第6話 ギルド統括局

 ここは、世界有数の商業都市クロムンド。活気だった賑わいを見せるこの国で、新たに新聞の一面を飾る出来事があった。それは...


ダグラス「タクヤー!」

 とある酒場で大男の怒号がこだまする。

タクヤ「働きすぎだぜ、みんな。酒でも飲もう」

ダグラス「働かざる者、飯も酒も抜きじゃ!」

 タクヤの顔が絶望する。

タクヤ「そ、そんな...俺に死ねと言うのか!?」

ダグラス「嫌なら働かんかい!」

 タクヤが渋々近くの段ボールを拾い上げる。

キース「つっても、大規模な模様替えだなぁ。これは骨が折れる」

タクヤ「お!誰かと思ったらあの日の酔っ払いじゃねえか!」

キース「うるせえ!お前の酒の強さどうなってんだよ!」

レイン「二人とも!無駄口叩かずに働いてください!今日は昼からギルド統括局の方々がお見えになるのですよ?」

キース「っけ!あんなにボロ泣きしてた癖に...」

レイン「キースさん?何か言いました?」

 鬼の形相でキースを睨みつけるレイン。

キース「さあーて、仕事仕事!」

酒場の冒険者1「レインちゃん!さっきの件なんだけど!」

酒場の冒険者2「あ!僕も僕も!聞きたい事があって!」

レイン「はいはい、順番にお願いします!」


ダグラス「すっかり調子も良くなって、人気者だなレインは」

タクヤ「そうだなぁ...まだ子供だけどな(笑)だけど大きくなったら綺麗になるぜ?レインちゃん」

ダグラス「...そうなったら、タクヤどうだ?(笑)」

タクヤ「馬鹿言え(笑)こんな歳離れたおっさんじゃ気の毒だ」

ダグラス「ま、向こうはまんざらでもないと思うが...」

 ダグラスがニヤリと笑う。

タクヤ「なんか言ったか?」

ダグラス「いいや何も?けどそんなんじゃ一生結婚できねえぞ〜!」

タクヤ「うるせえ!その件については言うな!」

レイン「二人してこんなところで何話してるんですか?サボってないで仕事してください!」

タクヤ「はいはい、随分なブラック企業に就職しちまったみたいだな俺、まあ上司が可愛いから許すか」

レイン「か、かわ!」

 レインの顔が真っ赤になる。

タクヤ「あれ?レインちゃん熱でもあるんじゃ...」

レイン「うるさい!触るな変態!」

 バシッ

 タクヤの頬にビンタが炸裂する。

タクヤ「痛え!」

 ガストレアにいつもの風景が広がり皆がほのぼのとその光景を見て癒される中

謎の男「マスター!これ、ここに置いときますね?」

ダグラス「ああ!ジャックか、お疲れさん!悪いな、来たばっかりで働かせて...」

ジャック「いいんです!それよりも本当にこのギルドは入団テストがないのですか?」

 ダグラスはバツが悪そうに

ダグラス「見たまんまだが、まだ俺自体もギルドの設立ってもんの右も左も分かってねえ状態なんだ。だから人員も不足気味でな、ぶっちゃけ入団テストなんてやってる暇もない!」

ジャック「そうですか、大変な時期にお力添えができるなんて、嬉しい限りです!」

ダグラス「おい聞いたかタクヤ、本当にお前と同じ人間か?」

タクヤ「嫌味かよチクショー」

 タクヤの側に謎の女性の影が近づく。

謎の女「あんただね?噂の準災害級の化け物を素手で倒したっての」

 タクヤは手を止める。

タクヤ「あんたは?」

ベティ「ああ、すまないね、自己紹介が遅れちまった。私はハンナ・ベティ、気軽にベティって呼んでくれ!」

タクヤ(ナイスバディだが、男勝りな女はちょっとな〜) 

