜に髪の毛用の穴を開け、髷を作ってそれに布をかぶせることの邪魔にならないようにしました。
それはいわば、いまでいうパンツのようなもので、下半身を晒すほどの羞恥を覚えさせたと申します。
で、ですね。
日本史の中で出家していない方で、初めてその頭頂部分を晒した姿を残したのは、他ならぬ信長公にあらせらるそうでございます。
(訂正 青切さまより「騎馬武者像がありますよ」とご教示いただきました!たしかに!頭頂を晒しておられるのは、こちらの像の方が早かったです。申し訳ありません。謹んで訂正致します。)
騎馬武者像
e国宝
https://emuseum.nich.go.jp/detail?langId=&content_base_id=101003&content_part_id=000&content_pict_id=000
平安時代の感覚的に言えば、私たちは織田信長公のか…か…かはん(自粛)を、拝見させて頂いている的な?
その後は忠臣と呼ばれる丹羽長秀さん、前田利家さん、そして豊臣家の忠臣石田三成さんとか続くのですが、少々複雑な想いになりますのは、それが当時の肖像画というのは、死後に供養のために描かれるものがほとんどだからです。
亡くなると体が無くなります。しかし、当時は霊魂、魂と呼ばれる、個性ある命は不滅であり、極楽、地獄などのあの世に住まいを移した後も、或いは成仏しない状態でこの世に留まられておられる場合を含めて、なんらかの形でこの世に干渉をすると考えられていました。
その干渉を良いものにする為にも、極楽に行かれた場合は更に良く、成仏してない方は到彼岸の為に、そして地獄に行かれている方もそれなりに幸せになるように、法要、供養というものを盛大に、また何度も重ねて行きました。
何故盛大に、なおかつ何度もかというと、死後の法要の功徳は開催する側が7分の6、取ってしまうと考えられていたからです。
そういえば前田利家の弟の佐脇良之さですね、彼の三百回忌法要が大政奉還後の明治時代に行われたという資料を見た時には、ちょっとビックリしました。
確かに加賀藩というのは、日光東照宮を藩内に勧進し、歴代将軍の忌日には藩士まで参詣するという、百万石を維持する気配り上手ですが……
千利休や初代藩主になった大名の三百回忌法要が、明治初期に執り行われた記録はありますが、他家に養子に行き主家を出奔した挙句に討ち死した、藩主の弟の三百回忌は珍しいかと思われます。
それは江戸期にまとめられた熱田加藤家の記録や、豊臣政権下で書かれた「信長公記」の「小姓たちは信長公の怒りを買って徳川家に出奔した」というのは、嘘じゃないかと思わせるものがあります。
話がそれました。
ちなみに上記の件は、拙作「加藤弥三郎ら、小姓たちの出奔への考察(とりあえずの結論)」https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054890230802/episodes/16816452220566372598
で考察致しました。宜しければご覧ください。
そうした法要などの際に、形代として使われるのが、死後に作られる肖像画や木像な訳です。
勿論、戦国当時、正式な席や客人を招いたときには、烏帽子などを被っていましたが、「洛中洛外絵図」を見ても普段の生活では、下の身分から烏帽子をかぶらなくなっていっていました。
でもねぇ、信長公はどうお考えだったのでしょうか。公は急死されていますから、置文はされておられないと思われます。
公も御子息の絵を拝見しましても、お髭や
戦さの折には月代を作る風習で、頭頂部は段々生えなくなると言いますから、晩年は加齢もあり、産毛のような毛がぽやぽやと生えておられたのでしょうか。
そこまで写実的に描いてなくて良かったと思う次第でございますな。
で、そういうのを形代に、残しても構わぬって思われていたんだろうかなと思うわけですね。
伊達政宗は「独眼竜」で鳴らしましたが、置文に「目はちゃんとかいとけ」とされておられます。
信長公の頭を見ながら、拝見してても良かったですかな?と思う今日この頃でございます。
安土城の天主で、「余が供養の絵は、烏帽子被らぬが良き」と申されておられてたら、良いなと思います。
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