第5話
『エル・デ・ガーデン国』
日本鯖最強の国ではghost22の話がチラホラと出ては消える、泡のようなことを繰り返していた
──元世界1位なのでは?
そういった疑問の始まりは『エル・デ・ガーデン国』最強を誇る部隊の隊長が、愚痴を零した発言から広まった
部隊の人間だけが入れる室内にて
「はぁ…広まっちゃったなSIRIUS隊長」
と呟くは影太郎だ
「ふん、全員がghost22に齧り着けばやつも動きが鈍るだろう。愚痴という形ではあったが、広まって正解だな」
返した部長の隊長、SIRIUSは憤りを見せていた
「そんなんでいいんですかね…?うちのサイトも炎上しましたし」
「良い、それは人気がある証拠だ…それにまだ“施設“部隊には影響出ていないだろう?」
「“施設“っすか…まぁうちの部隊の管理外というのを偽った育成部隊っすけど、影響はないっすね」
「なれば良し!今宵もまた戦場へ出向くぞ!いいか者共!!」
古参、新規のプロたちがSIRIUSの言葉を聞いて叫び出す
SIRIUSの持つ“鼓舞“というのは、伊達ではない証拠だ
「蹂躙を始めるぞ!!」
────────────────────
ところ変わって『ゲァル・ブラッディス国』内にて、教会のような高い建物の屋根から1人眺めるはghost22だ
何も変わらない国内であったとしても、新規の人間や古参の復活で人が行き交いしているのは新しい風景でもある
「俺の…やるべきこと…」
呟いたghost22にはやるべきことがあった
──JACK・Danielに並ぶ強さを持つ人間の育成
基本的に難しいことではない
努力すれば年齢関係なく可能だと、咳き込んでいた年寄りに言われたのだ
だが、“努力すれば“、なんて、そんなことを有言実行するには気力と集中力、そして指摘、教育する人間がいるからこそ成り立つものであり、1人では無理なのだ
ghost22は教育してもらう人間が不在だったが、独学で頂点に登り詰めた
──なにかに追い込まれる感覚で
──自分の意思とは関係なく
すぐ側で人が立つのがわかった
えんじえるであれば、パーティ加入を無言申請してくるのだが、立っている者は何もしてこなかった
「探した…ghost22」
そう呼ばれ、懐かしい声と学校での出来事を思い出すghost22
「…お前か、学校で下手くそな追跡してたのは」
「バレてた…でもいい、“おかえりなさい“」
女子の声だったそいつはghost22の過去、現在を知っていた
「あぁ、ただいま“
プレイヤーネームが被るとどうしても後に数字や英語を混ぜるものが少なからずいるが、ひとつ言葉を足してやったりすると案外名前が決まったりする
“夜鳥の羽“もまた工夫してできた名前だが、本人は鵺を崩した名前だと主張しているため、“夜鳥の羽“を仲の良いもの達は“ぬえ“と呼びあっている
「…『ゲァル』なんてとこで遊んでる話はちらほら聞いてたが、前の国…『ネグライア国』から移動してきてよかったのか?」
「ふふ…仲のいい人に対しては饒舌になるんだね“ghost22“も…それとも“前“の名前で呼ぶ?」
「…それは、勘弁願いたい…、あと話をそらすな」
国から国への移動は可能だが、諜報員としての活動などを行うと移動先の国から追放などされる事がしばしばある
「諜報目的でここにいるから…どの国の人間もあなたを知りたがってるからね…」
「そりゃそうだ…プロレベルの、しかも世界トップクラスの5人のパーティを一人で止めたなんて、普通じゃありえないからな」
自慢げに話すも、ghost22本心では残念がっているのを夜鳥の羽は理解した
「表情が言ってることと真逆になってる…なにか目的でもあるの?」
