あの人の呼び方(基本大名家)

(随時加筆あり)


※一人称

一般的には「余、予」(どちらも読み方は『よ』)

信長公は自分のことを普段は「余」などは使わなかったという話もあります。わざわざ、「余」と言わなくても、周囲は分かるからだそうです。


目上の方に対し

此方(こち、このほう)

此処許ここもと 一般に面と向かって話をする時に使う


同輩、それ以下に対し

身、身共みども


※二人称

様は同系統、殿は違系統に使う。

貴様、貴殿

信長公はどんな人に対しても一律「貴様」だったそうです。

ただし今のオラオラ系ではなく、「あなた」という柔らかい丁寧なニュアンスでした。


目上に対して

貴公

其処許そこもと様(殿)

御手前様(殿)


御身おんみ(身分の低い者が目上に使う)

御事おこと(身分の低い者が目上に使う)


同輩、目下へ

其方(そち、そのほう、そなた)

貴君


敵対関係の人へ

おれ、うれ、うぬ、おのれ、おどれ 汝


複数形

基本的に「衆」をつけます。

各々方おのおのがたというのもあります。



女性へ

御許おもと(様、殿)



大名家であの人を呼ぶ場合


織田三郎信長公(相続権を持った男児、後に当主)の場合。

因みに三男だから三郎ではなく、織田家初代と言われてる織田親真の通称が三郎で、嫡男(跡目相続する男児)に与えられる通称が「三郎」なので、元服時に織田弾正忠家の跡取りであった信長公は「織田三郎信長」になりました。


転生してうっかり「信長様!」と呼ぶと、即刻首と胴が離れるので、よその人の時には「三郎殿」、出仕できたら「三郎様」と呼ぶといいかと思います。





(注)例えば信長公が名乗った「上総介」は今川氏に対する嫌がらせだったり……

この頃の方々は叙位された官名の方が少なく、自称が多いのでここでは「役職名」にまとめさせていただきました。



『』は信長公からの呼び方。

✳吉法師時代

*父

吉法師 於吉

『(御)父上(様)』『弾正忠様』

*母 (土田どた御前)

吉法師様

『(御)母上(様)』

(正室以外の子供からは)『御母上様(側室の子)』『土田どたの方様(庶子)』

*乳母

吉法師様、若(様)

大乳おおちち』『於乳おち

*傅役

吉法師様、若(様)

『爺』『(通称、役職名)』

*小姓衆

若(様)、吉法師様

『万(幼名の一番上の文字)』『於犬(於+名前の一番上)』『(小姓元服後稀に)通称』

(基本的に小姓は生涯、正式な文書においても幼名で呼ばれる(森於乱、万見仙(万見仙千代)など))


*母以外の側室、父の家臣

若(様)、吉法師様

『〇〇の方様』『(通称、役職名)』

*庶兄 (相続権の無い連枝扱いの兄、織田信広など)、連枝

吉法師様

『(御)叔父上(関係性)(様)』『(通称、役職名)』

*兄(正式な側室の異母兄、および実兄)

吉法師(様) 

『(御)兄上(様)』 『幼名様』『(通称、役職名)様』 

*姉

吉法師様

『(御)姉上(様)』『〇〇姫』    

*弟及び妹

(御) 兄上様

『(幼名)』『〇〇(姫)』


*同系統の大名、家臣

弾正忠家(父の通称、役職名)の若(様)。吉法師様

『通称、役職名、城の名前様』

*他所の家の大名、家臣

弾正忠家(または父の通称、役職名)の若君(殿)。

『通称、役職名、城の名前殿』


✳元服後、跡目相続前(元服時には嫡男は決まるはずですが、稀に決まらないことがあります。また相続ならなかった兄弟はこの呼ばれ方をします)

