旗、家紋

旗・家紋旗

 戦国期の屏風絵を見ますと、たくさん旗が翻っています。



まず『家紋旗』

家紋の付いている旗について見ていきます。


この旗は行進をする時には、先頭を行き、大将が陣を敷く時にはそこへ立てられました。


なので、家紋旗、それから旗印は「陣旗」と呼ばれます。



武家の家紋は、陣旗の歴史です。


 天皇家ではそれぞれ「紋」「お印」をお持ちですが、その昔、大陸から入ってきた物についている紋様を元に工夫を凝らせ、牛車に家ごとの区別用に印をつけたのが始まりと言われています。これらは『公家紋』と呼ばれます。


 最初に公家から下賜されたのは、所縁の神社や寺で、それは『神紋、寺紋』として発展していきます。

武家でもこの神紋、寺紋を持っている家もあります。


 元々武家では、当初は源平合戦で有名な「赤旗」「白旗」でしたが、なかなか戦さのたびに「どっちにする?」というのも煩雑です。

また手柄、褒賞と絡むと自他の区別をつけるためにも、それぞれが目印になるものがあると便利だなと考えるようになっていきました。


また公家たちは武士に戦いを命じると、その証に自分たちの家紋の入った旗や陣幕を下賜しました。

戦後の褒賞に、家紋の付いた武具や日用品などを授けたそうです。

そこに付いている家紋は『下賜紋』と呼ばれ、下賜された武家は自らの家紋として使っても良く、所持することで家格を高めました。


次第に武家は勢力を強めて行きます。


 最初に勢力を持ったのは、公家から武家に転じた「源平藤橘」でした。

源氏の家紋は笹竜胆

平氏は揚羽蝶

藤原氏は下がり藤

橘氏は橘


それぞれが分家をする度に、その家紋を少しずつ変えて所持します。

そして今度はその紋も『下賜紋』として家臣たちに授けられていきました。


また戦国時代が近づくにつれて、新たに武士になるものが増えていきます。

すると彼らは新しい家紋を創造していきます。


自ら信仰する宗教のマークからデザインした『信仰紋』

丸で表されるのは「黒餅こくもち」と呼ばれます。

白抜きの丸でも『黒餅』です。

それは「石持ち」になりたいと験を担いだ『吉祥紋』でした。

強さを誇示し、武運を寿いだ『尚武紋』


新しい家紋はデザイン性に優れ、公家から下された紋よりも武家の好みにあっていました。

それで中には自家の家紋をアレンジしてみたり、新たに自分好みの家紋を作る武家も出てき始めました。


さらに戦国時代には戦によって、大きく身分が変わる者が増えてきました。


まず、出世のためには、大将にしっかと功績を認めてもらわねばなりません。

段々と目につきやすいデザインが人気になってきます。


その結果、立場が上がると、折角ですから家紋を新しくしたい武将、大名も増えてきます。


そんなこんなで、一家で沢山の家紋を所有するようになり、段々と訳が分からなくなってきました。

そこで少し整理をする流れになっていきます。


全ての家の家紋が大体決まったのが戦国時代終わりから江戸時代くらいです。


我が家はコレ!というのが『定紋じょうもん』です。

別の言い方では本紋、表紋とも。

残りを『替紋』或いは裏紋としました。


また、その折に似たり寄ったりの他の家と区別をつけるために、意匠を凝らして『独占紋』を作り上げました。


その他、家ではなく、その武将、大名個人が使用する『自身紋』の『独占紋』がありました。


このように家の印として家紋を発展させた家紋旗ですが、馬印や旗印が盛んになる戦国中期あたりから、旗印の一つに姿を替えます。



平和な江戸時代になると、文化的な意味合いを強めていきます。

家紋は更に華やかに工夫が凝らされるようになっていきました。

戦国時代には武家からは散ると嫌われた桜紋も増えていきます。


 また光秀で有名な「土岐桔梗紋」のように、江戸時代の始まりに戦国期の家紋を微妙に変更する家もありました。

土岐氏をはじめ多くの桔梗紋の家中が「下克上」を起こし死んだ光秀は「不吉」だということで変更をしたそうです。


新たな時代には、新たな家紋をというところでしょう。



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