戦国期の男色の方法を考察する

前回は、戦国時代の武家の男色は常識だってよという話をしました。


さて


日本の男色の初見は日本書紀。

歴史もあり、そこまで普及している男色なら、需要と供給でグッズもそれなりにある筈です。


「稚児之草子」という絵巻の鎌倉時代末期の写本が残っています。

残っていますが、絵巻だけに内容がすごいのでその現物は公開されず、チョロチョロと小出しして展示されたり、写しの写しや解説本が出回っています。

写しの写しでも、これは鎌倉時代の物だからか、読めません。

いつ写したと書いてあるところですら読めません。

文字がというより書いている言葉が???です。


だもので素直に現代語訳を読みます。


稚児の夜伽に行く前の下準備の様子が描かれています。

張り型を入れます。

抜きます。入れます。出します。

(……いたくないんですか?)

丁子油を筆で塗り籠めます。

お尻を温めます。


以上です。


丁子油かぁ


丁子油は、現在グローブオイルと呼ばれているものです。

軽い局所麻酔作用があるそうなので、丁度良かったのかもしれません。傷にも良いらしいですし。

ただ「刺激が強い」ので「皮膚への使用は不向き」とアロマの本に書いてあります。


うーん、これははりはりして、局所の痛みを暫し忘れる的な?


腕や足ではなくて、お互いデリケートゾーンですから、無理な感じがします。

多分何かに混ぜていたのだと思います。

例えば「カルピスを飲んだ」と言った時に、原液ではなく、水で薄めたソレを考えるように、「丁子油」と書いておけば、分かるヤツだったのでしょう。

件の「稚児乃草子」、書いている内容が分かりにくいのは、勿論私の知識の問題もあるんですが、すっごい言葉を省略して書いてるせいもありますから……(多分)


では、どんなものを混ぜたでしょう?


ここで、男色文化が民衆にまで広がり、色々話も残っている江戸時代の文献を見てみます。


江戸時代には、「いちぶのり」という、卵白、葛粉、布海苔ふのりを混ぜたものを使用していたようです。

葛粉、布海苔は戦国時代に存在が確認できていますから、使われていた可能性は高いです。

しかし当時、卵の一般使用は禁忌だった為、「いちぶのり」のレシピがそのまま使用されていたとは思えません。


また、この3つのアイテムを混ぜているので、1つ、1つでは満足出来る使用感ではないということではないかと推測できます。


どれも現代でも手に入れることが出来るので、探究心のある方に試して頂けましたら、有難い処です。


私は戦国シャンプー(後日公開予定)を試してるので、是非とも!どなたか!


さて、どなたかのレポートが届くまで、コツコツと考えることをしていきます。

卵白が使えないので、他のものはどうでしょう?


ヌルヌル系で刺激がなさげな物を考えます。


布海苔以外の海藻系はどうでしょう。

例えば海藻を煮て作る心太の歴史は古く、奈良時代には「ところてん」と呼ばれていたそうなので、(寒天は1651年に初出)戦国期にはありました。

こういう海藻系を煮た状態でなんかすれば、どうにかなるかもしれませんね。


葛以外の植物に目を向けると、これも江戸時代に使われていますが、黄蜀葵おうしょっきというものがあります。

この若い果実や根っこを砕いて水に漬けておくと、とろろ状になり、和紙を作るのに昔から使われているものです。

根っこは漢方の生薬として使われ、花も食用にされていたことから胎内への使用もあったかもしれません。

砕いた状態であれば、戦さ場にも携帯できますし、これは良いですね。


以上の物を混ぜ混ぜしても良さげです。


さて、オイル。



丁子以外の油を次に見ていきます。


油は縄文時代に胡麻が中国から伝わり、弥生時代には製油技術が入ってきました。

そこから胡麻油、榛の実油、荏胡麻油、綿実油と様々なものが食用、灯り用として献上されるようになり、戦国期には胡桃、麻の実が油として使われていたようです。

椿油は平安時代から髪の毛や皮膚に使われていたのと言われています。


アロマの本を見ると、榛の実、今で言うヘイゼルナッツのオイルは低刺激で肌にも良いと書かれています。

また麻の実のオイルは、ヘンプシードオイルと呼ばれ、肌に付けても良いみたいです。


吸収率が高いというのは、肌にサラサラで、十分な油分が無くなり、ご使用中不都合があったりするのでしょうか?


とりあえず、低刺激のこれらも丁子油の代わりや、薄めるために使った可能性はあるでしょう。



以上のように単独では刺激が強かったり、粘りが足りなかったり、すぐ乾いたりしたものを上手に組み合わせて使用していたのではないかと思います。



ご使用になられた方がおられましたら、どうだったか教えて頂けましたら幸いです。




そして、事が終わりますと速やかに厠へ移動して……掻き出しておられたそうです。

そのままにしておくとお腹を下すと書いてあります……


甘い囁きはなし!で、そそくさと厠へ……かぁ。


戦場でも事が終わったら、殿の陣幕からまろびでて、掻き出していたのでしょうか?

それとも陣幕の片隅で……



冬場と夏場、最悪ですね!!


トイレの後はヘラ(クソヘラという棒状のもの。上下2回使用で使い捨て)でこそぎ落としていたそうなので、掻き出す用のヘラとかなかったのでしょうか?

紙や布は貴重品ですが、中に入れて染み込ませるというのも一手です。


あと、事前準備も兼ねて、皮袋や動物の臓器に水を入れて、細い竹やら中が空洞な藁やらを付けてパフパフも考えたのですが……

どうなんですかね?


私が考えつく程度なら、昔の必要に迫られている皆様が既に考えて試しているはずです。

男色系の文献は集めていないので、ご存知の方がおられたら御教授宜しく御願いします。


そういえば、全てが終わったあとは、ネギの白いところを蒸したヤツをお尻にあてがって、ケアをしたそうです。


ヒリヒリしそうだけど、大丈夫なんですかね?




なんだか、事前、実施中より事後が大変そうで、もしかして、「健気!」という感じで、一層愛が深まったりするんでしょうか?

なかなか奥深いものですね。


実践された方の報告をお待ちしています。



✳追記


一部、教えて頂きました。

このトロトロ潤滑剤なんですが、相当量が必要なようです。

稚児之草子では、簡単そうに書いてありますが、やはり事前準備というのはかなり念入りにしないとヤバいそうです。

内容物が出ては、殿にご迷惑おかけするので、今日はお呼ばれだなとおもうとご飯は控えるとか……

先に出しておく……とか。


褌が薄汚れても平気な家康公とか、血気盛んで幼妻を妊娠させて、信長公から『貴様は猿か?!』と叱咤された頃の前田利家とかは、気にしないかもですが……

綺麗好きと噂のある信長公では……


それから、こう潤滑剤を塗りこめつつ、何となく弛緩するまで(弛緩するんだ?)……頑張るそうです。


まぢ大変なことだ。


殿から『今晩、どう?』とか声が掛かったら、もうね……丁子油と何かを混ぜて……いや、もうそういうのは常備してあるんでしょうか?

それを取ってきて、おしりの準備を厠とかで頑張っておられたのでしょうか……


そして殿は、それをワクワクしながら、臥所でお待ちになられていた?


奥、深すぎて、もうね、闇しか見えません。


引き継ぎ、ご教示お待ちしています。







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