第62話 なぜだか彼女はいつも隣にいる、そんな女の子だった。(1)
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小さいころから気づけば隣にいる。
かおりは俺にとってそんな女の子だった。
家も隣で親同士もそれなりに仲が良くて、登下校も学校での休み時間も休日も、彼女と一緒にいるのが当然のことだった。
そんな生活を続けていくと兄妹のように思えてきて……なんてこともなく、俺は当たり前のように彼女に恋をした。
初めてその気持ちをきちんと自覚したのはきっと、小学校中学年くらいのときだったと思う。
とはいえ、そのときの俺には想いを伝える度胸なんてなくて、ずっと本当の気持ちは胸にしまい込んでいた。
事情が変わったのは中学に入ってしばらく経ってのことだった。
やっと新生活に慣れてきて、二日間の学園祭を終えたそんな矢先だった。
「そうくん。私、今日告白された」
学校からの帰り道で、かおりがぼそっと言った。
確かにかおりは学年が上がるにつれてその可愛さが増してきていて、学校の男子から結構人気があることも俺は知っていた。
それでも――。
彼女はずっとこうして俺の隣にいて、そのうち付き合うようになって、大人になったら結婚するんだろうな、と。
そんななんともロマンチックなことを俺は心のどこかで思っていた。
「…………誰に?」
「四組の杉くん。ほら、サッカー部の」
かおりに告白してきたのはサッカー部のエース。
運動もできて人望も厚い、学年で一番人気のイケメンだった。
「……で、なんて答えたの?」
ただの幼馴染の俺にそんなことを聞く資格なんてきっとなかったけれど、それでもこの関係が終わってしまうかもしれないと考えると堪らなくなって思わず口を動かした。
「断ったに決まってるじゃん~」
かおりの言葉に、俺はほっと胸をなでおろした。
ただ――。
このままじゃ、またいつかおりが告白されて俺以外の誰かと付き合ってしまうかも分からない。
そんな危機感を抱いた俺は、それから一週間後にかおりを公園へと呼びだした。
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