戦国武家の動物たち

 戦国時代の大名や武将たちは、どのような動物を飼っていたのでしょうか。

以下は戦国時代の史料を読んでいて、偶然出会った動物たちを書き記します。


 戦国時代と言えば、まず馬でしょう。

彼らがいかに馬を大切に思っていたか、馬の毛並みを表す言葉の豊富さからも伺い知れます。

しかも馬には「馬医師」という専門の医者がおり、調子が良くないとなれば彼を呼び、更に祈祷をした記録が残っています(家忠日記)


 それから鷹狩に使う鷹も大切にされていました。

鷹狩は武家の嗜みでもあり、大切な鷹が飛んで行ってしまうと(しばしばある)小姓や馬廻が探し、それでも見つからなければ近隣の武将の元へ知らせが入り、みんなで協力して探します。

その時には、お抱えの鷹匠も奔走しています。

鷹匠は近隣の武将の鷹とつがいにし、繁殖にも力を入れる仕事も担っていました。

鷹匠は各大名、武将たちは複数人雇っていたようで、宿老など上級武将の鷹匠は、配下の武将の所へ、何をしてるのかはわかりませんが、一月に一度は顔を出している様子が、記録されています。


 鷹狩に使う犬も忘れてはいけません。

天正七年九月晦日、『賀茂別雷神社文書』の「錯乱方職中算用書」によると、信長公の鷹狩の下見に、役人たちが上加茂神社にやって来ました。

その時の記録を見ると「上様餌差来時夕食七人分 一斗三升四合 犬二疋ノ飯 六合」。翌日には「朝食四人分 一斗 犬ノ飯二疋分 六合」と書かれています。

これは米に換算してかかったお金を書いていますので、実際、犬が米を三合食べていたわけではありません。


鷹狩の精悍な犬の姿は、上杉版の洛中洛外図屏風にも遺っています。


 あと観賞用なのでしょうか、小鳥の存在が、信長公の献上物に記されています。

同じく「錯乱方職中算用書」の天正二年五月には「こつはめ 二斗五升 さしこの代 五升 ささい 四斗 同かこの代 二斗五升」と書かれています。

金子拓氏の解説によると「小燕こつばめ、鳥籠、鷦鷯みそさざい、その籠の代金」だそうです。


これは氏の計算によると全部で六百文、こつはめは八千円で、ささいは一万三千円くらいだそうです。


これは小鳥の値段として高いのか、安いのか、今ひとつわかりませんが、小鳥を捕まえて売買していた人がいるということが分かります。


これとは別に、上加茂神社は太田牛一にも駒鳥を贈っています。


こうした小鳥を見て、皆さま、しばし心を和ませていたのですかね?

それとも御内室様やお子様方にプレゼントしたのでしょうか。


なかなか武将たちの日記や軍記、家史には出てこない彼らの日常生活が垣間見る思いがいたしますね。


 戦国期の武将の幼名に、「猿」というのはたまに見かけます。

これは頭が良いと言う意味でしょうか、それとも新生児の顔の様子からつけたのでしょうか。

猿回しの芸は昔からあり、身近な動物だった様ですね。

厩の話をしましたおり、屏風絵に猿の姿が犬と共に描かれていましたね。

どちらも放し飼い?で、少なくとも喧嘩もしてない様子で、お互いの存在に慣れている感じも受けます。


猫は日本でも紀元前2年から、一緒に暮らしていたことが、先頃判明しました。

戦国期でも割と飼われていたように書かれており、信長公が鷹の餌に猫を取り上げに来るという噂で、猫を隠したという奈良の話が載っています。

猫好きで信長公推しの私は、頭が飛んでいくほど振りまくって、否定したいところですが、どうでしょう。

猫よりも、ネズミなどの方が鷹の餌に向いていると思いますので、その辺りの兼ね合いでゴシップ的に悪く言われている感じがしますね。


資料を見ていて偶然出会えた動物はこれくらいですが、まだまだ他の動物が買われていたかも知れませんし、また庶民の方では、色々飼われていたのではないかと思います。

また見かけましたら加筆したいと思います。


 さて、どんな生き物も長生きしてほしいものですが、永遠に生きられるものではなく、お別れの時がきてしまいます。


そうした場合、これらの動物用の経や葬式、供養の様式も成立しています。

極楽浄土に生まれ変われるように、そして死の穢が浄められるように、手厚く供養していたのですね。



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