最期の願い
樹(いつき)@作品使用時の作者名明記必須
最期の願い
おねぇさん!こっち!こっち!!白い服着てる男の子が僕ですよ!
はじめまして!突然声かけてごめんなさい。
実はおねぇさんにお礼を言いたくて声かけさせてもらいました。
とは言ってもピンと来てないですよね?
一週間前、モンシロチョウを逃がしたのって覚えてますか?
良かった。覚えててくれて。あの時のモンシロチョウが僕なんです。
今は人間の姿をしてますが、本当は人間じゃないんです。
はじめましてでもなくて、おねぇさんに会うのはこれで2回目なんです。
おねぇさんが疑うのも覚悟してました。あっ。立ち話もなんですし、あのベンチに座りましょうか。
よいしょっと。はぁ。改めまして、僕はモンシロチョウ。
一週間前、クモの巣に引っ掛かってる所をおねぇさんに助けてもらいました。
あの日、初めて空を飛んだ日でした。初めて飛んだ日にクモの巣に引っ掛かるなんて。
僕の命はこうもあっけなく終わってしまうのか、と死を覚悟してました。
そこへおねぇさん、あなたが助けてくれたんです!また会いたい、会ってお礼が言いたい。
でも僕はモンシロチョウ。言葉を発する事なんてできない。だから神様にお願いしたんです。
「最期におねぇさんにお礼を言わせて欲しい」と。
僕は助けてもらった近くで、ずっとおねぇさんを待っていたんです。
おねぇさんの甘い、良い香りを頼りにずっと。
今日僕が人間の姿になれたという事は…僕の命があと少しで終わるという事。
今日がおねぇさんにお礼を言える、本当に最後のチャンスだったんです。
無視されたらどうしようって内心ドキドキしてました。でもこうやっておねぇさんは静かに僕の話を聞いてくれた。
蝶なんて触るの無理な人もいるだろうに助けてくれて、本当に感謝しています。ありがとうございました。
おねぇさんは綺麗で優しそうで。助けてくれた時、一目惚れしたんです。胸がキュンってなる感覚を味わえて良かった。
あっ!そろそろサヨナラをする時間が来たみたいです。
今度生まれ変われるなら
おねぇさんと同じこの地に、
同じ時代に、
人間として生まれ変わりたい。
そして、おねぇさんを見つけたいです。その時はまた白い服を着て「はじめまして」って言わせて下さい。
おねぇさんが「はじめましてじゃないよね?3回目だよね?」って言ってくれるのを期待してます。また会う日まで。さよなら。
最期の願い 樹(いつき)@作品使用時の作者名明記必須 @ituki505
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