第18話

武器と防具の展示即売会。

武器商人が新発売の品や売れ筋商品などを含む武器と防具を持ち寄って、出張販売をしているスペースだ。

今回来ているのは4店舗。

常連店舗(街にも店を構えている店舗)が2店舗、他の街から来ている店舗が2店舗という事らしい。

新規の店舗にも人だかりができており、店主や店員らしき人と随分話し込んでいる人もいた。

奥には素振りなどができるスペースや、試し打ちができるようになっていて、武器の使い心地を試している人も見かけられた。

周りでは武器を見て盛り上がっている人だらけなんだけど…剣の重さが、とか形が、とか。だれが作ったとか言われても全くわからない。私にわかるのはせいぜい、『あ、あれって映画で見たことあるやつだ』とか『漫画で使ってるキャラいたな』くらいの感覚しかない状態で「さあどれがいい!」なんて言われても困る。

ぶっちゃけ。

いま、困ってる真っ最中。

「この刀は新しく採取された素材を練りこみ、強度をあげておりまして…」

「…はぁ…なるほどぉ…」

店員さんが熱心に説明をしてくれているんだけれど、右から左に言葉が通り過ぎていく。

少し離れた所でシオンが店員さんとなにやら話をしている。

「話がついたぞ。ちょっと来い」

シオンの声が聞こえ、思わず自分を指さして確認すると、頷かれた。

私の名前聞いてないのかな。名前くらい呼んでくれればわかりやすいのに。

「呼ばれたので失礼します」

店員さんにペコリと頭をさげてから、シオンの所に向かう。隣には薄い金髪を短く切り揃えた人が立っている。なかなかの美形だ。緑色の目はどこかで見覚えがあるような気が…。

「ソルース商会のフェリス店長です。よろしく」

そう、告げた人の声はどう聴いても女性のものだった。

「よ、よろしくお願いします…」

「ああ、ちなみにフェリスを女だって侮ると痛い目みるからな?そこは気をつけろよ」

「女性だから侮られるって、あるんですか?」

武器を売ってるだけなのに、なんで?普通に女性店長とかいるじゃん。

思わず首を傾げそうになると、フェリスが笑った。

「こりゃまた、面白い子が入ったんだな…まあ、それは置いといて武器は何が良いかって話だろ?」

「あ、はい。今まで武器とかを持ったことが無くて」

「ふうん。んで、でっかい石は持ち上げたんだろ?ちょっと触るよ」

二の腕や腰などを確かめるように触られる。


「筋肉がそんなについているようには思えない体つきなんだけど…」

そばに置いてある木の棒を渡される。

「それ、思い切り握ってみて」

「これですか?」

少し力を入れただけで、木がぺしゃりとつぶれてしまう。

「!?ご、ごめんなさい!!」

「あー、いいのいいの。一番軽いやつ渡したから。んじゃ今度、こっちね」

ひょい、と手から木を取り上げて、次の木の棒を手渡された。

「…さっきみたいに、ですか?」

「そ。握ってみて?」

結果は、先ほどと変わらず。

「ふぅん…結構筋力はあるんだね。それじゃあ…」

フェリスは箱をガサガサと漁る。

「ラストね。これ握ってみて。ここと、ここ。両手で」

金属と木を継ぎ合わせた棒を渡され、両手で強く握ると金属部分が少しだけひしゃげ、木の部分はまたぺしゃりと潰れた。

「結構、良い感じにバランスがとれているみたいだね。ただ、木だけだとちょっと厳しいかなぁ。どういうのが苦手とかある?」

「えっと…どういうのって言われても…」

「刀とか弓とかいろいろあるんだけど、あとは棒術とか…」

「接近戦か、遠距離攻撃かって両方試してみてもいいんじゃねぇか?」

助け舟をだしてくれたのはシオンだった。

「試してみるっていっても、何もやってない状態からだとある程度慣らしてみないと自分に合っているとか…あとは金属を使っている武器で考えるか…」


フェリスが考え込んでしまう。

「うーん…よし。とりあえず弓からやってみようか。ついておいで」

フェリスはさっさと試し打ちのスペースに向かってしまい、リーンは慌てて後ろをついていく。

「あの。フェリスさん。なんでさっきは木とかを握らされたんですか?」

「ん?…あー…確かに普通だとそこら辺はあんまり知らないか。あれは筋力測定と、物質に対しての相性の判断だね」

「相性ってあるんですか?」

「そりゃ、色んなのに相性ってもんはあるでしょ」

「…なるほどぉ…」

内容としてはキチンと把握しきれていないが、本日何度目かになる相槌をうってしまう。


「一番はじめに持ってもらった木で、まず『木製品』に対しての相性を調べるの。あれが簡単につぶれちゃう人は、次に木の中でも中くらいに固いものを思い切り握ってもらうんだ。それでも潰しちゃう場合には、その人はだいたいの木との相性が悪いって事。だから次に金属と一番固い木との混合の棒を握ってもらう」

「木と相性が悪いって聞くと、ちょっと悲しいものがあります…」

「ちょいちょいいるから、そこら辺は気にしなくていいと思うよ。だからほら。タンスとか扉の補強とか角の部分とか、取っ手部分。あれは金属でできてるじゃない?」

「…あ、あー。確かにそうですね」

「あれは、握りつぶさないようにの配慮もあるのよ。だから一般的にはそんなに知られていないんだけど、職人さんとかは何回か測定したりするね」

「何回もやる場合があるんですか?」

「うん。職人をしていると、ある日突然木との相性が悪くなる人とかもいて。そういう場合には金属加工とかになるね」

「なるほどぉ…えっと、それじゃあ、金属のを持たされたのは…?」

「あれは、木の中でも一番固い木と、よく使われている合金を組み合わせた棒なんだ。一般的な硬さの金属っていっても、かなり固いほうなんだけど。あれは相性とかあまりないみたいで、握りつぶせる人はなかなかいないね。リーンさんは少しひしゃげていたけど、純粋に筋力が強いんだと思う」

話しながら歩いていると、弓の試し打ちができる所に到着した。フェリスが弓を吟味し始める。

「あれ、金属は相性ってないんですか?」

「うーん。私は相性が悪すぎるって人は見たことがないなぁ…。神様が人に作るのを許した物質だから、すべての人に相性がいいっていう事だしね」

『神様に対しての信仰が凄い根強い…』

説明としては今までの人生で聞いた事が無い理由に、リーンは、そっとため息をついてしまった。

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