えんじえるがいない今、打ち明けても構わないかと思い老けたが、知らないところで、ペナルティを夜鳥が受けてしまうと何が起きるのかわかったものでは無い
昔なじみのよしみとして、ghost22は発言しなかった
「黙り…なんだね?いいよ、10年もあってないから…不安がるのも仕方ないよ」
「いや…まぁ、そういうことにしておく…」
2人はそのあと、沈黙を続けた
カンカンカン…────
ghost22はその音のあとに、目前に表示されたものを見て、腰をあげる
「ん…、エルの戦場に行くの?」
表示されたステータス画面の内容は『ゲァル・ブラッディス国』の占める戦地を『エル・デ・ガーデン国』が攻めてきた報告だった
「…あぁ、エルの中にいるやつに用事があってな…」
「…そう、わかった」
「だから…ぬえは──」
「…私も着いていくね」
個人的な理由でghost22は一人か、またはえんじえるを連れて行くつもりではあった
「……は?なんて?」
咄嗟に言われたことに頭が追いつかず、聞き直すghost22
「だから…私も着いていく」
有無を言わさず、ghost22宛にパーティ申請が届く
「連れていく…理由がない」
「…私にはある、あなたの目的を探ること」
「ぬえ、…お前には関係の無いことなんだ」
つい口走ったその言葉
遠い未来、関係してくることではあったものの、今現在は全く関係がない
「……」
申請された状態が続くghost22は、首を動かし“夜鳥の羽“を見る
リアル世界での身長が伸びたのか、以前小柄だった体躯は今やスレンダーになっており、身長もghost22を超えるほど高くなっていた
金髪のショートカットは片目を隠しているが、動作に不備がないように茶色の両目が見える仕草を時たましていた
装備は腹丸出しの赤いジャケットにスポーツブラみたいなシャツと、太もも付け根部分まで隠した短パンに足首を隠した靴を履いている
「あ…、う、うぅん」
情けない言葉をghost22が吐くと、姿を見られた夜鳥の羽が自分の姿を改めて確認する
「リアルの身長が大きくなったから…合わせないと体の動きが鈍ると思って、…装備も新調したから似合ってるはずだけど」
「あ、あぁ…そうだな」
「それだけ…?」
「に、似合ってるよ」
指摘され褒めると夜鳥の羽はニコニコ顔になる
「良かった…」
「お、俺が恥ずかしいわ…っ、レベルは、いくつだ?」
攻防の激しい戦場へと出向くのだ、プロレベルでないと生き残るのは怪しい
「ん…、45のプロだよ?さすがに10年経てばね…」
「ま、まぁ…そうだよな…だけど、それなら『ネグライア国』で前線張ってても良かったんじゃないか?」
「前は出てたけどね…あなたに会いたいからこっちに来た」
「その様子だと…ずっとこっちにいるってか…?まぁ好きにすればいい…」
未だパーティ申請が来るghost22は、渋々だが夜鳥の羽を受けいれた
「パーティリーダー…移す?」
「いや、いい…だが約束しろ」
「?」
夜鳥の羽はghost22の約束を聞こうと、隣に座り顔をghost22に向ける
「ち、近いな…会話ログにも残るから覗かなくてもいいだろ」
「そんなのはいいから…なに?」
「…生き残れ、約束という形にはしたが…これはぬえの課題でもある」
「私の…課題?」
「そうだ…生き残る理由は戦場の時にでも話そう…行くぞ」
ghost22と夜鳥の羽は教会のような建物の屋根から降り、ワープ装置から戦場へと出向いたのだった
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「あ、SIRIUS隊長」
「なんだ?影太郎」
影太郎とSIRIUSは本拠地でもある仮の拠点で、『ゲァル国』側の本拠地が創られているのを眺めていた
「参加してるやつ確認したんですけど、来てますよ…例の」
