書けなくなった悩み
北風 嵐
第1話
物書く人なら、誰しもいつか当たる悩みだろう。
プロの作家ならたちまち、生活にも関わって来る。
とある投稿サイトでの話である。
そらから「そ」が降ってきた、カギカッコのカドがおデコにコツンと当たって、居眠りからさめた。横に何か小さな紙にくるまれて、開けたら(ら)が入っていた。
「そら」を見たら、カラスが「そらみたことか」とカアーと鳴いた。
実にいろんな物を降らした人だった。
僕だったら、空から降ってくるもん、雨あられ以外だったら、お金ぐらいしか書けない。
「おにぎり さんかく まる しかく・・・。」とか童話も書かれた。
これは絵本にして息子の娘に見せてやった。それから 彼女は 朝ごはんは さんかく まる しかくの小さなおにぎり3個になった。
どこからか声が聞こえてきて、よーく気がつくと、自分の携帯君が喋っていた
とかの物語、どこか独特なオトボケもあって、僕はこの人の作品が好きだった。
最初の頃は僕の作品は長いものが多かったのだが、作品は全部読んで下さった。最高だったのは、『こまったなぁ・・98円』と云う作品であった。何だろうとまずお題で読みに入った。スーパーのチラシの小松菜が「こまったな・・98円」と、読んでしまったなぁー。と云うそれだけの話だが、ショートストーリーで、実際文を読んだら独特な味があって、思わず笑ってしまった。
その「困ったな・・98円」のお題を借りて私も小品を書いた。私は昔から忘れ物が多く、学校では鉛筆、消しゴム、他一杯。よく借りた。その癖は今も治らず、お題を借りたり、作品の1章を借りたり(無断ではないですよ)して、何とか書き続けてきた。
書き手も味があってそうだったが、彼女ほど他の人の作品を読んだ人はなかったのではないだろうか。僕もそうだったが、どれだけそのコメントに勇気づけられたことだろう。
作品紹介に「旧作を押入れから出しての手直しです。」とあったので、「旧作と書かなかったらわからないのに」と書いてメッセージをした。返事のメッセージに最近書けない悩みが少し語られていた。僕は「あれだけ、読み手に回ったら書けない」と思った。
あるときそれをストレートに書けないので「書ける一歩、私の作品を読まないことです」と、メッセージを書いた。そしたら、本当に僕の作品を読まず、他の人ばかりになってしまった。
他の人の作品に書かれたコメントを見ると羨ましく、若干、妬けた思いもしたものだった。彼女が出した作品にはメッセージを入れた。返事は貰えていた。そして最後に僕の『〇〇塾日誌』という作品に感想を残して退会された。
最後のお別れ文に、「旧作を消しゴムで消しては書いて何とか投稿して、皆さんのを読んで、このSNSに繋がっていたかった」と語られていた。悩みは深く、「ものを書くこと」への思いは深かったのである。私は、自分の「軽いメッセージ」を恥じた。
彼女はどの作品も真剣に読む人だった。そして上手、下手より、物語そのものに感動する人だった。その彼女の「褒め言葉」のコメントを「馴れ合い行為」と批判した人がいた。かりそめにも物書く人なら、「人の思い」を知らない人だと私は思った。
私の作品欄に「退会ユーザー」と書かれた彼女のメッセージが残っている。それを見るたびに彼女の「書かれなくなった悩み」を思うのである。
書けなくなった悩み 北風 嵐 @masaru2355
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ベトナムでのハプニング/北風 嵐
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ベトナム紀行/北風 嵐
★3 エッセイ・ノンフィクション 完結済 15話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます