エピローグ

 四月。

 瑠果くんがイタリアに帰国する日まで、引っ越し準備を手伝った。

 わたしはもう大学の学生寮に入寮したけど、やっぱり瑠果くんと一緒にいたかった。

「瑠果くん。忘れ物はない?」

「うん。イタリアには大きな荷物を送ってあるから、大丈夫だ」

 わたしは瑠果くんにお守りを渡そうとしていたけど、なかなかタイミングがなかった。

「瑠果くん、忘れ物はないね。また遊びに来てね。イタリアに行っても、風邪とかを引かないでね」

「はい。ばあちゃん。六年間、お世話になりました。ここでの六年間はとても自分のなかでも、変われたと思います」

「夏海ちゃん、瑠果くんを送ってやりなさい。駅までは一緒に行ってあげなさい」

「うん。おばあちゃん、ありがとう」







 わたしは瑠果くんと駅まで、歩いていくことにした。

「瑠果くん。イタリアに行っても、連絡してね。無理しない程度で」

礼於レオも同じ大学を目指してるし、大丈夫だよ」

 瑠果くんと一緒にいると、いままてのことが思い出していた。

「夏海? 大丈夫?」

 涙が溢れてくる。しかも、止まらない。

「瑠果くん……ずっと、そばにいて」

「夏海、あのさ。泣かないで聞いてほしい」

 わたしは涙を拭いて、瑠果くんの方を見る。

「いまって、訳じゃないけど……」

「うん」

「結婚しよう!」

「……うん! いいよ!」

 わたしは彼に抱きついた。これから遠く離れた場所に行ってしまう……そう思ったら、こうするしかなかった。

 ギュッときつく抱きしめ返された。

「瑠果くん、渡すものがあるの。」

 それは湯島天満宮の合格守。瑠果くんと礼於くんに買ってあったものだ。

「礼於くんのもあるから。」

「うん、ありがとう。」

 瑠果くんに抱きしめられた。

 離れると、新幹線に乗った。

 泣きそうなのを堪えて、瑠果くんの乗せた新幹線が出発するのを見送った。

「またね! 瑠果くん。」

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茜色の空 須川  庚 @akatuki12

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