エピローグ

 お屋敷に戻った菜央たちはお茶とお菓子で一服し、世間話に花を咲かせた。そうしてひとときの楽しい時間を過ごしたあとは、別れの時間だ。


 丘の上の神社の鳥居の前に菜央たちはいた。隣には三房さんが、向かいには見送りの忠重さんと菖蒲さんが立っている。


「今日はお招きいただきありがとうございました」

「ありがとうございました! とっても楽しかったです!」

「おもてなし、心から感謝します」


 彰と菜央、二宮が感謝とともに頭を下げる。忠重さんと菖蒲さんは嬉しそうに笑い、


「楽しんでいただけてなにより。また来てくだされ」

「美味しいものを用意して待っています」


 と言った。


 三房さんが「繋ぎ給え、導き給え」と唱え鳥居の中に門を作り、


「準備が出来ましたよ」


 と三人に声をかける。


 もう一度三人は深々とお辞儀をして、大きな鳥居をくぐっていったのだった。












 その様子を高い木の上から見ている者がいた。甚平を着たまだ十かそこらの子供だった。樹の枝に座って足をぶらぶらさせ、手にはどこからか取ってきた苺を持っている。


「平和ボケの狐たちにいたずらしてやるだけのつもりだったけど……」


 子供は苺を頬張り、咀嚼する。


「思ったより面白いのが見つかったなぁ。珍しい術を使う陰陽師」


 ごくりと苺を飲み下した子供はにひひととても無邪気に笑った。


「しばらくあいつにちょっかい出して遊んでみようか」


 きししと笑いながら、子供は座っていた樹の枝から飛び降りる。落ちる勢いのまま、子供は地面にするりと飲み込まれて消えた。


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気ままに陰陽師! 海月大和 @umitukiyamato

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