よにんめ
気がつくと私は知らない場所にいた。傍らには綺麗な白い花が咲いていた。
「ここは...?」
「こんにちは、新しいお客様。」
「誰!?」
「私はこの庭の主です。」
目の前の少女はそう言った。
黒髪黒目の私とは対象的な、白髪に灰色の瞳が目に痛い。
「庭...?ここは、天国ではないのですか?」
「いいえ?ここは庭園。ただの庭園です。」
私は困惑した。天国でないというのなら私は何故こんな知らないところにいるのか。
「あ、あの。私がどうやってここに来たのか、知ってますか...?」
「さあ?私には分かりかねます。ただ...。」
「ただ...?」
「ここに来るのは、いずれも不幸なもの達です。」
「!」
「どうやら心当たりがおありのようですね。」
「..........。」
「もし宜しければ、私にお話していただけませんか?丁度ハーブティーがありますので、ご一緒に。」
何故か彼女に全てを打ち明けてしまいたくなって、促されるまま彼女と一緒に錆びれたベンチに座って、花の模様が描かれたカップでハーブティーを飲んだ。
「......私、いじめられてたんです...。」
よくある話だ。ただ一回、クラスのカースト上位グループに意見しただけ。たったそれだけで目をつけられた。
ハブられ無視され陰口を言われ、あらぬ噂も流された。もちろん友達は出来なかった。学年が変わっても噂は無くならず、嫌がらせは続いた。
誰にも言えなかった。暴力を受けたわけじゃなかったから。大丈夫、大丈夫だと自分を心の奥に押し込めた。
ある日、抑えきれなくなった。当然といえば当然なのだけれど。
屋上へ駆け上がって身を投げた。恐怖なんてなかった。やっと苦しみから解放されると思った。地面に近づいて目を閉じた。次に目を開けた時は天国だと思った。でも、____
「目が覚めた場所は、ここだった、と...。」
「はい...。私は、確かに死んだはずなのに...。」
「ああそういえば、ひとつ言っていなかったことがありました。」
「...?」
「ここに来るもの達は、不幸であると同時に、幸福になるための望みを持っているのです。...あなたの望みはなんですか?」
「わたしの、のぞみ...。わたしっ...友達が欲しい...!なんでも話せて、私の味方になってくれる人が、ほしい...っ!」
私は泣いた。初めて口にした心からのSOSだった。
少女はゆっくりと口を開いた。
「なら、私が成りましょう。丁度このベンチとテーブルで、このティーセットを使って入れるお茶を一緒に飲んでくれる、話し相手が欲しかったのです。」
「っ...ほんと...?」
「はい。...もう苦しまなくていいんですよ。あなたは幸せになるべきです。」
私はまた泣いた。今度は苦しみからの涙じゃなかった。
きっと私は、幸せだ。
庭園 雨水 @amamizu415
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