第5話 地獄

「おい止めろ、止めておけ。」


 仲間が小声で止めるが興奮して分別を無くしているのか、元々そう言う性格なのか仲間の言うことさえ聞こうとしない。


「お、お前は死ね。そうすれば武器も女もすべて俺達のものだ。」


 そう言って引き金を絞ろうとした。刹那、脳を潰した。そして、その男は崩れ落ちた。


 仲間が駆け寄り揺するが反応がない。全員青い顔をして俺を見ていた。


「な、何をしたんだ、隆を殺したのか?」

「さぁ、知らないな。突然気絶したんじゃないのか。もし殺したとしてもお前らの好きな正当防衛だろ。そいつの拳銃は奪わないから大事に使えよ。」


 見つめる四人を尻目に俺たちは先を急いだ。一緒に来たがっているようだが流石に拳銃で殺そうとした手前懇願する事はできないのだろう。

 騒ぎを聞きつけ他の帝国兵が駆けつけて来る可能性も否めない、だからそいつらの事は心配もせず先を急いだ。


 暗い森の中を暫く歩いた。突如、吐き気が襲う。人の脳を潰した感覚が吐き気と共にフラッシュバックする。

 帝国兵は戦闘の為に来ているのだから覚悟があるだろう。

 しかし、相手は日本人だった。戦争する気でもない。只生きたいが為に銃を手に入れようとしただけだ。

 殺す事はなかったのではないか。

 殺さなくても生き残れる方法があったのではないか。

 自問自答する。

 しかし、あの引き金を絞ろうとする状況では、例え、弾が当たらない可能性がったにせよ、相手を殺すしかなかったのではないのか。仕方がないと自分に言い聞かせた。


 この先、東へ進めば山がある。南へ行けば遠回りになる、その上、帝国兵がいる可能性が大きい。だとすれば山で険しくとも東へ進むべきか。


「あの山を越えるが大丈夫か。」

「天城越えね。」


 巨乳の藤城さんが返答する。


「いや天城ではないけど・・」


 藤城さんは巨乳の割にお茶目だ。巨乳と美人という女性に対する男の二大欲求が揃っていると女性は冷たくなるというが藤代さんは冷たくない。

 ただ、その話が本当かどうかは良く分からない。

 日頃女性に冷たくされた経験のない俺には未知の出来事だ。


「私は、もう動けない。このまま、山を遠回りして南下していきましょうよ。」


  えっ?また玉木さん?さっきのヤンキーグループに引き取ってもらえばよかった・・・玉木さんはもう体力を使い果たしているのか顔に生気が無くなっている。


 このまま帝国兵と遭遇する可能性が上昇する危険を冒して南下すべきではないと思うが・・・

 GPSで確認すると少し南下すれば谷津街道と言うトンネルが開通している。

 そこを通って山を越える事もできる。


 しかし、トンネルは逃げ場がない。


 遭遇すれば銃で射殺される可能性もある。数名の帝国兵にアサルトライフルで斉射されれば一人の帝国兵を殺すことが出来ても他の兵士の弾で射殺されてしまう。


 それだけは避けなければいけない。


「玉木さん、途中にトンネルがあるからそこを通れば山を越えられる。だけど、帝国兵と遭遇すれば殺される可能性が高い。それだけは避けなければいけないんだ。」


「だったら、多数決で決めましょうよ。」


 バスで隣に座った綺麗な顔をした小沢優愛が提案した。

 結果、山越えルートに賛成したのは、体力のありそうな高身長の優愛と高身長で巨乳の藤代さんと俺の三人で残り四人はトンネルを通るルートに賛成した。


「優愛、藤代さん。賛成してくれてありがとう。まぁ、仕方がない。」

「え~、なんで優愛だけ優愛って呼んで、私は藤代さんなの?凛と呼んでよー。」


 藤代さんは目をキラキラさせて甘えてくる。


「分かったよ、凛。ありがと。」

「いえいえ、どういたしまして。」

「さぁ、行こう。周囲を警戒しろよ。」


 身長の低い4人はあまり運動をしないのだろうか、それとも俺にありがとうと言ってもらえなかった所為だろうか四人とも暗い顔して疲れを見せている。

 生気のないゾンビのように歩き始めた。少しは元気が出るように一人一人目を見つめて励ますと少しは元気になったようだ。ほんの少し。


 トンネルまでは何事もなく到着した。ここからだ。ここで兵士と遭遇すれば殺される。

 GPSで確認するとトンネルの長さは670メートル。

 