バッと、SIRIUSは参加しているプレイヤーを確認する
五十音から始まり、英語、数字が並んでいるステータス画面
英語枠にその名前をみつけ、口角を上げるSIRIUS
「フ、フフフ…ようやく見つけたぞghost22」
「いや、彼もさすがに社会人か、学生かなんかで昼間はログインできないでしょ。僕らだけですよ、昼夜もログインしてるの」
ちなみにSIRIUSは投資家であり、暇な時間は全て『F.war』につぎ込んでいる
影太郎はSIRIUSの主夫のような事をやっており、悪くいえばヒモだ
「ふん、そんなことはどうだっていい…部隊員たち!奴を、ghost22を見つけ次第私に声をかけろ!!いいな!!」
突然の命令に部隊員たちがやる気のない返事を返す
それもそうだ、サイトの炎上、そしてSIRIUSの私怨による振り回しで隊員たちは精神的疲弊、不満が重なっていた
「なんだ?制覇まで後一歩だと言うのに…」
「自分のやってること、振り返った方がいいんじゃない?」
「なるほどわかった明日考えよう、だが今は憎きghost22の首だけを考えろ、いいな影太郎」
「…はぁ、わかりましたよ…っと!」
影太郎は立ち上がり、部隊員に告げる
「みんな、今回の戦場にはghost22っていう僕とSIRIUS隊長が追ってる奴がいる。僕らを圧倒したプレイヤーだ」
影太郎の言葉を聞き、部隊員たちは肯定するように頭を下げる
「奴は強い、強いけど戦果は気にしてないのは事実だ。だから作戦変更するけど、僕とSIRIUSだけがghost22と対峙する。みんなは気にせずに戦場を駆け巡って勝利へと導いて欲しい。いいね?」
影太郎の言葉に、部隊員たちがどよめく
SIRIUSはピクリと眉を動かすが影太郎に任せ、黙ったままだ
つまり今回、部長員は普段通りにメイン戦場に出向き、戦果を上げてもいいのだ、と
「え、ええと、サポートは宜しいのでしょうか?」
「あぁ、君たちは暴れてていいよ。今回の戦果次第では副隊長も視野に入れてるしね」
それを聞き、部隊員たちはやる気を出す
日本鯖とはいえ、世界トップクラスに位置する部隊
その副隊長となれば名誉がつき、さらに『F.war』ではトップクラスの部隊には通常の戦争でも、報酬が上乗せされるシステムなので誰もがそれを目指す目標でもあり、通り道でもあった
──ゲームとはいえ
──娯楽とはいえ
「そろそろ準備に入ろうか…air班、bee班に別れてるはずだから、各班のリーダーはSIRIUSの指示がないけど前線の動き見て退いたり押したりを繰り返してね?いいかな?」
班のリーダーは影太郎の指示に快諾する
影太郎はその場を離れ、パーティ共用会話でSIRIUSと話し合う
「しーりうーすさん!」
「聞こえてる、よくも独断で指示を変えてくれたな影太郎」
「まぁま、いいじゃないですか。積もり積もった不満ってのは面倒極まりないもんすよ?」
それを聞いたSIRIUSは少し項垂れ、頬を叩き気分を入れ替える
「悪いな影太郎、私の尻拭いなんぞ嫌なことを引き受けて」
「ほぉ~…」
「な、なんだ?」
「SIRIUS隊長はいつも鼓舞するだけですから、反省することも出来るんですねぇ」
「バカ言うな、それくらい頭でわかっている…ただ他人が何を考えてるのか未だわからんのだ私は」
SIRIUSの苦手な部分である、他人とのコミュニケーション不足
身近な者や、親類関係は指摘、慰め、時に怒り、時に優しさを見せることは出来るものの
ネットという環境にて出会った相手とは、未だ一線を引く関係となってしまい、冷たくあしらうだけとなっていた
そのため、部隊員がSIRIUSに着いていくのは、SIRIUSのもつ世界ランク2位という肩書き、強さに惹かれただけであり、人柄に惚れた訳では無い
