神様、異世界転生なのにチート能力忘れてません!?~化学教師の異世界ライフ~

Light

第1話 転生

目を覚ますと、そこは知らない部屋だった。

知らない部屋の中で、横たわっていた。

なんて、

そんな小説ゆめみたいなことあってたまるものか。いや、事実、夢の中なのではないか? うん、きっとそうだ。そうに違いない。、、、頬っぺをつねったら普通に痛い。


1人用のこたつとゲーム機が横目に見える。別に異世界とかそういうんじゃないみたいだ。異世界にこたつなんてカッコつかない。なんか、雰囲気的に。

けれどよく見てみると、各々の物質が塩化ナトリウム水溶液塩水を燃やした時のような黄色の光を放っていて―――?

「ケント、起きるの遅いわよっ!」

「へ?」

剣人の目の前に、赤い服を着たが現れた。

(え。何これ。サンタクロースの女の子版、みたいな感じ?…・・・いやぁサンタクロースって、、、子供じゃあるまいし)

その少女は小学校高学年くらいの身長で、白のファーの付いた可愛らしい赤いワンピースを着て、髪をツインテールで纏めていた。

剣人の知り合いという訳でもなく。

(・・・この子誰。ここドコ。あー頭痛い。

そういえばサンタって、昔は緑色だったらしい。赤いサンタと緑のサンタ。

んーなんか、、お腹空いてきた・・・・・・赤いきつねと緑の、、何だっけ?

、、あれっ?ま、いいや。後で調べよ。こういうのって、意外と気になるんだよなー。緑の、、)

「たぬき」を思い出せない彼、早乙女剣人さおとめけんとは、狸に化かされる。


「え。ちょっと、無視!?ちょっと、ねえー!!」

少女が剣人に(こたつの上にあった)みかんを投げつけた。

「あ、ごめん」

んーこの癖治らないんだよなぁ。すぐ思考がトリップ妄想?してしまう。〝その間0.1秒!〟みたいな能力ほしい。いや別にいらないけど。、、、ていうか本当にこの子誰。

改めて剣人はその少女を見る。

可愛いとは思うけれど、別にロリコンではないので、アドレナリンは分泌されない。

剣人はどちらかといえば、美人系が好きなのだ。

・・・・・・お姉様、みたいな感じの。


「私はフレイン。フランと呼んでちょうだい。」

少女はのけ反り、剣人を見やった。

「えっ、何?うどん?」

「フラン!!」

「あ、はい」

(女子、怖い。女の子って怖い。強い。まぁ、ライオンだって雌が狩りをするしなーしょうがないや。)

百獣の王だって尻に敷かれているのだから自然の摂理なのだ、と妙に楽観視する。

「うどんって、、1文字しか被ってないじゃない。何なのよ一体、、」

「え。うどん、知らない?」

「っ知ってるわよそれくらい!!バカにしないで!!〝すぱげってぃ〟みたいなやつでしょ!」

「ス、スパゲッティ、、、」

思わずのけぞってしまう。

(うどんとスパゲッティって麺類の中で一番離れてないか?

まぁいいけど。)

女子が苦手な剣人ではあったが、どうやら教師目線で話すことで乗り切っているようだ。

気圧されてはいるが。

「そんなことより。ケント、自分のことについて覚えてる?」

「え?」

血を吸い終わってゆっくり飛ぶ蚊のように、剣人はゆっくりと目を動かす。

知り合いでも何でもない女の子に名前を呼ばれ、その上自身について尋ねられているのだ。寝起きの頭には辛かった。・・・・・・いろいろと。

「はぁ、やっぱり。この部屋にいるせいね。副作用よ。しょうがない、私が教えてあげる。あのね、」

(はぁ。)

20歳くらい下であろう女の子に、自分自身を教えてもらう俺。……シュールだ。



早乙女剣人は中学校の化学教師、だった。

実家が少しばかり金持ちだったこともあり、剣人は三男でありながらも幼小中高とエスカレート式男子校で過ごした。…………そのせいで女子に対する免疫が皆無なのであるが。(一応姉はいるが、剣人よりも男らしい。ていうかほぼ男。美人なのに残念!!)

高校卒業後、剣人は大学に行き教員免許を取って教師となった。―――その日は期末テストの採点のため夜遅くまで学校に残っていたのだ。

帰宅途中、早乙女剣人はあっけなく車に轢かれて亡くなった。、、、はずだった。



「本当に小説、みたいだな。、、じゃあ何? ここは、天国?」

とまどいを見せず剣人は尋ねる。

春にふっと吹くような、冷たい風が流れた気がした。

「・・・・・・まぁ、近しいものではあるけれど。

流動、、魂の消去の前に、私が移動させた《拾ってきた》の。

・・・・・・異世界に、行ってほしい。」

「、、はい?」

そう返事はしたが、剣人はなんとなく概観が見えてきた、と感じていた。



とりあえず、フランの話によるとこういうことらしい。

フランはある世界の≪神様≫(彼女は〝担当者〟と言っていた)で、彼女にとっての予想外、「魔王 イナンマ」という人物が現れた。前担当者の伝言より、魔王は勇者でないと倒せない、とのこと。

魔法には想像力が不可欠で、そこに化学知識が役立つのだそう。

・・・・・・そんなの知らない。つまりそういうことだろう。知らない知らない。


「行って、くれる?」

フランは上目遣いで剣人を見やる。

色仕掛けには滅法弱い、剣人だが、、、?

「、、、それ、行かなかったらどうなるんだ?」

目を反らしながら返答する。

やはり少しはダメージを受けたようである。

剣人は生前、意外とモテていたのだが、(顔も性格も〝可愛かった〟ので。・・・・・・守ってあげたくなる系的な?)色仕掛けに対する耐性は結局つかなかった。

この様子を見たフランは、ニコリと笑って続ける。

天国に天使がいるとは限らないらしい。

「・・・・・・もう肉体がないから、もとの世界には戻れない。この部屋は高次元すぎて、ニンゲンと呼ばれる貴方たちじゃ、短時間しか居られない存在できない。

、、、つまり行かないのなら待っているのは≪死≫よ。」

「そう、なんだ」

「…行かないって言うんなら、地獄の苦しみをプレゼントするわ」

そしてまたもう一度(小学生の限度で)妖艶に笑った。

小悪魔どころではない。

「天使みたいな顔して、ひどいこと言うね」

「え、、、、、ごほっ、でも貴方たち、私たち高次元生命体のことを『死神』とも言うわ」

「そう、か、、」

「でしょう?」

そう、彼女は『死神あくま』。

「じゃあまぁ、異世界に、行くよ」

「え。ホントに?」

「うん。」

「なんでそんなに冷静なの、、、?」

「はい?」

一瞬の沈黙が舞う。

(地獄の苦しみなんて誰だって味わいたくないだろう。それに、魔法を使う世界だというし。その非現実的なものを見てみたいとも思う。)


「まぁいいわ。時間もないし。早速!転生!!」

「え」

(急!!)


かくなる上は~転生!、とフランは思いながら剣人を下界に落とした。


目の前が、暗闇に染まる―――。

こうして化学教師・早乙女剣人の異世界ライフは幕を開けた。

―――――チート能力を貰っていないことに剣人が気づくのは転生後。


チート能力付与って、異世界転生の定番おきまりじゃないんですか!?

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