戦国期の男色についての考察

「戦国武将で男色をしていた人を教えて下さい」という質問を見ました。


いや、それってむしろ


「戦国武将で男色をしていなかった人を教えて下さい」



豊臣秀吉を上げる場合もありますが、信長公、秀吉は徳川時代に改竄されていますので要注意です。


男色は、権力者側から見ると、部下の忠誠心を育み、身を守るための有力な手段でした。


それは大名に限らず、武将たちも同じです。


その為にも「常識である」「嗜みである」「殿の相手に選ばれるのは栄誉である」という風潮が醸し出されていました。


人心掌握に心血を注いでいた秀吉が、その有効な手段を利用しない筈がないのではないかなぁと思います。


戦国期は公家、僧侶、武家と広まっていましたが、まだ民衆にまでは差程男色は広まってなかったと言われています。


見目麗しい小姓を用意したら、姉妹の有無を聞かれたというのは、秀吉農民説を演出する為の逸話かもしれません。


しかし、例外は必ず存在しますから、どうしても女性一本槍の方もいる筈だとは思います。


裾野からジワジワと検証していくことをお勧めします。


そういえば、こういう見てきたようなエピソードは、誰が漏らすんでしょうね?

信長公の乳母の話とかも、なんで知ってるん?

噂話なんでしょうかね。


 男色が常識といっても、恋愛感情があったかどうかは別です。

あくまで、優秀な家臣との絆を深める為の手段がメインで、そこにどれだけの情がのったかはその人たち次第です。

そして、行き過ぎた情というのは悲劇を生みます。



 軽く信長公の周りを見ましても、信長公の実弟も本人と近習、コロコロ変わる悲劇の守山城主は家老の行き過ぎた男色の情が遠因となり、「あの子ばっかり贔屓にする!」という別の家臣のジェラシー問題で破綻していきました。

以前書きました清須織田大和守家も、滅びは家臣の男色が機縁となりました。


権力者の自制心とバランス感覚は大切だなと感じ入ります。



 時に女禁の戦場での性欲の捌け口として、という説明があります。


大名クラス、つまり大将が宿営する場合、敵領ではない限り、副い臥しの女が近くの村から出されました。

副い臥しが何処の身分まで適応されるのかは不明ですが、人がいれば、武将と呼ばれるクラスまでは出たような感じです。


 また反対に領地の村から掻き集める百姓の皆様は、配給される4日目からのご飯目当てに、一家総出で参陣されることもあり、その中におっかぁや娘っ子もいたり……


また、山崎の合戦の折に秀吉から招待を受けた茶人たちが山の上から見物したというように、合戦は見物客が現れるものでもありました。

これも別に男性に限らず、女性たちもまさに高みの見物を決め込んだものです。


勿論、物見遊山というより、おらが村は大丈夫かしら……というものから、いざ合戦が終われば、我先に死体から金目の物を剥ぎ取ったり、落ちている矢や武具を拾い集めたり、落人狩りに参加してお金を稼ぐ為でもありました。


当時は夜這い形式で、両者の合意さえあれば大丈夫な風習もあったので、もしかしたら、戦後を待たず小遣い稼ぎにちょっと……

もしかしたら、吊り橋効果で大恋愛が生まれた可能性もあります。



更には女人鉄砲隊(池田恒興娘)だの、女人槍隊も居るわけですし……

勿論、流石に大方様を始め、大名の子女が参陣するのは少ないでしょうし、圧倒的に城を護っている女性の方が多いでしょうが、実はこの様に女人禁制ではありませんでした。




 滞陣の場合はそれこそ中級から下級武士用に、手軽な出会いから手軽な交合まで、様々な遊女が出入りしました。


むしろ、武将クラスより、配給のない近習、特に病気を懸念して遊女と遊べない嫡男系がそういう意味での男色に走りそうです。


特に上のクラスになると、ハニトラや間者も入りますので、うっかり知らない女性に手を付けられません。

それならば、いつも見知った彼とどう?という感じになるのも分からなくもなくもない……かもしれません。




ということで、男色をしていない武将を探すのは難しい。

だって戦国時代の常識だもんという話でした。


次回はグッズについて考えてみます。




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