16話 適性!それぞれの特徴

 午後の実技授業は治癒魔法だ。今日でもう4回目になるのだが、俺は未だに、治癒魔法の基本であるヒールすら上手くできないでいた。


 攻撃魔法は1度見ただけで、闇化はしてしまうが簡単にできるのに、それ以外の治癒魔法や補助魔法などはてんで駄目だった。


 攻撃魔法、治癒魔法、補助魔法は、それぞれで発動方法がまったくの別物らしい。


 そのため大抵の場合、人によって得意、不得意とする系統の魔法は違ってくる。


 俺は攻撃魔法のみが"1度その魔法を見ただけで使える"と異常に優秀だが、それ以外は全生徒最下位レベルだ。


 レネは補助魔法が得意で、本人の多大な魔力量が、強力だが魔力を常に消費し続ける補助魔法との相性が良い。そして、治癒魔法はそこそこ、攻撃魔法は苦手だ。


 ルーイは攻撃魔法は平均的だが、他は平均以下。まぁ彼女の正体は暗殺者で、双剣を使った接近戦が主なので、そもそも魔法を使うタイプじゃない。


 バニラは魔力量は俺やレネと同じく多大にあるのだが、獣人だけあって魔法自体が苦手で、全てが学園最下位レベル。本人は格闘術が得意らしいが、よく周りから何故魔法学校を選んだのかを聞かれていた。


 ナナカは優等生で、どれも覚えが早く学園上位の実力だ。どの系統も得意なナナカと、どの系統も苦手なバニラで2人は真逆といった感じだ。


 セリアは攻撃魔法が苦手で、補助魔法は平均的。そして得意な系統は、今まさに授業で行われている治癒魔法だ。


「素晴らしいわセリアさん。美しくも力強く、そして優しい輝きよ⋯⋯。あなたの慈愛の心が、この素晴らしき光を生み出したのよ」


 うっとりとした様子で、治癒魔法の教師であるシェリーは言った。


 彼女は、治癒魔法を他の魔法と違って崇高なものであると考えていて、技術ではなく慈愛の心により発動するものであると言っていた。本当かどうかは知らない。


「攻撃魔法以外だと、途端に劣等生になって悲しいな。俺に慈愛の心とやらが無いからできないんだろうか⋯⋯」


 俺は両手を向かい合わせながら、悩んでいた。


「ご、ご主人!! 見てくレ!? バニラできたゾ!?」

「何っ!?」


 俺と同じく、唯一できないでいたバニラの向かい合わせた両手の中が、緑色の光で輝いていた。


「や、やばい⋯⋯俺だけになっちまった。バニラどうやったんだ?」

「ご主人が怪我したって考えながらやったらできたゾ! ご主人凄いナ?」


━━俺? まじで慈愛の心ってやつなのか⋯⋯?


 皆が傷ついて倒れている所を想像してみる。自分が治癒魔法かけなければ助からない、皆が痛みに苦しんでいる⋯⋯そんな状況を。すると━━


「あっ!!!! 光った⋯⋯けど、黒いなおい」


 通常の緑色の光と違い、俺のヒールは例のごとく闇化され、黒い光となっていた。


「ラ⋯⋯ライさん⋯⋯? 何ですかその禍々しい光は!?!?」

「あ、先生。これは、僕の慈愛の心によって生み出された素晴らしき光です」


 俺は、先ほどセリアが言われていた言葉を引用して、驚愕しているシェリーに答えてみた。


「こっこんなドス黒い光があなたの慈愛の心ですって!? 何て恐ろしい⋯⋯」

「そりゃ見映えは悪いですけど⋯⋯。でもちゃんとヒールのはずですよ?」


 俺がそう言うと、シェリーは恐る恐るその黒い光に手を近づけた。


「本当だわ⋯⋯。確かにこれはヒールよ。治癒の力をわずかに感じるわ」

「手を近づけただけで分かるんですか? さすが先生ですね」


━━でも、わずかになのか⋯⋯。闇化されてそれだけって事は、元の威力があまりにも弱すぎたか。やっぱり攻撃魔法以外は駄目駄目みたいだな⋯⋯。


「ライさんもバニラちゃんも、おめでとうございます。心配していましたができるようになったみたいで、わたくし安心しました⋯⋯」

「ありがとう。ようやく基本のヒールだ。セリアなんて、どんどん上位の治癒魔法覚えていって凄いよ」


 お祝いの言葉をセリアがわざわざ言いに来てくれた。


「わたくしも驚きました。自分にもここまで得意な事があるなんて⋯⋯。ふふっ怪我をしたらわたくしの所へ来て下さいね? 優しく治して差し上げますわ」


━━どうやら俺は、今すぐ怪我をする必要があるみたいだな


「なーんか変な妄想してるんでしょー?」

「はっ!? 何奴!?」


 急に現れたナナカに図星をつかれ、時代劇みたいな返しをしてしまった。


「あたしだって、治癒魔法は得意なんだからね?」

「治癒魔法は⋯⋯ってか、ナナカは何でも得意じゃん」


 ナナカが、こちらの顔を伺うように主張する。治癒魔法でセリアにライバル意識を燃やしてるのだろうか?


「そうだけどそうじゃなくって!! 怪我したらあたしも治すって言ってんの」

「お、おお⋯⋯。ありがとうな?」


 ナナカは拗ねたように言った。


「ちぇ⋯⋯あたしの事も、少しは気にしてくれたっていいじゃん。そりゃあたしは、どれも1番ではないけどさ⋯⋯」

「気にするって何をだ?」

「知らないっ」


 短く言うと歩いて行ってしまった。何を気にすればよかったんだろう? 体調とかだろうか⋯⋯

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「ワンだふるライふ」~中二病に魔改造な闇魔法教わったら、男1人の異世界学園"寮生活"始まった~ 夏樹 サラダ @natsuki-sarada

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