小話奇譚

「年少組の話」

私が5歳の時の話です。

私が5歳と6歳を過ごした幼稚園はそこそこの大きさの建物で当時はまだ

珍しかったパソコンが置いてある部屋もありました。

その日私は友達のA君とB君と冒険ごっこをして遊んでおり、

パソコンの置いてある部屋に行こうということになりました。

そのパソコンが置いてある部屋は二階の奥にあり、普段は鍵がかかって

いる場所でした。しかし、年長組のクラスからベランダを伝って中の様子を

伺うことができる構造になっていました。

二階の年長組の部屋まで来た私達は年長組がいないことを確認し、こっそりと入り

ベランダに続く扉を開け、パソコンのある部屋に行きました。

ドアの下部に取り付けられているガラス越しに部屋の中を確認した私達は

恐怖に包まれました。

なんと部屋にあるパソコンが付いており、勝手にマウスカーソルが動いていたのです

もちろん部屋に人はおりません。怖くなった私達は慌てて逃げ出しました。

年長組の部屋の前まで逃げた後、Bくんが突然

「俺パソコンの部屋見てくるけん」と行ってその部屋まで走って行ってしまいました

私とA君はさっきの出来事から付いて行く勇気がなく、B君の様子を見ていました。

B君は部屋のドアを必死に動かしていますがガタガタと音を立てるだけで決して

開くことはありませんでした。B君はなんとか部屋の様子を探ろうとドアから

距離をとって上側のガラス部分から中の様子を見ようとしていた時

突然B君が何かに怯えた顔をして、慌ててこっちに走って来ました。

その尋常でない様子を見た私達も怖くなり、急いで年少組の部屋まで逃げ込みました

部屋まで戻った私達がB君に何があったのか聞いてみたところ

ドアの上側をじっと見ていると左側から男の子が覗いて来たらしく

それが怖くなって逃げてきたそうです。

それ以来私達がその部屋に近くことはありませんでしたが、

一体あの部屋が何があったのか今でも気になっています。