第63話 なぜだか彼女はいつも隣にいる、そんな女の子だった。(2)


               ◇◇◇◇◇


「そうくん、遅いよ。普通こういうのって呼び出した方が先にいるもんでしょ?」

「いや、かおちゃんが早すぎるんだよ」


 家から歩いてすぐの公園でかおりが俺を見上げた。


 かおりにメールを送ってすぐに家を出たのに、なぜだかかおりはすでに公園のブランコに座っていたのだ。


「で、わざわざこんなところに呼び出してどうしたの?」

「いや、まあ……」


 かおりの隣のブランコに腰を下ろした俺は口ごもった。


 この一週間ずっとこのままじゃだめだと思っていたはずなのに、いざとなると臆病風に吹かれて足がすくんでしまう。俺の悪いところだ。


「あのさ――」

「――かおちゃん」


 心を決めて口を開いたが、かおりがなにか言おうとしたところにかぶせてしまった。


「かっ、かおちゃん先にいいよ」

「そうくんが用あって呼び出したんだから、そっちが先に言いなよ」


 かおりに言われて、俺は立ち上がり大きく息を吐いた。


「えっと、じゃあ言うけど……この間、かおちゃんが告白されたじゃん? それを聞いて、俺すごく不安になったんだ。ずっとこうやって一緒にいられるって勝手に思ってたからさ」

「…………うん」

「それで、今のままの関係がずっと続くならいいけど、なんていうかこのままじゃダメなのかなって思って。だから――」


 真面目な顔で、少し俯きながら聞いていたかおりを真っ直ぐ見つめて、俺は続けた。


「かおちゃん。俺と、付き合ってください」


 刹那。時が、止まった。


 空気の流れがなくなり、一瞬とも永遠とも思える静寂が流れた。


「そうくん…………ごめん、私――」


 沈黙を破ったかおりの一言目を聞いて、俺は走り出していた。




 かおりに振られた。


 今までの関係をもっとずっと続けたくてしたはずの告白なのに、もうきっともとの関係は崩れ去ってしまった。


 自信があったわけではなかった。


 でも、かおりならいい答えをくれるだろうと、期待はしていた。心のどこかでおごりがあったのかもしれない。



 俺は走った。ひたすらに、止まることななく走った。


 数分も掛からず家につき、なにも言わず部屋に駆け込んで布団にもぐった。


 思えば、ついこの間の花火大会とうり二つの状況だった。


 その次の日、俺は学校を初めてさぼった。


 それから高校で再会するまで、かおりと会うことはもうなかった。


               ※※※※※

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