記念撮影

沖田 陣

第1話

 ブレザーの袖に通した手がまだ指先ぐらいまでしか出てこなかったあの頃、私の前にはきっと可能性という名の灯火があちらこちらに浮かんでいて。

 無造作に手を伸ばせば、そのうちの一つくらいは手にすることができたのかもしれないけれど、当時の私には無限ともいえるその暗闇かのうせいの中に手を差し出すことがなぜだか無性に怖かった。

 

 後悔をしているわけじゃない。

 と、思う。


 付け加えるならば、数年経ってからもたまに――いや、実のところ結構な頻度で――沸き起こるこの回顧をただの感傷だと自分に対してうそぶいてしまうほど、どうでもいい思い出だったわけでもない。


 目の前のことばかりに必死になっていたとはいえ、それでもどこかの誰かが気障きざったらしくアオハルだなんて読み方を流行らせたその何物にも変えがたい宝物は、私の中にも確かにそこにあったのだと知っているからだ。




 佐鳥さとり 優姫ゆき

 私のアオハルは、いわば彼女との冒険の日々だった。

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記念撮影 沖田 陣 @sharerain

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