第2話

ー大学部入学初日ー


『もう大学前着いちゃった〜!門の前で待ってるね〜!!』

今日、四月一日は聖渋沢学園大学部の入学初日だ。高等部では化粧禁止だったが、大学部では自由なので、久々に化粧をしてみた。風美はそこそこ化粧がそこそこ得意なので結構な美人になっている。門の横で音楽を聴きながら携帯をいじる。根は陰キャな風美は一人の時は自分の世界に入っていってしまう。大音量で音楽を流していると、肩をトントンと叩かれ、前を向いた。そこにいたのは凄く背の高い男性二人だった。

「え、なんですか。」

「お姉ちゃんこの大学の人?ちょっと一緒に遊ばない?まだ始業式まで時間あるでしょ?」

(あ、こいつらナンパだ。)

すぐに分かった。そこまでモテる方ではなかったが、実家から出てくる時に学生時代モテた母親にナンパの手口をたくさん教わったからだ。すぐに断ろうと思ったがなぜか声が出ない。なにせ身長差が三十センチ程あるのだ。囲まれていて緊張したのだろう。口をパクパクさせているだけだった。やばいと思って他の人に助けを求めようと、唯一外が見える右の辺りを見るともっと背の高い男性が立っていた。

「なにしてるんすか。」

男性は二人に向かって平然とした態度で言った。二人は動揺して

「別に何も?」

「何もしてないっすよ。ほら行こう。」

「お、おう。」

と言ってそのまま違うところに行ってしまった。男性にお礼を言おうと向き直ると男性は

「あ、お礼とか要らないんで。」

と言ってさっさと門に入っていってしまった。

(この人も同じ学校なんだ。また会えるかな。)

期待と嬉しさに胸をときめかせていると中等部からの友人十人が同時に到着した。一番の親友愛羽(まなは)は本当は違う大学に行こうとしていたのだが、風美が学園の系列の所へ行くと言うと「じゃあ私も」と着いてきてくれたのだ。強要したようで悪いのだが、正直一緒にいてくれると凄く安心する。結構暴言を吐く仲だが、互いに信頼している為に言えることだ。これからも仲良くしたいと思う。

「遅れてごめんね〜。」

「いいよいいよ。行こ。」

女子十一人が一斉に動き出す。皆しっかり調和が取れているので先先行っても大丈夫という確信がある。仲間は凄いなと改めて思う。

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