 全力で走っても数分かかる。


 トンネルは直線で出口が見えるのが不幸中の幸いかも知れない。


 しかし670メートルも離れていれば、例え昼であっても出口に人がいるかどうかなど分からないとは思う。まして夜なら尚更だ。


 慎重に周りを見回し、帝国兵がいないことを確認した上でトンネルに入った。


 走るには疲れすぎているから歩くしかない。先頭は俺と優愛そして凛の三人。後方に残りの四人。

 暫くトンネルの中を進むと帝国兵が見えないせいか気が緩んできた。

 その所為か隣を歩く美人の二人に目が行く。

 優愛たちは身長が高い上に低いがヒールを履いているので175センチ位にみえる。俺の身長は185センチあるが10センチしか変わらない。


「二人とも身長高いな。」


 トンネル内に声が響く為小声で話す。


「えー、ありがとう。晶もね。私は170cm位。凛が少し高くて172cmね。」


 目を見つめて話すと、優愛は照れたように話す。

 トンネル内の灯は薄暗く妙な色気を醸し出していて少しヤバイ。

 幽霊が出るとか騒いでる後ろの四人は無視しよう。それどころじゃないだろ。幽霊は何もしないが帝国兵は銃を乱射してくるぞ。よっぽど恐い。


「優愛だけずるいな。晶君、私も晶って呼んでいい?」

「どうぞ。いいよ。」


 凛の方は胸が大きいだけに薄暗い灯の下では更に妖艶さが増すように感じる。顔は優愛の方がより美人だが体は凛だな。

 顔が優愛で体が凛だったらよかったのに・・とは絶対口に出して言えない。

 その点、愛莉はモデルをやっているだけあって美人で更に胸もデカい。未だにプラトニックな関係だが。いや、ただの幼馴染の関係なのだが・・


「逃げて‼」後ろで大きな声がした。


 玉木さんだった。その後ろから、銃を構えた兵士が追いかけてきている。

 玉木さんも偶には役に立つな。


 スケベな事を考えている間に後方にいた兵士に発見されたようだ。

 今はトンネルを半分越えた辺りで、残り300メートルはある。

 走り始めると、兵士が逃がすまいと走りながら発砲してくる。

 流石に走りながらでは当たらない。

 これ幸いと後ろを振り返らずに走る。

 偶には、こちらからも拳銃を撃って威嚇し、こちらにも銃があることを示してこちらを警戒させ慎重にならざるをえないようにさせながら全力で走った。


「トンネル出たら左に曲がるぞ。道なりに真っ直ぐ行ったら弾が当たる可能性がある。そこで待ち伏せて銃で攻撃するから。」

 帝国兵には聞こえないくらいの声で走りながら叫んだ。


「分かった。みんな左へ曲がるわよ。」

 優愛は元気だな。こんな状況でもみんなが落ち込まない様に気丈に振る舞っている。俺も勇気づけられる。


 出口が近づいて来た。後方を確認するとまだだいぶ離れている。

 しかし、発砲し続けている。レールガンなら数百発補充無しで撃てる。たまったものではない。

 遂に出口に到着した。直ぐに左へ曲がる。


 するとそこには帝国兵が数名たむろしていた!


 ヤバイ、片っ端から殺しても銃で撃たれるかもしれない。


 どうする?どこに逃げる?


 逡巡していると頭に強い衝撃を受け意識を失くした。



 女性の悲鳴で目が覚めた。目を開けるとそこは阿鼻叫喚の地獄のようだった。

 女性は全員、全ての服を剥ぎ取られ、帝国兵達は服を全て脱ぎ女性を犯している者、下だけ脱いで犯している者、全裸になって順番を待っている者など様々な格好で犯していた。

 殆どの女性は悲鳴を上げる元気もなく流れに身を任せ悲鳴をあげず嗚咽を漏らしていた。

 優愛もただ嗚咽を漏らし犯されている。帝国兵がにやけ顔でズボンを下ろして腰を振っている。

 ただ一人悲鳴をあげ、手を別の帝国兵に抑えられながら強姦されている凛と目が合った。凛の上で腰を動かしている帝国兵は何か言いながら殴り、悲鳴を上げればまた殴り、手を抑えている兵士と笑い合いながら殴り、殴ることに喜びを感じているようだ。ただ未だ本気で殴ってはいない。


 「ほら、気持ちいいだろ?気持ちいいなら気持ちいいと言え。こんなでかい胸しやがって。日本人は殴られて感じるんだろ。ほらありがとうございますと言え。」


 兵士は凛の揺れる胸を掴み、揉みながら言葉と暴力で凛を責め続けている。


 帝国兵は凛に向かっては日本語で話していた。日本語ができるようだ。日本人に対する悪感情があるのか、単に日本人を見下しているのか、日本人に対する嫌悪の感情を凛の上で吐露していた。


「ほら、喘いで、気持ちいいと言え。これから日本人は中国人の奴隷なんだからきちんと躾けておかないとな。」

 そう言いながら殴った。


 凛が切れたのか、帝国兵に唾を吐きかけた。

 帝国兵の顔に血の混じった凛の唾液が掛かった。その唾液を手の甲で拭い血の混じった唾液だと確認すると突如湧き上がった憤怒が帝国兵を切れさせた。


 帝国兵は両手を使い本気で殴り始めた。


「お前は自分の立場を分かってるのか!お前は大中華帝国人民の顔に唾を掛けたんだぞ!奴隷の分際で飼い主に手を上げやがって!お前は全員で犯したあとで俺の足を突っ込んで一生妊娠できないようにして避妊してやる、有り難く思え。」


 既に凛の顔は原形を留めてはいなかった。





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ただあなたに逢いたくて・・・ 諸行無常 @syogyoumujou

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