タクヤ「よろしくなベティ、俺はタクヤってんだ。同じギルド同士仲良くしようや」

 ベティは舐めるようにタクヤを見回すと

ベティ「ふ〜ん、よく見りゃあんた結構いい男じゃない。...私今日泊まる宿なくて困ってるんですけど」

 タクヤがタジタジになる。

タクヤ「あ、あはは。俺の宿はその...」

レイン「だ、駄目です!何してるんですか!?そ、そういうのはい...家でやってください!」

 動揺しまくりのレインがタクヤとベティの間に入る。

ベティ「ふ〜ん、じゃあ家でならやっていいんだ?」

レイン「あ...えっと...い、家でも駄目です!」

 必死に抵抗するレイン。

ベティ「あはは、冗談!ついいじめたくなっちまった(笑)二人とも、これからよろしくな♡」

 そう言うとベティは作業に戻った。残された二人には気まずい沈黙が続く。

タクヤ「ええと、レインちゃん?なんで家でも駄目なの?」

 レインは顔を赤くすると

レイン「うるさい!この変態!」

 タクヤの顔にビンタが炸裂する。

タクヤ「痛ああああ!」

 タクヤの声がガストレアにこだました。


 作業中、キースがガストレアの陰でこそこそしている者たちを見つけた。

キース「おい、そこで何やってんだお前ら」

謎の男達「ビクっ!」

 男達はどこかで見た顔だった。

ザック「あ、あははキースさんどうもです」

キース「あんだよチワワどもじゃねえか、きっちり働いてんだろうな?」

ザック「も、もちろんですよ兄貴!」

キース「お前らに兄貴と呼ばれる筋合いはねえんだよ!しばくぞ!」

ザックと取り巻き「ひいいいい!」

ダグラス(すっかりキャラが変わっちまったなあいつら...前のキャラはどこいったんだ?)

タクヤ「リアーナちゃん、今度二人でお茶でもどう?このうるさい連中なしで」

ダグラス「そっちはそっちでナンパすな!」

リアーナ「た、タクヤさん。私はその...」

レイン「ちょっとタクヤさん!リアーナちゃん嫌がってるじゃないですか!」

ダグラス(もう収集がつかん!せめてもう一人ツッコミ役を...)


ジャック「マスター!ギルド統括局の方々がお見えです!」

 黒いローブにハットを被った3人組がこちらへ向かってくる。

ダグラス「ええ!?予定よりも随分早いな!」

 ダグラスは急いで表へ出ると

ダグラス「これはこれは統括局の皆様、遠路はるばるようこそおいでくださった。見ての通り改装中で落ち着かないとは思いますが、どうぞごゆっくりと!」

背の低いハットの男「たわけ、汚うてこんなおんぼろ酒場誰が入るか」

 唐突な批評に場が凍る。

キース「ったくよ〜、なあんで俺の周りにはこんなくそ生意気なガキが溢れかえってるんだろうな〜?ガキはおかんの乳でも吸ってろや」

ダグラス「おいキース!この方々にそんな口聞いちゃいかん!」

背の低いハットの男「口の聞き方がなってないなバナナヘッド、おい店主、しっかりと躾けておかんか」

レイン「っぷ...。」

レイン(バナナヘッド(笑))

 その場にいた他の冒険者たちも笑い出す。

キース「プッチーン!こんのガキ上等じゃ!表出ろや!」

他の者(いやここもう外だけどな...)

タクヤ「何の騒ぎだよこりゃ...」

キース「聞いてくれタクヤ!このガキがガストレアが汚えって馬鹿にしやがった!」

タクヤ「何!?...冥土の土産はもう決めたか?」

 タクヤが指をポキポキ鳴らす。

ダグラス「だからやめんか!」

 ゴチンッ

 二人の頭に拳骨が炸裂する。


背の高いハットの男「先ほどは失礼しました。我々はギルド統括局のものです。私からデイビット・モルガン。この全く喋らない男がレイブン・アルケイデス。この背の低い男がレグルス=キングロードです」

ジャック(キングロードだって?おいおい、それにアルケイデス、モルガンだと?何でこんな奴らがこんな場所にいるっていうんだ?)

ベティ(名前しか聞いたことないよこんなビッグネーム。それに...ハンター(野性)のスキルで測ったけど、この子何て馬鹿げた魔力量してるのよ...)

ダグラス(ギルドの申請だけ...という雰囲気ではないなこれは...)

