第3話
「ここの学園はご存知の通り寮制です。二人に一つ部屋が分け与えられます。手元の紙で確認して下さい。今日はこのまま専攻科目の教室へ行ってから寮に戻って下さい。以上です。それでは。」
配られた紙には地図が書いてあって、そこに苗字のみ書いてあった。男女共同のようで、風美は榊原(さかきばら)という人と同じだそうだ。
(なんか聞いた事あるな……。)
名前に聞き覚えがあったが、あまり思い出せないので聞いたことないと自分に思い込ませて封じ込める。
「じゃあまたねー!」
「あっまたね!」
十一人もいるというのに、心理学科に進んだ人は風美の一人しかいなかったので、一人で教室へ向かう。心理学科の教室は寮に行く道の一番奥だった。結構距離があるのが気に食わない。ちなみに、一番近いのは法学部だ。自動ドアで教室へ入る。結構大きなクラスだが、あまり人が来ていない。風美も合わせて六人程だろうか。ほとんどが男子だということに驚いた。少し経つと続々とクラスに入ってくる。やはり男子ばかりだ。女子は風美しかいないかもしれない。
「はーい。授業始めるよ。」
時間ギリギリに若い男の先生が入ってきて号令をかける。結局女子は風美しかいないようだ。少し場違い感を覚えながら先生に耳を傾ける。
「では、軽く自己紹介をお願いします。」
三十人程いるクラスをぐるりと見渡して言う。風美の苗字は佐山なので案外早く回ってくる。前の人が立って自己紹介を始める。
「榊原瑠夏です。大学部からの入学なので分からないことも多いと思いますがよろしくお願いします。」
視線を感じてお絵描きする手を止めて前を見る。すると榊原と言う男子がこちらを見つめていた。
「あっ!」
(こいつ、小学校の時の幼馴染だ)
真っ直ぐに見つめる少し青みがかかった瞳は保育園から小学校まで一緒だった幼馴染に違いない。
「ん?佐山さんどうかしましたか?」
反射的に声を出してしまったからか、先生が聞いてくる。我に帰った風美は立ち上がって自己紹介を始める。
「佐山風美です。中等部からです。よろしくお願いします。」
お決まりのセリフを早口で言う。幼馴染の事で頭がいっぱいだ。そのまま自己紹介が続いていく。
「おい。」
前から声がする。ハッと顔を上げると、幼馴染が顔を覗き込んでいた。周りを見まわたすともう休憩時間に入っていたようで、席から立ち色んな所に散らばっている。
「お前まだ寝る癖治ってねえのか?」
「うっうるさいなぁ。眠いんだもん。仕方ないじゃん。」
「はぁ〜。留年しなかったのが奇跡だな。」
「せっ成績はいいし?」
「は?ww嘘つくなよww」
「嘘じゃないし!」
「なら、入学前にやったテスト見せろよ?」
「望むところよ!」
負けず嫌いな風美はすぐにOKしていた。
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