2020/7/9 雨を想う日暮



2020/7/9 雨を想う日暮





一人になってみたらどうなるのだろう


どんな生活を送るのだろう


この家を

小さな自分の世界のような部屋を出て


窓辺で揺蕩い

好きな空と街並みの景色を眺める

猫が喉を鳴らしながら甘えてくる

そんな長閑なひと時を積み重ねた


そんな場所から離れて


知らない街で

新しい部屋で

一人だけで

一人だけの日々を

積み重ねるように生きる日々は

どんなものになるのか


ふと思う



この強張りを貼り付けたような仮面を

知らないうちに被っている

この瞬間も

置いて

行けたら


見えなかった景色が見えるだろうか


何もやる気が起きない

この日々と横たわる心も

置いて

行けたら


知らなかった空気を吸うことが出来るだろうか


何もないように見える空を見上げて

ただ思う




一人だけの道に広がる景色は

どんな色をしているのだろう

どんな風が吹いているのだろう

どんな風に陽が降り注いで

どんな風に月が浮かぶのだろう

どんな雨が降るのだろう

どんな音に溢れているのだろう


私だけで感じるその世界は

どんな居心地なのだろう



何もないように見える空を見上げて

ただ、ただ想う。




耳の中に音が入り込んでくる気がするけど

何も音がしないように感じる


目の中に色が入り込んでくる気がするけど

何も色が無いように見える


肌の上を梅雨の風が滑っていく気がするけど

何も感じることなんてないように



ただ思う





そうやって、ぼうっとしていたら

足下で猫が甘えるように鳴いてきた



仮面が剥がれる感触がした


猫の声が聞こえる


君の茶色にトラ柄の色が見える


撫でると毛の柔らかさと温みが手に染まる


舞った毛がくすぐったい


聴きたい音楽を鳴らして


雨の空気を吸って


素面の顔のまま


君と過ごせば笑えると知る




一人になるとすると

猫たちと離れなきゃいけないのか


そう思うと


それは惜しいなと思う




いつまでこの日々が続くのか

分からないけど



とりあえずはまだ、このままでいいか



そう、思うことにした。









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