わたし、お月様に会いたいの

帆多 丁

わたし、お月様に会いたいの

 ねぇ、お月様は女神様なんですって。


 夜の旅人が怖くないように、わるいものたちに食べられちゃわないように、優しく照らしてくださるそうよ。

 お日様は嫌い。わたしの肌をちりちり刺して、あちこち火傷させるのだもの。

 お日様って乱暴!

 そんなお日様に追われているから、お月様はすぐに死んでしまうのだわ。


 でもね、聞いて? お月様はとても強くて、また生まれ変わって夜を照らすの。

 見て、夜空が碧く光るわ。雲の背を白く輝かせて、あの雲の上では妖精さんたちが羽を震わせ歌っているに違いないの。

 その歌は銀の鈴かしら、硝子の鐘かしら。

 お月様の魔法があれば、誰でも、何度でも生まれ変わるのでしょうね。

 生まれ変わったら、わたしも、お月様みたいになりたい。そうしたら、わたしもお父様やお母様や、夜道を行く旅人を助けてまわれるもの。

 夜が怖いと泣く子がいたら、きっとそばに行って力になれるわ。

 病んで熱に浮かされた子がいたら、きっと夜の冷たさで熱を吸い取ってやれるわ。



 ……ねぇ、お前は願いを叶えるものなのでしょう?

 わたしのお願いをきいてくれないかしら。

 わたし、お月様に会いたい。会って、きいてみたいの。「どうやったら、あなたみたいに強く、優しくなれますか?」って。

 お月様はなんて答えてくださるかしら。

 ねぇ、どきどきする。どきどきするわ。


 わたし、お月様に会いたいの。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

わたし、お月様に会いたいの 帆多 丁 @T_Jota

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