冬
第11話 冬
冬に近づくにつれ、だんだん寒くなってきた。
季節はすでに秋から冬に変わってきていた。
「夏海、わたし、予備校に行く」
「行ってらっしゃい、詩音ちゃん」
詩音ちゃんは週末は模試で潰れているのか、カレンダーに書かれた予定を見るけど大変そうだ。
十二月、わたしはテレビを見ていると、フィギュアスケートの国際大会の放送されていたのを見ていた。
「フィギュアスケート、女子シングルではフリーになりました。……オリンピック金メダリストの高瀬侑菜手、銀メダリストの一条秋羅選手が揃っての出場です」
お客さんの数も多い、歓声が上がるのもすごい。
冬休みに入ろうとしていた。
センター試験まであと少し、詩音ちゃんが追い込みを始めたときだ。
「詩音ちゃん。ココア、どうぞ」
「夏海、ありがとう! あったかい……受験も息抜きは大切だね」
詩音ちゃんと共にテレビを見ながら、勉強の問題を解いたりしていた。
わたしはとても面白いことが好きで、お笑い芸人はSNSでフォローしておる人も多い。たまにフィギュアスケートの番組も見るけど。
詩音ちゃんはどっちかというと、スポーツニュースをよく見ているのでスケートの試合を一緒に見ることもある。
「あ、この人、知ってるの?」
「知ってるよ? わたしの中学の三つ上の先輩で、トリプルアクセルが得意な選手」
「すごいな。今年は世界選手権二連覇がかかってんでしょ? 世界女王になってるんだもんね」
冬休みに入った。今年は東京の実家に帰ってきた。やっぱり、東京都心の冬は結構寒い。
「母さん。来たよ!」
東京駅に到着した。母さんと父さんの迎えが来ていて、話をしながら歩いていく。
とても楽しい時間がやって来て、実家に帰ってきたなと思う。去年とは全然違うけど。
「父さん、おみやげ。置いとくね」
「うん。夏海、ありがとう」
毎年恒例の年賀状の宛名書きに駆り出された。父さんと母さんの宛名が多すぎる……あと、うちも小学生から高校までの友だちとか先生に送ろうとしてるから、言えないけどね。
「夏海、これをポストに出してきてくれる? お願いね!」
「はーい、結局これなんだよね」
ポストに年賀状を出して、帰ってきたときには大掃除の準備をして、最近めっきり使っていたなかった部屋の掃除をする。
アルトサックスの楽譜を取り出して、これは寮に持っていくことにして、最近はテレビでフィギュアスケートの試合をみるようになった。
「瑠果くん、元気かな?」
「大丈夫? 元気そうで」
電話越しに向こうからは陽気な歌声が聞こえてくる。
「瑠果くん、もうイタリアにいるんだね」
「バレた?」
「あ、歌声が聞こえてくるからね」
瑠果くんは少しだけ、照れているみたいだ。
「あぁ……ハハハ、父さんたちが酔っぱらってて……」
しかも、瑠果くんのご両親に電話を代わっている。
「もしもし、瑠果がお世話になってます。
「どうも……イタリアは夫婦別姓なんですね。城沢夏海です、瑠果くんから家族のことは聞いています」
瑠璃子さんは少しだけ、瑠果くんのことを教えてくれた。
「瑠果はね、礼於と双子だって話していると思うけど、もう小さな頃はそっくりでね。髪色とかも違うけど、少しだけ間違えそうになるから、焦ったのを覚えているわ」
「そうなんですね。話を聞いていても、礼於くん、瑠果くんとめちゃくちゃ仲がいいですね」
瑠果くんはイタリアの大学を受けるために、勉強を始めているみたいだ。
本人が国籍をイタリアに変えると言っていたと話したけど、やっぱり瑠璃子さんも知っていたみたい。
「瑠果くん、よいお年を!」
「うん」
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