さんにんめ

気がつくと私は大きな庭園にいた。傍らには紫の花が咲いている。


「こんにちは、新しいお客様。」

目の前の少女がそう言った。


「ここはどこですか?」

私は少女に尋ねた。

「ここは私のお庭です。」

と少女は答えた。


「何故私はここに居るの?」

私は少女に尋ねた。

「貴方が不幸だったからです。」

と少女は答えた。


「何故不幸だとここに居るの?」

私は少女に尋ねた。

「ここは幸せの庭だからです。」

と少女は答えた。



「何故私はここに居るの?」

私はもう一度少女に尋ねた。

「ここで幸せになるべきだからです。」

と少女は答えた。

「貴方は何故不幸だったのですか?」

少女は尋ねた。

つがいと離れ離れになったからよ。」

と私は答えた。

「なるほど、その柄は片割れとおそろいなのですね。」


私は自分の体を見下ろした。花の模様が描かれた陶器のからだが見えた。ここに来る前と変わらない、片割カップれを失ったティーポットがそこにいた。


「では、あなたの望みはなんですか?」

少女は尋ねた。


「わたしののぞみは『片割れと再会すること』です。」

と私は答えた。

「なら、私が見つけましょう。ついでに私が主人になりましょう。丁度この庭とベンチとテーブルに合うティーセットが欲しかったのです。」

と少女は微笑んでそう言った。

私は心を込めて、

「よろしくおねがいします。」

と言った。

私は片割れと使われるようになった。

そうしてティーポットは不幸ではなくなった。

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