覚えていない。彼女のことを、まったく。
けれども事実として存在し向けられる好意の数々は、決して幻ではないのだ。
「思い出させる」
と言った彼女に、僅かばかり思い出さなくても良いような気がしてしまう。
蘇った野球の試合が怖いから、輝く笑顔を魅せる彼女との何かを知ってしまったら、怖いから。
運命は残酷でもあり、不思議でもある。
僅かでも着実と醒めつつある記憶と夢のような時間に、区切りを付ける日はそう遠くないはず――。
甘く甘く、そしてちょっぴり切ないラブコメの世界で彩られる、記憶を巡った物語。
彼女から向けられる純粋なまでの好意と行動で沸騰した糖分が、記憶というフレーズで緩和される。
深い設定で織り成す、過去を思い出すための恋の舞台が、今幕を切った―――!