あの人の出自

秀吉の出自(大政所の血族)

木下藤吉郎秀吉。

極貧の農民から天下へと登りつめた、その人の人生は知らぬ人は居ないでしょう。


その母である「仲」の出自について、現在、追えるだけ書きたいと思います。


明治時代、中田憲信という大審院(最高裁判所)判事を務めた方が、諸家家系図資料集である『諸系譜』を編纂しました。

これは国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能です。


それに拠ると、仲と呼ばれる秀吉の母親は美濃関鍛治の系譜です。

関鍛治というのは、美濃國武儀郡関に住む著名な刀工集団です。

その一人の関弥五郎兼員せきやごろうかねかずの娘であると記されています。


1607年頃成立した尾張清須朝日村の住人である柿屋喜左衛門が、祖父が見聞きした武将たちの話を書き記した『祖父物語』というものがあります。

こちらもデジタルコレクションで閲覧可能です。


ここに「青木一矩あおきかずのりは秀吉の従弟なり」と書かれています。


また秀吉自身が母大政所 仲の侍女に宛てた手紙に

「又申候

われらのおばのきのかみはは

大まんどころに 

きにちがい候にて、めいわく申候はん

ままかわいく候間、わび事の文を

大まんどころへ進上候間、ひろう」

とあります。


この「きのかみ」とは、紀伊守(青木紀伊守一矩)のことであることから、青木一矩が従弟であることは間違いないでしょう。


青木一矩とは、青木官兵衛(紀伊守)一矩(本人悪筆のために自署の諱は推定)。

父は青木重矩、母の名前は不明ですが、母の父親は関兼定と書かれています。

 

一矩は羽柴侍従の一人で、播磨立石城主から越前は柴田勝家の元所領北ノ庄城主へ成り上がり、二十万石を領しました。


秀吉の葬儀では同じく従兄弟の福島正則と共に、秀頼の名代を務めました。


となると青木一矩の母の父親の「関兼定」と仲の父「関兼員」は同一人物になることになります。


この関兼定には於太袮おたねという姉妹がいます。

その人は加藤清信と結婚し、清左衛門清忠を産みます。


関兼定は四人の子女に恵まれます。

伊都(鍛冶屋清兵衛の娘とされる)は伯母の子供、加藤清忠と婚姻し、加藤虎ノ介清正を産みます。


そして青木重矩と結婚し一矩を産んだ娘、大恩院がおり、木下弥右衛門と結婚した仲がいます。


更にもう一人の娘 静室院は杉原家利に嫁しています。


おや?


この杉原家利は一男二女に恵まれます。

朝日、家次、七曲です。

この朝日殿、於こひは婿養子の助左衛門定利を迎えて、孫兵衞家定、ねね、やや、くま、佐渡守(諱は不明、家定とうまくいかず従兄弟の加藤清正の元へ出仕と書かれています)を産みます。


思いがけないところでねねさんと繋がった仲さんはここまで。

秀吉の従弟の青木氏の系図を見ていきます。



さて、青木一矩は一男一女をもうけます。


まず、嫡男は善右衛門俊矩ぜんえもんとしのり 

秀吉の一門衆として、秀吉、秀頼と仕えます。

関ヶ原で改易の憂き目に遭い、秀吉の親友、前田利家に引き取られ金沢で亡くなります。

善右衛門俊矩の子供は、久矩、恭矩、昌矩と長女は木村常陸介重茲きむらひたちのすけしげこれに嫁いで、嫡男重武、重成を生みますが、秀次事件で夫と嫡男を亡くした後、秀頼の乳母として上がった宮内卿局です。

嫡男、次男は大坂の役で相次いで亡くなり、末の昌矩は非常に病弱でしたが、家康の次男、結城秀康に召し抱えられ、のちに酒屋になったそうです。


さて一矩の娘の方は名前を梅と言います。

梅さんは関ヶ原の年に十五で家康公の側室に上がり於梅の方、のちに本多弥太郎正純の継室になり、正純が例の釣り天井事件で幽閉されると、出家して梅香尼と称し、なくなった後、蓮華院と呼ばれます。


このお梅さんが何故家康公の側室に上がったかと言いますと、家康のおばあちゃんがお梅さんの叔母さんだった縁だったそうです。

これは『幕府祚胤伝ばくふそいんでん』(竹尾善筑編纂、江戸時代)に書いてあります。


おや?


秀吉のお母さんの縁は、家康公に辿り着いてしまいました。

次回は、家康公のおばあちゃんたちの話をしたいと思います。







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