いつかは崩壊する関係性
それに気づいてか気づかずか、SIRIUSは影太郎以外にも接し始めてはいた
その結果として、先のつぶやきが出てしまっていた
──何を考えているのかわからない
別段、それは当たり前ではある
人の思考など容易に汲み取られては、もはやそれは人ではなく人外ではなかろうか
その当たり前を、コミュニケーションで補うものなのだが…SIRIUSはそれが上手くいかなかった
キャラ作りのためか、はたまた性格の問題か
「考えたところで仕方ないでしょ、少しずつ行きましよ“隊長“」
気兼ねなくサポートしてくれる影太郎にはSIRIUSは感謝しきれなかった
「…ありがとう」
────────────────────
鐘が鳴り響き、戦争が始まる
予定通り、air班bee班はメインの戦場へ、SIRIUSと影太郎は少数の戦場へと出向いた
「どう、出ますかねghost22は?」
「……オープン共用会話で居場所を晒してもいいのだが」
「それはまずいですね、メイン戦場から世界ランク2位の首を取ろうとして流れてきたら面倒ですし」
オープン共用会話、いわゆる“全員に聞こえるように会話する“は煽り、罵り等が飛び交う専用会話で、聞くに耐えないもの達はオープン共用会話を設定からオフにしている
ghost22もまたオフにしているため、幸か不幸か使わずに済んだのが結果だ
「じゃあ、どうしま──あっ!」
「……きたな!ghost22!!」
盗賊職であれば身を隠すスキルを用いりながら仕掛けるのが普通であるが、なんとghost22は姿を晒しながら堂々と『ゲァル国』の少数いる敵たちに紛れ来ていた
「なんとまぁ、余裕の表情ですね」
「だが、これでこの戦場は勝ったも同然だな…部隊員全てをメイン戦場に出向かわせて正解だった」
ghost22が集団戦闘を得意としたものならば、少数の戦地には来なかっただろう
「むしろ、SIRIUS隊長目当てとかじゃないです?惚れた腫れたとかそんな感じ」
「馬鹿言え、そんなものは影太郎で間に合っている」
「…え?うぇ!?サラッと恥ずかしいこと言いますね!?」
「…とにかく、お喋りはここまでた。私の姿を見た敵が引いてる今が、ghost22と対峙するチャンスだ」
SIRIUSは前方を見やる
SIRIUSと影太郎、そして他5名の『エル・デ・ガーデン国』が前進しているのに対し、『ゲァル・ブラッディス国』はghost22と1人の女性プレイヤーの間を抜きながら撤退していた
一人、『ゲァル国』のプレイヤーがghost22と夜鳥の羽に声を掛ける
「おい!ghostとかいうのと夜鳥ってやつ!腕に自信あるかもしれねぇがSIRIUSと影太郎ってやつはやべえって!逃げた方がいいぞ!あぁもうダメだ!俺は先逃げる!」
そして、その場所は『エル・デ・ガーデン国』7名と、『ゲァル・ブラッディス国』2名が残る形となった
『エル・デ・ガーデン国』、SIRIUSと影太郎除く5名、戦士職2、盗賊職1、魔法職2が攻撃を仕掛けようする
ghost22は姿を消し、夜鳥の羽は姿勢を低くし、苦無を持つ両手を大きく広げて地面に付け、顔面スレスレの状態からクラウチングスタートを始めた
『エル国』側の戦士職2名が『突進』するのを、魔法職が並んでサポートに入ろうとするが、いつ移動をし終えたのか、ghost22が『武器奪取』スキルで魔法職の手首を打ち、武器である地面に落とした
データである武器は拾うこと叶わずに消失する
『武器奪取』による武器消失は数秒経てば手に戻るが、その間は完全に無防備である
再度消えたghost22に対し、魔法職の2人は2手にわかれ、逃げようとするも何をどう読まれたか、ghost22がまた正面に姿を現す
