旗・旗印

 初期の旗印は、掛け軸のように、上部に棒を通した長い布を、長い竿に縄や丈夫な紐で留めたものでした。下は留めずに、ペロンと吹き流し状態です。

これを『流れ旗』『長旗ながばた』と呼びます。


これが進化して、上と長い辺の片方を留めるようになりました。

これは『幟旗のぼりばた

読み方は一緒ですが、『昇り旗』とも書きます。




その幟旗の中で、厳重に上も横も包んで留めたものは『縫いくるみ旗』

上や横を長四角の細い布や革()で留めたのが『乳付き旗』

上は縫いくるみで、横だけ乳付きというのも『乳付き旗』です。


幟旗は大きさは様々で、「四方」と呼ばれる正方形のものから長細いものまで多種多様に富んでいます。


幟旗は小さいもので2m、大きいもので10mと書いてあります。

平均的な初期の幟旗の布の丈が一丈二尺だそうで、これは3m 60㎝です。

手持ちの資料を見ると、甲冑を着てその20㎝程上に布があるので、全体で5m以上はありそうです。


平均的な幟旗が5m。

風が吹く日は大変そうです。


さて、幟旗の中で大きなものは「まとい」と呼びます。

最大で高さ10mといいますから、とんでもない大きさです。

マンションの一階分が約3mといいますから、4階の床から1mほど上がったあたりです。

どこからが纏と呼ぶのかは定かではなく、感覚的なものだったのかもしれません。


竿のてっぺんには、飾りをつけるのも流行ります。


小さな流れ旗は『招き』

作物つくりものと呼ばれる飾りは『出し』

と呼ばれます。


それぞれが目立つ色や模様を工夫しました。



因みに数え方は一流いちりゅう二流にりゅう(流の氵を方に変えたのが正式。うちのPCには無かった)




旗印にはおったてて「部隊」の存在を誇示するものもありましたが、背中に背負う旗印もありました。


背中に背負うものは『指物』、『背指物』、『旗指物』と呼ばれます。


背指物は背負う人によって名前が変わります。

足軽が背負えば「足軽指物」

伝令の役目をする使番が背負えば「使番指物つかいばんさしもの

信玄公の百足衆指物むかでしゅうさしものは有名です。


役職上の旗指物は『番指物ばんさしもの』と呼ばれました。


これらは皆、お揃いの指物をつけています。


番指物の中には、『母衣衆ほろしゅう』の『母衣』も含まれるでしょう。

大名家によっては母衣衆が使番だったりするので、役職としては一定しません。

信長公は小姓と近習の中から選抜した親衛隊としていました。


『母衣衆』の母衣は竹や鯨のひげを編んだラクロスのラケットのような形の籠を長い絹の布で包んだ物です。


背後からの矢などを避ける役割があるとされていました。

が、戦国期にはそれも形骸化され、馬印が一般化する前は、目立つ旗印を背に戦う勇猛な武者として尊敬される存在でした。


もし、母衣武者が討ち取られた場合、その首級はその母衣に包まれ、丁重に扱われたと言います。



それから武士が背負う指物は「自身指物」と呼ばれ、これぞ戦国の戦さ場を彩る華でした。


母衣武者の中には母衣の前に、自身指物を指した人もいました。

また母衣武者ではありませんが、母衣を自身指物にしていた武将もいました。








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