【】内は跡目決定後

*父

三郎(様)(城、住んでいる場所)(様)【次代(様)】

『(御)父上(様)』『殿』『弾正忠(通称、役職名)様』

*母

三郎様 (城、住んでいる場所)様【若殿】

『(御)母上(様)』『(住んでいる場所、城)様』

*父の側室、家臣

若(様)、三郎(通称)様 【若殿、次代様、(おん)跡目様、若弾正忠様】

『〇〇の方様』『〇〇御前』など

『(通称、役職名、城、住んでいる場所)』

*自分の正室

三郎様【若殿】

『妻』『室』『〇〇の方』など

*自分の側室

三郎様【若殿】

『〇〇(名前)』『於〇〇』『渾名』など

*家臣

若(様)、(通称、役職名)様、【若殿】

『〇〇(通称、役職名)』『渾名』 

*庶兄、連枝

三郎様、役職名様【若殿、次代様、若弾正忠様】

『〇〇(通称、役職名)』『渾名』 

城持ちの場合 『城の名前(様)』   

*兄

三郎(様)、役職名(様)、若(様)【若殿】

『(御)兄上(様)』『(役職名、通称、住んでいる所や分家した家に因んだ名前)様』

*姉

三郎様、役職名様、若様【若殿】

『(御)姉上(様)』『〇〇姫』婚姻後『(婚姻後住んでいる場所などの名前)御前、の方、殿』

*弟、妹

(御)兄上様、【若殿】

弟(本人元服後)

『〇〇(通称)』『(役職名、通称、住んでいる所や分家した家に因んだ名前)』

妹(本人婚姻後)

『〇〇姫』『(婚姻後住んでいる場所などの名前)御前、の方、殿』


*同系統の大名、家臣

弾正忠家(父親の通称、役職名)の若(様)。

(本人の通称、役職名、城の名前)様

【若弾正忠(様)、弾正忠家(父親の通称、役職名)の跡目。弾正忠家(父親の通称、役職名)の嫡男。弾正忠家(父親の通称、役職名)の若殿。跡目殿(様)、嫡男殿(様)、ご嫡男など】


*他所の大名、家臣

若君 (通称、役職名、城の名前)(殿)【若弾正忠殿、弾正忠家(父の通称、役職名)の跡目君あとめぎみ(殿)、ご嫡男殿など、基本的に「様」という敬称は使わない】



✳跡目相続後

*父、母

弾正忠(通称)様 、殿との

『大殿』『(御)父上(様)』『(御)母上(様)』そのほか法名など。

*父の家臣、連枝

殿、弾正忠(役職名)様、当代様、(もし守護大名家なら「御屋形様」

『(通称、役職名)』

*自分の正室

殿、(通称)様

『室』『妻』『〇〇の方』など

*自分の側室

殿、(通称)様

『〇〇(名前、渾名)』

*家臣 (連枝、庶兄を含む)

殿、(通称、役職名)様、当代様。(守護大名家なら御屋形様)

『(通称、役職名、領地、城の名前)』『渾名』

城持ち

『(城の名前)』『叔父上(様)』

*兄

殿、役職名様

『(御)兄上(様)』『(通称、役職名、住んでいる場所、法名)様』

*姉

役職名様、殿

『(御)姉上(様)』『〇〇姫』

『(婚姻後住んでいる場所などの名前)御前、の方、殿』「〇〇院(出家)(様)」

*弟、妹

(御)兄上殿(様)、(通称、役職名、城の名前)様、殿

弟(本人元服後)

『〇〇(通称)』『(役職名、通称、住んでいる所や分家した家に因んだ名前)』『法名』

妹(本人婚姻後)

『〇〇姫』『(婚姻後住んでいる場所などの名前)御前、の方、殿』

『〇〇院(出家)』


*同系統の大名、家臣

 弾正忠(役職名)様、(城の名前)様

『役職名(様)』『守山(城の名前)(様)』


*他所の大名、家臣

弾正忠(役職名)殿、尾州殿

『三州殿(家康)』など


※天下をとったら「上様」でも。


※お嬢様の呼ばれ方


市 於市 於市様 市姫

久 於久、久々 於久様 久姫


一姫、二の姫或いは大姫、中姫、末姫と呼ばれることも。



目上から 姉君、妹君。

目下から 姉御、妹御。


一人称 妾


※奥様の呼ばれ方 


結婚すると〇〇の方、〇〇殿、〇〇御前などと呼ばれ、「姫」は使わなくなります。(実家からは呼ばれることも)

旦那様の家臣には大方様と呼ばれたりします。


『出身名』(正室の場合が多い)

信長公本妻であれば、美濃の方、鷺山殿(美濃の鷺山から輿入れしたので)

『名前に因む』(側室の場合が多い)

信長公側室のお鍋の方

『城の場所』

淀殿(君は使いません、諱を読んだ場合と同じ扱いをされますので気をつけてください)

安土殿、小牧殿(鷺山殿かお鍋の方かそれ以外の方か不明)


 

他所の奥様 「御内室」正室の場合「本妻」と書かれたりします。


     

自らは妾。



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