第2話 秘策とは何や、恐ろしや。

「痛ったぁあ」

、、、別に地面に落下した訳ではない。決めぜりふが思いつかなかっただけで。

いや、『我、ここに参ず』とか『エクスカリバー!』とか浮かんでたっちゃ浮かんでたけど。

あーエクスカリバーが良かったかな?確か魔法の力が宿ってるとか、、

剣人は立ち上がり、とりあえず周囲を確認する。ただの森。周りにあるのは木。木、木。

―――こんなところから始まるのか。



どうやら森の中に転生したらしい。

けどまぁ大方、予想通りだ。

さすがにいきなり魔王さんと対峙するわけはない。

・・・・・・そこまであのフラン?も俺のこと信用していないだろうし。〝神様のイタズラ〟とか、(バベルの塔みたいな。)そういうんじゃなさそうだ。切羽詰まったカンジだったし。

(っていうか、どうやって戦うのー!?)

「えぇ……」

よくある冒険者っぽい服を着せられてる割に、ナイフすらも入っていない。

(いやいやいや、えぇ・・・)

剣人は自分が落ちてきたであろう上空を見上げる。

(戻れないかな・・・?)

そこには剣人を嗤うように青空だけが広がっている。

勿論、穴が開いている訳もなく。

後の祭りってこういうときに使うんだろうな、と剣人は思った。

確かにそうだが。

(あの勢いの中で言うのは無理だよな、、、まず気づきもしなかったし。

でも普通チート能力くれるだろ?気が利かないなぁ。けれどまぁ打開策勝算はあるだろう。そうじゃないと「魔王」とやらまで行き着ける訳がない。

いっそのことここで自給自足してやろうか。

いや、できないんだけどね)

フラン《かみさま》と話した内容を思い出してみる。

「想像力が魔法には不可欠。、、、そしてその想像には、化学知識が有効。」

つまり、構造の想像だ、と思う。、、言いづらい。

コウゾウノソウゾウダ。そうでもないか。

構造化学。化学の一分野であり、物質を構成する原子・分子・イオンの配列や立体的な配置、またそれら構成粒子間の結合を研究対象とする学問。

魔法とは、生み出す能力(だと思う。)別に正反対の物ではないと思うのだ。

、、うん。とりあえず、やってみよう。もし出来なかったら、、、フランを恨もう。構造化学俺の専攻分野をなめんなよ!

では。

とりあえず全部言っとけばいっか。

「HーOーH、折れ線型分子構造、H₂O、水!」

テストに出るよ!

剣人は手を伸ばし、それっぽくやってみる。

折れ線型を想像しながら。



ブシャッッッッッシャッッッッッッッ!!!!!!



結果として剣人の周りに川が、できた。、、いや、池か。

(水汁みずじる、ブシャー!! もう古い?そんなこと言っちゃダメだぞ?

あーでも非公認だから、セーフ?、、、なら、うほんうほん、)

「2千年に一度だけ現れる奇跡の『水の妖精』、早乙女剣人けんとっしー!!」



結局、水の妖精けんとっしーはずぶ濡れになってしまっていた。

(えぇどうせコントロールなんてできませんよ。

ていうかホントに出たよ、ビックリしたぁ~!)


そして調子に乗ってゆく剣人さん、、、

この様子を、一部始終見ていた者がいた。上にも下にも。

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神様、異世界転生なのにチート能力忘れてません!?~化学教師の異世界ライフ~ Light @Light6281939

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