「ひ、ひぃ!」
情けない叫び声は魔法職1人のもので、叫びと共に首をもぎとられ、即死した
もう1人────とghost22は接近しようとするが、叫び声を聞いて『エル国』の盗賊職が阻む
「追わせねぇ!」
盗賊職が使うスキルは『背後出現』に『首取り』と、公式認定のコンボだ
ghost22の背後に現れた盗賊職はすぐさま『首取り』による両手に持つ武器で首をもぎ取ろうとするも、ghost22は頭を下げて避けた
「んなっ、ありかよ!!」
ghost22は両手を地面に着け、両足を盗賊職の胴を挟む
「…スキル以外にもリアルによる体術は引き継がれる、この世界舐めるなよ…?」
挟んだままの胴を、ghost22は体全体を使い、盗賊職を横倒しにする
「グアッ!」
痛み慣れしていない盗賊職はモロにこめかみを地面にたたきつけられ、昏倒する
その隙を狙い、ghost22は『首取り』スキルを発動した
一方で、戦士職2名を相手取っていた夜鳥の羽は、同時『突進』した戦士職2人の攻撃をもろに喰らっていた
「SIRIUSの出る幕じゃねぇな弟よ!」
「そのようだな兄よ!」
両手武器による『突進』からの下からかち上げる『スマッシュ』が入る瞬間、夜鳥の羽は体を縦に攻撃を避ける
「な、なんだと!?公式のコンボの間隔は13フレームだってのに!?」
「落ち着け弟よ!まだ──」
ガギィン!と音がしたと同時に装備のアーマーが崩れ落ちる
「なっ…!『装備破壊』!?」
兄弟同時に砕かれた装備
上半身が肌を見せ、恥じらいのない肉体が外気を晒す
「つ、次の攻撃を避けぬと致命傷だぞ弟よ!!」
「分かっ────」
間髪入れず、夜鳥の羽は『心の臓・静止』を発動させ、弟と呼ばれる方にダメージを負わせる
「ゴハァ!」
「弟よォ!!お前ぇ!!」
上半身裸の兄は本来両手で振り回す武器を片手に持ち、大ぶりの横薙ぎに振り回す
だがその夜鳥の羽に対する攻撃は、膝を曲げ、体を後ろに逸らすことで避けられた
「なんたる体の柔軟さ!だが弟の敵討ち取ってくれる!!」
「兄よ!俺はまだ動ける!!」
「分かった!好機を見て攻撃を頼むぞ!!」
「分かった!」
夜鳥の羽はいったん後退し、最初と同じ両手を地面に広げ、クラウチングスタートの姿勢をとる
「……このままだとジリ貧…多少の攻撃くらってでも、キルする…あっ」
夜鳥の羽はghost22との約束を思い出した
──生きろ、それが課題だ
思い出し、笑う夜鳥の羽
過去に、救ってもらい、吊り橋効果と分かっていても、好いた人から贈られた約束の言葉
──約束守ったら、キスとか貰えるかな
「何を笑っとるか小娘ぇ!!」
思考を遮られ、怒鳴る兄に苛立つ夜鳥の羽
「……煩い!」
怒り任せに飛び出すも、約束は守る夜鳥の羽は、走る勢いそのままに、跳躍する
「馬鹿め!飛べば的だぞ!」
3メートル飛んだ夜鳥の羽に対し、兄はスキル『天翔』を発動させる
両手武器を持ち、そのまま跳ね上がっての直接攻撃だ
だが、夜鳥の羽は空中にいるにも関わらず胴体を無理やりひねり曲げ、攻撃によるダメージを最小限に抑えた
「んなっ!馬鹿な!!」
兄は飛んだまま着地を待つのに1秒
そして、夜鳥の羽が着地する場所には弟が構えている
「お前はここで迎え討つ!!」
弟が選んだスキルは、上段から下段へと武器を振り下ろす『瓦割り』だ
武器は長い柄に先端が斧となっており、殺傷力は極めて高い
「…まともに喰らえば死んじゃう…っ!」
上段から振り下ろされた刃を、夜鳥の羽は
歯で受け止める
「!?!?」
弟は驚きながらも、そのまま地面に叩きつけようとする
しかし、弟は驚愕して力が緩んだか、はたまた女子の顔を半分切り落とすのをためらったか
