ふたりめ

気がつくと私は大きな庭園にいた。傍らには水色の花が咲いている。


「こんにちは、新しいお客様。」

目の前の少女がそう言った。


「ここはどこですか?」

私は少女に尋ねた。

「ここは私のお庭です。」

と少女は答えた。


「なぜわたしはここにいるの?」

私は少女に尋ねた。

「あなたが不幸だったからです。」

と少女は答えた。


「なぜふこうだとここにいるの?」

私は少女に尋ねた。

「ここは幸せの庭だからです。」

と少女は答えた。



「何故私はここに居るの?」

私はもう一度少女に尋ねた。

「ここで幸せになるべきだからです。」

と少女は答えた。

「貴方は何故不幸だったのですか?」

少女は尋ねた。

「存在を忘れられたからです。」

と私は答えた。

「なるほど、だからそんなに蔦が生い茂っているのですね。」


私は自分の体を見下ろした。白いからだを覆う蔦が見えた。ここに来る前と変わらない廃墟で忘れられたテーブルがそこにいた。


「では、あなたの望みはなんですか?」

少女は尋ねた。


「わたしののぞみは『存在を認められること』。」

と私は答えた。

「なら、私が認めましょう。丁度この庭とベンチに合うテーブルを探していたんです。」

と、少女は微笑んでそう言った。

私は少し言葉に詰まったあと、

「おすきにどうぞ。」

と言った。

そうしてテーブルは不幸ではなくなった。



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