レグルス「おいデイビット、その背の低いってのはどうにかならんのか?」

レイブン「...最も合理的な説明だと僕は思う」

レグルス「ほう...。何故だ?レイブン言ってみろ」

レイブン「...人は五感での情報処理の内、およそ8割を視覚に頼って生活していると言う研究結果がある。今、この状況で効率よく的確に自己紹介をなすには背の低いと言う情報が伝わりやすいとデイビットは考えた」

レグルス「ふむ、デイビット。先の失言を許そう、してレイブンお主は博識じゃのう」

 レイブンは何も言わず照れる。

デイビット「何故か許されてしまったな...私は何も悪いことは言ってないと思うが」

リアーナ(な、何だか最近、私の周り変な人ばっかりな気がします...)

タクヤ「ところであんたら、一昨日の電話相手はどいつだ?」

デイビット「...彼は今回、用事があり席を外している。君に会いたがっていたよミウラタクヤ」

 あっそ、と鼻を鳴らすタクヤ。

ダグラス「そうですか、彼には一言お礼をと思っていたんですが...」

レグルス「お礼...とな。店主、此度のギルド設立、薔薇の道にならぬとよいがな」

 ダグラスを含め、その場の多くの者が首をかしげる。

デイビット「話が脱線しましたが、こちらが今回ご用意した書類とギルドマスターバッチです。今すぐでなくともよいのですが、手続きは早いに越したことはないでしょう?書類申請はそれほど難しくはありません、私が説明しながらこなしましょう」

 ダグラスは助かりますと答えるとデイビットとともに酒場に入っていった。外で残された者たちに沈黙が残る。

キース「おいクソガキ、てめえさっきの薔薇がどうたらこうたらってどういう意味だよ?」

 レグルスはキースの言葉を無視する。

キース「おいてめえ!無視すんじゃ...」

 タクヤがキースの前に手を伸ばす。

タクヤ「おい、レイブンって言ったか?どういうつもりだ?」

 レイブンが静かに手の平をキースに向けていたのをタクヤは見逃さなかった。

レグルス「...お互い様だ、バナナヘッド。お前もその殺気をどうにかしろ、話し合い中も視線が鬱陶しくて敵わん」

 タクヤに説得され殺気を抑えるキース。

レイン「は、話し合いに来たんですよね?」

 レグルスはちらりとレインを見る。

レグルス「アルヤスカの娘...。そうか、此度の騒動も主が関与しておったか...全く、人騒がせな血だ」

レイン「ま、待って!娘って...お母さんを知ってるの?」

レグルス「ふん、忘れようにも忘れられんよ。あの忌々しい事件の被害者。我(おれ)に言わせればただの一ギルドカウンターの女だがな」

レイブン「...」

キース「だからその理由を教えろつってんだよ!」

レグルス「...つまらん」

キース「はあ?」

レグルス「それではつまらんのだ、情報は時として命より重い。答えばかり欲しがるな、考えることをやめた時人は死ぬ。それに我がお前達に今ここでそれを話すメリットはない」

キース「あいにく何言ってんのか一ミリも理解できねえわ、要するに話したくねえだけだろ?だったらそう言えやクソガキが」

 レイブンの鋭い眼光に場が凍りつく。

レグルス「...やめておけレイブン、お前が今ここでこいつらを殺すこと。それ自体が最も無駄で生産性の欠片もない行いだ」

レイブン「...」

 キースの前にジャックが立ち塞がる。

キース「どけ新入り、舐められっぱなしでいられるか」

 殺意をあらわにしたキースのオーラにジャックが怯む。

ジャック「...っ!キースさん、失礼を承知で止めさせてください。この人達は!」

ベティ「ジャック、あたいが説明する」


 一方その頃...

デイビット「これで最後の手続きになります」

ダグラス「なるほど、確かにこれだけの書類でギルド登録ができるのでしたらそれほど難しくはありませんね」

デイビット「...お間違えのないよう、あなた達は非正規ギルドです。正規ギルドではなく非正規という意味、先ほど説明したものが全てではありません。レグルスの言った通りこれから苦労も少なからず伴うでしょう」

