終結した反乱の意思達 中
「…とにかく、アサトが言う通り、お疲れ様だった。僕らのいない所で戦闘をして、多くの情報を得てくれた事には感謝をする。話の内容から言って、彼らも玉座を狙う軍隊だと思う。だから…敵と認定して、これからの計画を話す」
クラウトの言葉に一同の表情が引き締まり、横になっていたジェンスは、ゆっくりと起き上がり、再び胡坐をかき、その傍にアサトが座った。
「あくまでも、我々は交渉を前提とした行動をとる。黒いモノらが王都へ来るのは明日と考えれば…」
「彼らだけではないよ!」
頭上から声が聞こえて来た。
その方向を一同がみると、そこには、黒い靄の翼を持った青年の姿があった。
「ミュム様!」
ポアレアが立ち上がり、ロジアンとロスも立ち上がってミュムを見て、メルディスとコウレナは安堵の表情を見せている。
地面に立ったミュムは大きな笑みを見せた。
「遅くなってごめんね。色々見て来たから」
「こ…こんにちは…」
立ち上がったアサトがぎこちなく言葉にすると、アサトの向こうへと視線を向けたミュム。
その視線を追ったアサトらに、見覚えのある姿が見えて来た。
「…あれは…」
呟くアサト。
「あぁ~」
その言葉に、クラウトがメガネのブリッジを上げた。
「ロイド兄さん!」
セナスティが立ち上がり駆け出し始め、その様子を見たアサトとクラウトは目を合わせた。
「セナスティ…か?」
駆け寄って来る、髪を切ったセナスティを見たロイドは、目を細めて立ち止まり、そのロイドに飛びつくセナスティ。
「…兄さん…。会えて良かった…。ホンと良かった……」
「おまえも…。無事みたいだな…。そして…もしかして?…」
「うん…。」
ロイドから離れたセナスティの頬を、両手で優しく包んだロイドは言葉をかけ、その後にアサトらを見た。
「手伝ってもらえる…」
その言葉に、セナスティを見たロイドは小さくため息をついた。
「…そうか…」
進み出すロイドはアサトらの目の前に立ち、一同を見渡し、重く口を開き始めた。
「君たちは…」
その言葉にクラウトが、小さく前に出たが、その前にアサトが口を開いた。
「すみませんロイドさん。確かに忠告は受け取りました。だから、僕らはセナスティさんの要請は訊いていません」
「訊いてない?」
アサトへ怪訝な表情を見せたロイド。
「はい…。ここに来たのは、僕の意思であって、僕らの意思であります。その先に共通の目的が出来たので、セナスティさんと共に行動をしていました。」
アサトの言葉に、セナスティを見たロイドへ、小さく頷いたセナスティ。
しばらくセナスティを見ていたロイドは、頭を掻きながら、小さくため息をついて見せた……。
ロイドの他に仲間が3名ついて来ていた。
名前は、ジョディスと言う小さな女性とライベルと言う髪の長い男、そして、体格のいいクラウディスと言う者であった。
焚火を囲んだアサトらは、今まであった出来事を話し始めた。
まずはロイドの話しである。
ロイド達は、3日前に王都へ潜入しており、現在、父親の軍を待っている状況のようだ。
目的は、王位奪還と言う事であった。
計画の内容は、いまだに決まっておらず、軍にいる作戦立案を得意とする者と協議をしてから決めると言う曖昧な話しをしていた。
ミュムに関しては、メルディスからの報告を受け、ロスの言葉もあり、この国が、どの方向に向かって進むかを見極める為に、動いたと言う事である。
現在は、紫鬼のロンドがジア・ドゥの軍に密着しおり、到着は明日の午前中では無いかと言う事であり、青鬼のフェレストは、西から王都へ向かっている少数の軍に密着していると言う事であった。
その言葉にセナスティが何かを考えている。
ミュムが言うには、現状の政策は、彼らにとって不利益な政策であり、また、この国の根幹を揺るがすような、忌々しき事態であると言う事で、事と場合によっては、ミュム自体が王都を制圧すると言う話である。
それには、ミュムら以外が難色を見せた。
それは、王位継承者であるセナスティがそこにいたからである。
ミュム自体もこの案件は、ほかの者が関与する事案ではない事は分かっていた。
クーデターが発生した時点で、王族とクーデター派の衝突と言っても、一般人の参入を確認していない点から、王族、貴族間での事態収拾が好ましいと感じていたのであった。
…そして…。
アサトらである。
クラウトは、ミュムの村を出発した後の話しを始め、エギアバル前での戦闘とセナスティらとの出会い、エギアバル監獄で見た光景、そして…、ここに来た経緯を、事細やかに説明をすると、付け加えるように、ライザがカギエナで有った出来事を報告した。
「それで…、計画はあるの?」
ミュムの言葉に、メガネのブリッジを上げたクラウト。
「はい、計画は練り上げました。不測の事態の対処も考えております。ただ言えるのは、ミュムさんやロイドさんが言うように、この事案は、この国をつかさどり、運営する者らが収めなければなりません。死んだ、殺されたの人情ごとや、復讐心で行う事では無いと思います。」
クラウトの言葉に目を細めたロイドとケイティ。
「可能な限り、流血を避け、話し合いで事を収集したいと思います」
「可能な限りね……」
ミュムが言葉にする。
「私が思っているのは、市民第一です」
セナスティを見たクラウトに、小さく頷いてみせた。
「わたしもそれが一番だと思います。でも…話を聞く限りでは、戦場が王都になる可能性があります」
「そこで、みなさんの話しを聞いて、実行は明日。我々がセナスティ皇女を共ない、王のいる城に赴きます」
「行くって…。どうやって!」
ロイドが目を見開いて、言葉を上げた。
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