第10話 迎え
文化祭が終わり、外部進学のクラスの詩音ちゃんは受験勉強をする時間が多くなってきたみたい。
予備校にも通ってるし、寮に帰ってくるのは夜遅くだ。わたしは詩音ちゃんの夕食をローテーブルに置いておくのが日課になっている。
二段ベッドの上がきしむ音がしたから、詩音ちゃんが寮に帰ってきたみたいだった。
「夏海、起こしちゃった?」
二段ベッドのカーテンを開けて、同時に詩音ちゃんは制服から私服に着替えていた。
テレビの音量をギリギリまで下げて、詩音ちゃんと見ている。
「詩音ちゃん、お疲れ様。大丈夫?」
少し温めた夕食を渡して、詩音ちゃんはご飯を食べ始めた。
「すごい食欲なのに、全然太らないもんね」
「え~? わたしは学校の行き帰りは、ダッシュしてるし、予備校で食べる用の弁当は……昼休みに食べるしね。あまりにも食べ物の消化が速くてさ、困ってるんだよね」
「柔道部だったもんね。そりゃ、食べるよね」
「そうなのよ~」
詩音ちゃんは風呂場に行くことになったから、わたしはベッドで寝ることにした。
翌朝、わたしは四時半に目が覚めた。スマホのLINEのメッセージが来た。
『この前撮った写真ができあがって……渡し損ねたから、休みの日に来れたら、連絡して』
実は
『うん。今日は休みだし、行ってもいい?』
そのメッセージの返信が来たのは、朝ごはんを食べ終わった頃だ。
瑠果くんからのメッセージはほぼ同じ時刻に来るから、起きてからすぐに送った感じがする。
「ん? あ~」
『OK じゃあ。迎えに行くから、待ってろ』
不意打ちがすごすぎる。
瑠果くんの待ち合わせ場所は、学校から歩いてすぐのことだった。
ずっと同じ場所にいるのに、早く会いたいと思っていた。
「夏海、ここだよ!」
「あ、瑠果くん! 久しぶりだね」
瑠果くんとほぼ同時に抱きしめて、わたしはそのまましばらくギュッとしていた。
「瑠果くん……来てくれて、ありがとうね」
「うん。今日は来る予定だったし、これ」
わたしは瑠果くんから封筒をもらった。
そのまま、封筒を開けると、礼於くんと瑠果くんが一緒に写っている写真が三枚あった。そのなかにわたしも入ってる。
「瑠果くんと礼於くん、やっぱりそっくりだね」
瑠果くんと一緒に少し遠出をすることにした。
まるで一つの絵のような風景が見えてきた。そこはカフェみたいで、すぐに行った。
「瑠果くん。ありがとう。その……受験も、大変なのにね」
「大丈夫だよ、あと一年はがんばらなきゃね」
瑠果くんはそれから、すぐに熱海へと帰るらしい。
「今度はわたしがそっちに行くね」
「待ってる」
新幹線が動き出した。
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