 ダグラスはそれに応える

ダグラス「確かにそうでしょうね。でも今は、この俺が一ギルドのマスターになるってのがまだ現実感がなさすぎて...不安より興奮の方が勝ってしまいます(笑)」

デイビット「ふふ、それは必然ですよ。...それに、あなた方はむしろギルドになるべくしてなったと言っても過言ではないのですから」

ダグラス「それは一体どういう事ですか?」

デイビット「あなた方がお礼をしたいと言っていた電話越しの男がいたでしょう?彼からの強い進言があったのですよ」

ダグラス「...そんな、個人の意見だけでそのような事が可能なのですか?」

デイビット「本来は不可能でしょうな、しかし彼ほどの男が一つの事案にここまで熱くなることは今までに無かった。それは我々を納得させるには十分すぎる判断材料に、そしてギルドを起こす資格をお持ちだという結論に至らせました」

ダグラス「...そんな事が」

デイビット「...見たくなったのですよ、我々は彼の心をここまで動かした者達をね。今回あなた達を警戒させたのは申し訳ありませんでした。我々は自身のことをとやかく語る趣味はありませんが、腐っても世界中のギルドを統括する組織。個々がギルド一つぐらい壊滅させるほどの力があると存じ上げておきましょう」

 ゾクッ

 ダグラスの背筋に冷たいものが走る。

デイビット「今回、我々が出向いたことにはそのような意図があるとご理解いただきたい」

ダグラス「なるほど...理解しました」

デイビット「素早い対応に感謝を。それと...我々はもう一つ気がかりになることがありまして...」

ダグラス「?」


酒場の冒険者「な、なんだよそれ...ってことはこいつら3人とも紋章持ちで、そこのチビに至っては七星の一角だって!?」

ベティ「ああ、あたいの記憶と索敵スキルが正しければ...問題は、どうしてそんな奴がギルド統括局にいるのか...いや、そもそもこんな場所にいるのか...ね」

 ベティの言葉に場が凍りつく。

ザック「あ、姉さん七星って何?」

ジャック「お前達、七星を知らないのか?」

 ザックが萎縮する。

ザック「お、俺たち山育ちだから知らねえもんは知らねえの!」

 ジャックはため息をつくと

ジャック「冒険者には年に一度、昇格試験ってものがあるのは知ってますね?」

 ザックと取り巻きは頷く。

ジャック「冒険者はその試験時にクラスがDからC、CからBという風に昇級するのですが、これはAクラスが最高位であり、それに近いもの程より優れた冒険者であることを示します。しかし、稀にAクラスという枠組みでは捉えられない規格外の能力や魔力を持った冒険者が近年見られるようになったのです。その者達にはギルド統括局監視のもとに、冒険者には考えられない好待遇。そしてS級という称号が与えられました」

 ザックはゴクリと生唾を飲み込む。

ジャック「ですが、レグルスと名乗る男はそのさらに上、曰く大陸最強の7人と謳われる内の一人です」

 ガストレアの冒険者がざわめきだす。

ザック「さらに上って...兄貴ほどの男でもBクラスの冒険者なんだろ!?」

ベティ「正確にはキース君はB+級の冒険者ね」

ザック「はぁ〜!なんだよそれ!?」

ベティ「クラスの中でも、次のクラスに負けず劣らずの力を持っている者がいるの、その者達をアッパークラス(上位の者)と呼ぶの。並のBクラス冒険者はエルダーオオカミを30頭相手にするなんてことはできるわけないのよ、普通はね。だから普通のクラスとアッパークラスはそれほどの力の差があると考えてちょうだい」

ザック「ってことはキースの兄貴はA級並に強いってことじゃねえの?」

ベティ「それが、そういうわけでもないのよ」

 ザックが首をかしげる。

ベティ「昇級できないことには訳がある。アッパークラスであろうとも、それはやはり次のクラスへは至らないということなのよ」

ザック「な、なんしかとんでもなく強い兄貴よりも強い奴らよりも強い奴の中でも最強のやつらってことか〜?」

 ザックの目が回っている。

ベティ「そうゆうことよ、七星はS級のアッパークラスってとこかしら?言ってて馬鹿みたいだわ」

 ベティの額から汗がこぼれ落ちる。

レグルス「説明が長いぞ女、もっと文章を簡略化せぬか」

ベティ「...っ!これは申し訳ありませんでした」

 すっかりと場の雰囲気が飲み込まれそうな時だった。

タクヤ「で、そんな奴らがどう言った要件でここにいる?」

 全く物怖じしない男が一人。

レイブン「...」

レグルス「運命の神とやらよ...なんの因果か、我とこやつを引き合わせた?」

 レグルスがタクヤに視線を送る。その鋭い視線に当てられたものはおおよそが意識を保つ事さえできないのだが...

