第12話 年明け

 年明け、わたしは朝になってすぐに郵便ポストに駆け込んだ。

 年賀状がものすごい分厚い束になってる……完全にすごい数。

 わたしは両親で手分けして、年賀状の仕分けを始めた。

「あ、夏海は過去最高の枚数、行くね。イタリアからエアメールが来たよ」

「エアメール、瑠果くんから?」

 エアメールには瑠果くんと礼於くんの年賀状が入ってた。

 瑠果くんも楽しそう。






 わたしは浜松に帰っていた。

「あ、詩音ちゃん! 明けましておめでとう!」

「夏海! おめでとう! 今年は大変かもしれないけど、よろしくね」

 詩音ちゃんはセンター試験のため、忙しくしている。

 それから、寒くなってきたときに、詩音ちゃんがセンター試験を受ける日になった。

「行ってらっしゃい、詩音ちゃん」

「うん。お守り、ありがとう! 遅くなったけど」

 年明けに渡したのは、湯島天満宮の合格守、詩音ちゃんの合格祈願に買ったものだ。

 海が丘学院は入学試験の時期を迎えていて、あちこちで願書の受付をしている。

 すぐに試験の日になるらしくて、その日はお休みになる。


 二次試験を受けるには、センター試験で合格しなくてはいけなかった。

「詩音ちゃん、どうかな?」

「ただいま……センター試験、何とか合格した」

「そっか! お菓子、買ってあったの。食べよう!」

「ありがとう~!」

 わたしはまだ学校で、中等部と高等部の入試の手伝いとかを頼まれてるから、そのまま寮にはなかなか帰れなかった。

 詩音ちゃんは絶対に受からなきゃと、真剣に受験勉強を追い込んでいた。

 ふと、詩音ちゃんに気になったことを話した。

「詩音ちゃん。気になってたことあるんだけど」

「何が?」

「瑠果くんのこと。高校卒業したら、イタリアに帰国して、イタリアの国籍に選択するって」

「え? マジかよ……瑠果、イタリアの国籍を選ぶってこと?」

「みたい、わたしもびっくりしたけど……瑠果くんが自分で選んだなら、応援する」

「瑠果、そしたら、イタリアの大学に行くってこと?」

「うん。イタリアは十九歳で高校卒業するらしいからさ、大学入学するのは一年後。しかも、学士課程三年で、プラス修士課程二年の計五年通うらしくて、卒業するのも一年後で……。大変だよね」

「じゃあ、結婚するのは二十五歳ぐらいまでできないってこと?」

 詩音ちゃんの発言に、少しだけびっくりした。

「し、詩音ちゃん! 結婚って。まだ、そんなわけ無いよ」

「でも、いいよ。瑠果は夏海と結婚したそうだし」

「え……瑠果くん、そんなこと、言ってたの!?」

「うん、結婚するなら、夏海とだって」

 二次試験の当日、詩音ちゃんは志望校の大学に行った。

 帰ってきた途端、わたしにしがみついて、わんわん泣いてた。

 少しだけ不安だけど、詩音ちゃんは手応えがあるらしい。




 卒業式を迎え、わたしと詩音ちゃんは海が丘学院高等部を卒業した。

 暁寮とは別れることになる。

 たった一年半だけお世話になった。

 多田先生が泣きながら、卒業生に言葉を贈ってくれたけど、つられて号泣してしまった。

 わたしは熱海のおばあちゃん家に春休みの大学の学生寮に引っ越すまでの間は、いることになるの。






 そして、国立大学の二次試験の発表。

「え、瑠果くんも気になるの? 詩音ちゃんの二次試験の発表」

「うん。まぁ……同級生だしな」

 そして、LINEのメッセージの通知がついた。詩音ちゃんからだ。

 見た途端、そこには写真があって、受験票と一緒に撮られてたのは――合格発表の掲示板に同じ番号があったことを知らせてくれた。

 受験票と同じ番号が掲示板にある=合格したことをわかってたので、詩音ちゃんに喜んでるスタンプをスタ連しまくった。

『おめでとう! これからもよろしくね!』

『こちらこそ! 瑠果と仲良くね』

と、メッセージを送った。

 春からはそれぞれの道に向かう。

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