叩きつけるには時間を要し、その間に夜鳥の羽は首をひねり口から斧を離し、胴体を柄へ、両足を弟の首にまきつける
「グエッ!」
さらに夜鳥の羽は水平の状態から上体を起こし、股間部を弟の後頭部に持ってくるように体を移動させる
「な、何を…!」
「…ぇいっ」
夜鳥の羽はスキル『首取り』で弟をオーバーキルさせた
「お、弟よォォォォオオオ!!」
「…兄弟愛……素敵だね」
上半身裸だったはずの兄は『装備破壊』の効果が切れて、鋼鎧の装備が戻っていた
「うぉぉぉおおおお!」
「叫んで……恐怖心をなくす?…わかるよ、怖いもんね…」
夜鳥の羽は体勢をまた低くし、音速に近い速度で兄と交叉した
「ぐ、ぅぅううう!無念!!…だが!見事なり!」
夜鳥の羽が発動したスキルは『殺戮者の一撃』
元々高い素早さを最大限に引き伸ばし、低い防御をさらに減少させ攻撃力に乗算させた一撃
代償として武器の耐久値が減るものの、課金アイテムのハズレ枠に耐久値回復アイテムがあるため、支障がないのが現状である
この『殺戮者の一撃』は盗賊職にはない
そう、『天武職』シリーズの1つ、『
防御を捨てたスキルが多いため、上級者向けの『プロ』レベルでないと扱えないのが欠点で、夜鳥の羽は自信の持つ才能である『人類限界反射神経』を備え、『殺戮者』となっていたのだ
一方のghost22は、残り1人の魔法職を討ち取った後、SIRIUSと見合っていた
先に口開くはSIRIUSだった
「ghost22よ!前回私に浴びせられた汚名を返上させてもらうぞ!」
「…」
「今回は2名だが、しっかりと策は練ってきた!!行くぞ影太郎!!」
「はいよっ!」
ghost22は接近してくるまでの間、SIRIUSと影太郎の動作一つ一つを注視していた
作戦があろうとなかろうと、人間は攻撃ひとつに癖は出る
SIRIUSは現実世界でもショートカットなのだろう、髪をかきあげることは無くghost22をずっと監視していた
戦士職の『天武職』シリーズ、その中での『
それに対し、影太郎は盗賊職の『天武職』シリーズ、『
──『戦乙女』と『狂乱』
──『ヴァルキリー』と『ピエロ』
──自前強化と攻撃系支援
『プロ』である2人をどちらも相手取るには、数か実力があれば押し返せることは出来る
伊達に世界ランクのトップランカーを務めていない証拠だ
「……」
攻撃の瞬間を見極めるghost22
先手の攻撃にハマれば連携技を喰らい、即キルされるだろう
「“行くぞ!“」
SIRIUSは自己強化系バフの『速攻』を使い、攻撃速度と移動速度を高め、ghost22の懐に入ることが出来た
「…っ!」
「驚いたか?今までは遠距離からの攻撃で相手の動きを見ていた私だからなっ!」
腰に着けていた両刃剣を抜き、横薙ぎに振るう
しかしghost22は半歩下がり攻撃を浅く受けた
「やるなっ!だが前回とは違うぞ!」
そこからの連撃はghost22にとって問題なく避けることが出来た
最初の一撃は、過去のghost22のもつ記憶をすり合わせても、SIRIUSは1度も行ったことがなかったので、油断したことによりダメージを負ったのだ
「くっ!まだ届かないか!」
「隊長!合わせて!」
『狂乱』職の影太郎が姿を隠すスキルからghost22のいる背後に出現すると、背中に触り『操作逆』スキルを発動させる
「!?」
「僕このスキルあまり使わないんだけど…ねっ!」
ghost22の驚愕は『操作逆』による、自身の動作の反転よりも
触れられたことに対しての驚愕が勝っていた
終わり( ゚∀ ゚)飽きた
F.war ──独人の亡霊── 黒煙草 @ONIMARU-kunituna
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