タクヤ「うるせえぞ、俺の質問に答えろ」

 その言葉とともに、その場を全く別のオーラが埋め尽くす。

レイブン「危険因子発見...ターゲットを排除します」

 音すら置き去りにするスピードでタクヤめがけ一直線に一つの影が動く。

レグルス「よさんかレイブン!」

 その言葉とともに半ば暴走状態に陥ったレイブンがタクヤの鼻先で止まる」

レグルス「落ち着けレイブン、戯れだ」

タクヤ「いいから質問に答えろ、このガラクタぶっ壊すぞ?」

 ジャックとベティは唖然とした様子でその状況を眺めていた。

レグルス「く、クハハハハハハ!」

 突然の笑いに場の緊張感が和らぐ。

レグルス「良い、これを見にきたのだ我達は!」

 皆が口をポカンと開ける。

タクヤ「趣味の悪い...」

レグルス「そう怒るな、ミウラタクヤ。強き者に認められし男よ」

レイブン「...非常に効率の悪いやり方だと僕は思う」

 そう言うとレイブンはタクヤの眼前で止められた短剣を静かに下ろす。

レグルス「そう怒るなレイブン、佚を以て労を待つ。先の戦い、勝敗はどうにせよ貴様の負けだぞ?」

 レイブンは何も言わず拗ねている。

レグルス「してミウラタクヤよ、いつからレイブンの正体を?」

タクヤ「ここに来た時からだよ、気持ち悪いオーラプンプンさせやがって」

レグルス「ふむ、なるほど。初対面でレイブンを図るとは面白い男よ、あの男が興味を持つのも頷ける」

キース「どういう事だよ?今までの挑発が全部芝居だってのかよ?」

レグルス「愉快であろう?ククッ、良い!我は興が乗った。見返りに貴様らの質問とやらに答えようじゃないか!」

 タクヤがやれやれとタバコに火を灯す。

レグルス「それはそうとミウラタクヤ、貴様本当にあのまま我とやりあうつもりだったのか?」

 突然のレグルスの本気の殺意に当てられ、地面には亀裂が走り、建物はメキメキと音を立て軋み出す。木々がざわめき、大地が震えているかと錯覚するほどの重いプレッシャーが瞬く間に場を飲み込んだ。

タクヤ「...だったら?」

レグルス「ふ...。良い、それも一興よのう」

 そう言うとレグルスはまたオーラを消した。

タクヤ(...参った。あれは流石に喧嘩売らねえほうがいいなぁ)

 そう言うとタクヤは消えたタバコに火を付け直した。

デイビット「何やら騒がしいと思えば、全くあなた達は静かに話し合いができないのですか?」

 ガストレアからデイビットとダグラスが出てくる。

ダグラス「取り込み中すまねえ、タクヤ!お前、前にイナビカリ山で討伐したあのモンスター達どこにやった!?」

 ダグラスが焦っている様子だった。

タクヤ「えっと、掃除屋ってのが来て全部持って帰ってくれたぞ?」

ダグラス「...掃除屋はな、着いたら何も無かったと統括局に報告したらしいぞ?」

キース「はあ?確かに俺たちの眼の前であいつら掃除屋ですって...」

 キースが思い出したようにタクヤの方を見る。

タクヤ「ああ、普通はモンスターの回収時に国からの許可証を提示しなきゃならねえ決まりがあるが...そういやあいつらそれをしなかった」

キース「それに討伐報告をしてからえらい早さで来やがったなあいつら」

デイビット「我々は今回その件についても調査にやって来ました。虚偽の報告ならば処罰を...と考えていたのですが、我々の仲間には真実を見抜く類の能力を持つ者がいましてね、この報告が嘘ではない事がわかったのです。となれば、掃除屋が嘘をついていることになりますが、それもなかった。第一掃除屋が嘘をつくメリットはない、となれば」

タクヤ「回収していった連中は何者なんだ?ってことだな...」

 デイビットは静かに首を縦に振った。

キース「どういうことだ?」

レグルス「何やら面白いことになって来たのではないか?」

 レグルスはそう言うと、不敵な笑みを浮かべた。


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冒険者の気まぐれ冒険譚 低浮上 @yuya119

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