第二話 夏川さんの恋愛

私は今恋をしている。男の人なんか好きにならないと思っていたのに。

小さいころから、両親からの溺愛を受けていた私は異性の友達どころか同世代の男子と話した事すらほとんどなかった。この男女共学である高校に入学したのは、小中と私立の女子校だった私の唯一の我儘だったのかもしれない。

けれど、急に男子が周りにあふれている生活は段々、ストレスになっていった。

私の容姿を褒めてくれるのはうれしいけど、必ず同時に性的な視線も感じていた。

それが私にはたまらなく嫌だった。


高校1年の冬のこと。私は犬神という1年先輩の人にアプローチを受けていた。

アプローチと言ってもかなり脅迫に近いもので付き合わないとあることないこと噂する、などと言われた。しかし犬神先輩には彼女がいると友達から聞いたこともあったし、第一好きでもない男の人から迫られるのはかなりの恐怖だった。

ある日、運動が苦手だった私は体育の補習を受けていた。なんとか補習が終わり、更衣室で着替えていると、


ガチャ。バタン。


「よぉ、美桜ちゃん」

「え……犬…神……先輩…」

「お前の着替えるとこ撮ってネットに流してやるよ」

「や、やめてください!」

「なら俺の女になれ」


足がすくんで動けなかった。初めて男性から暴力を振るわれる、そう思い膝から崩れ落ちた。


「おい、どうすんだよ!」


その怒号に泣きながら私は言うしかなかった。


「わ、わかりましt……」


ピンポンパーンポーン。


「えー、2年5組のロリコンドスケベ浮気大好きヤリチン犬神俊也さん。

至急女子更衣室から職員室まで来てください。繰り返します-」


「んだ!?これ!?」


先輩は鬼の形相で部屋から走って出て行った。

だ、だれだろう。でもおかげで助かった。

今のうちに逃げなきゃ、と思い服を着て走って玄関に向かった。



「てめぇ何してくれてんだよ!」


上の階から怒鳴り声が響いてきた。体が震えて仕方が無かった。帰らなきゃ、帰らなきゃ。でも心とは裏腹に足は階段に向かっていった。


「いや、先輩がとんだ犯罪行為をしていたので止めてあげたんですよ」

「ふざけんなよ、ガキが!」


そこには先輩と言い合っている男の子がいた。見たことのある子だ。

名前は確か……、大森君。


「一つしか変わらないのにガキって……。確かに僕は童貞ですけど……」

「何のつもりだ!お前のせいで明日から……」

「お前こそなんのつもりだ!」


大森君が声を荒げる。


「んだよ急に」

「お前、僕の妹にも言い寄ってたよな」

「は?」

「大森かなでだよ、覚えてないとは言わせねぇぞ」

「あぁ、あの愛想悪いガキか。面は一級だったけどな」


べチン。大森君の拳が先輩の頬を捉える。

しかし、

「んだ、これ」

「パンチだ」

「パンチッつうのはなぁ、こうやんだよ!!」


大きく振りかぶったその拳は細い大森君のからだを2,3メートル吹き飛ばした。


「ガハッ」

「もう二度と生意気言えないようにしてやるよ……」




「おい、やめろ!!!」


先生たちが来たのは大森君が意識を失ってからだった。

 -これが語り継がれし大事件「大森校内アナウンス事件」だ。

多分、この時には既に私は大森君が好きだったのだろう。

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大森君は回避したい。 爆裂☆流星 @okadakai031127

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