スピンオフとなっていますが、本編を読んでないからという理由で回れ右するのは勿体ない作品。時系列的にはこちらが本編より過去になるため、先に読むのもむしろありかも知れません。本編未読でも楽しめる内容であったことは、強調しておきたいところです。
本編で執事として出て来たビヒトの人生の前半を描いた物語で、彼が冒険者として人間として成長していく軌跡を味わう感じでしょうか。読了した感覚は、一本のRPGをプレイしてクリアした時みたいな。
ひとつひとつのクエスト的問題をクリアし、ボスを倒し、アイテムをゲットしたり、そのたびに手に入る小さな情報が、やがて大きな流れとなってラストに向かう構成に、ゲームっぽさを感じたのかも? なのでJRPGが好き!という人は文句なしにハマる予感。
何処が一番のお勧め要素なのかというのが説明しにくく、良い所が他の良い所と絡んでいて、どこから話すべきか迷い、これはもういっそのこと読んでもらうしかないのでは? という結論に至ってレビューを書いている有様。
魔法が使えないエリート魔術師一家の末っ子の、だからこそ至れる場所があったという、出来ないからこそ出来るようになれる事もあるという人生の示唆とか、ヴァルムという男らしさが心地よいバディとのワクワクするような冒険の日々、親子のすれ違いの決着、世界の謎、次の物語への繋がりへ。
あーー続きが気になる! と、時間が出来るたびについつい読んじゃうような作品だったので、そういう読書体験がしたい方はぜひ手に取って欲しいです。
かつて、星を喚び、世の理を乱したために「主」たちに罰せられたという伝説の残る国、アレイア。
その国で重要な役割を担う魔術師の一族の末っ子として生まれたヴェルデビヒトは、類稀な才を持ちながらも魔法を発現させることができない。
そんな彼がとある日に出会ったのは熊——!? ではなく、何と熊の皮を被った男、ヴァルム(ガチです)。破天荒な冒険者として名高い彼と出会ったことで、ヴェルデビヒトの運命は大きく変わっていきます。
『蒼き月夜に来たる』よりも少し前の時代を舞台に、まだもっと魔法が息づく世界で、魔法と魔術がどう構成されているのかなど、世界の仕組みの緻密さに惹き込まれるとともに、豪快なヴァルムに振り回されるビヒトのコンビにニヤニヤが止まりません。
とにかく本能で生きる男臭いヴァルムと、クールながらも芯は熱いビヒト、可愛いモフモフに世話焼きの竜馬など、彼らを巡る個性的な人々(?)に、地下遺跡の探索、そしてやがて繰り広げられる強大な敵との戦い。
とにかくわくわくの正統派ファンタジーでした!
おすすめです。