庭園

雨水

ひとりめ

気がつくと私は、大きな庭園にいた。傍らには綺麗な薄ピンクの花が咲いている。


「こんにちは、新しいお客様。」

目の前の少女がそう言った。


「ここはどこですか?」

私は少女に尋ねた。

「ここは私のお庭です。」

と少女は答えた。


「なぜわたしはここにいるの?」

私は少女に尋ねた。

「貴方が不幸だったからです。」

と少女は答えた。


「なぜふこうだとここにいるの?」

私は少女に尋ねた。

「ここは幸せの庭だからです。」

と少女は答えた。



「何故私はここに居るの?」

私はもう一度少女に尋ねた。

「ここで幸せになるべきだからです。」

と少女は答えた。

「貴方は何故不幸だったのですか?」

少女は尋ねた。

「じぶんのやくわりをはたせなかったからよ。」

と私は答えた。

「なるほど、だからそんなに錆びているのですね。」


私は自分の体を見下ろした。禿げたペンキと虫食いの後が見えた。ここに来る前と変わらない、誰も座らないベンチがそこにいた。


「では、あなたの望みはなんですか?」

少女は尋ねた。


「わたしののぞみは『使ってもらうこと』よ。」

と私は答えた。

「なら、私が使いましょう。丁度この庭に合うベンチを探していたんです。」

と、少女は微笑んでそう言った。

私はもちろん、

「よろこんで」

と言った。

そうしてベンチは不幸ではなくなった。

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