第11話 終結した反乱の意思達 上
一人に金貨3枚を払ってアサトらは、王都から、前日購入した箱を伴って出門をした。
確かにクレアが言う通りに、ここは簡単に出入りが出来るようである。
昼過ぎにライザとタイロン、ジェンスが診療所に訪れ、王都への到着を知らせ、その足で、みんなが待つ、王都から少し外れたため池へと向かったのである。
「そんな事があったのか…」
ため池の傍に留めた馬車の傍で、一同が顔を合わせ、ひと時の再会と無事を確認してから、カギエナであった出来事を聞いた先陣隊。話を聞いたクラウトが、得意のメガネのブリッジを上げ、アサトは、ケイティから離れない、トラの人形を持っている少女を見た。
…この子、あの時の……
カギエナを出る時に見た、馬車に積まれていた檻の中にいた少女。
その子を見たアサトは……
「とにかく…あいつらは異常だ…。と言うか、異常に強いぞ!」
アサトが何かを思い出そうとしていた時に、タイロンが、焚火の準備を始めながら言葉にしたのに、視線を一同へと向けた。
「あの様子だと、明日の朝には、王都に着くと思われる…」
ロジアンが馬車の傍に腰を落とし、その傍にロスが腰を落として、その2人を守るようにコウレナが、そばに立ち、その傍で、カルファの診察を受けたビッグベアが、馬車から降りてきていた。
「君たちに追いつこうと思って進んだ先が、カギエナでな。その時は、門を出始めた軍の姿があった。ここに向かってくると思われる」
「明日の朝…ですか…。何の目的でしょう…」
「制圧…なのかな…」
ロジアンの言葉にアサトの問い、その問いにアリッサが口を開き、アサトはアリッサを見た。
「ごめんなさい…」
アサトの視線に頬を赤らめたアリッサ。
「いや、考えられない訳では無い。混乱に乗じて、玉座を狙う諸侯もいると思われるが…、皇女は、その人達を見た事がありますか?」
クラウトの問いに目を細めて、小さく考えたセナスティ。
「いえ…、見覚えはありません」
「皇太子って自分から名乗っているから…、なんだっけ。アルなんとかの息子とか…」
「それは無いです。アルゼストやセルゼットの息子なら、私も見覚えがありますから…」
タイロンの言葉を否定したセナスティを見たタイロンは、小さく肩を上げ、ならお手上げと言う表情を見せた。
「おれは、あいつを知っている…」
馬車の脇に腰を落としていたビッグベアが言葉を発し、その言葉に一同が視線をビッグベアへと向けた一同。
「あいつが誰の子かは知らないが、会った事はある。名前は『クレミア』」
「クレミア?……」
セナスティが顎に手を当てて考えた。
「どこで、ですか?」
「王都の東にある宮殿だ。あそこの持ち主は…。わからないな。宮殿持ちは、王都には多くいる…」
クラウトの言葉に返すビッグベア。
「それで…クラウト君。どう推測するの?」
クレアの言葉に一同を見たクラウト。
「彼らが敵か味方か…」
「敵だよ!あれは…。」
ケイティが声を荒げ、そのケイティを見たアサト。
そのアサトを見返したケイティは、眉間に皺を寄せ、レアを強く抱きしめて言葉を発し始めた。
「アサト…。あれは敵!敵でなくても、あたしは許さない!レアのお母さんを殺した張本人…。あたしは…」
「あぁ~、確かに敵だな。黒いモノも異様だし。あんなのが、この国を統治したら、えらい事になる」
なんとなく、ケイティの怒りを大きくさせないようにしているのか、タイロンが火をおこしながら、ゆっくりとした口調で言葉を発した。
その言葉に口を噤み、顎を引いたケイティ。
「アサト君…クラウトさん…」
ケイティの傍にいたシスティナが声を出し、そのシスティナへと視線を向ける。
「…わたしもそう思います…。それに、わたしの魔法に対抗できる魔法を使える者もいました…」
「シス、あれは、お前が疲れていたからじゃないのか?」
ジェンスが、地面に胡坐をかき、何処で拾ったのかわからないが、口に細く長い枝を銜えながら訊いた。
確かに、あの戦闘の前に、林で黒いモノを一掃した魔法を使ったシスティナは、休息をとっていたが、ほとんど休んではいなかった事実がある。
「はい…でも、オレンさんの話しだと、わたしの魔法は、どんなに威力を弱くしても、現代の魔法では防ぐことは容易ではないって言っていました…」
「と言う事は…、古の魔法を使う者か…」
「古の魔法って…最強なのか?」
クラウトが顎に手を当てて何かを考え、ジェンスが身を乗り出してシスティナを見ており、その視線に頬を赤らめて首を傾げて見せ、その姿にニンマリとした表情を浮べたジェンス。
…ジェンス、なにを企んでいるの?まっ、とりあえず……。
ジェンスの様子を見て思っていたアサトは、小さな笑みを見せた。
「とりあえず、みんな…お疲れ様でした。色々あったみたいだけど、無事でよかった。黒いモノの正体は死人で、呪術で生き返っている、そして、古の魔法を使う者が……」
「召喚士もいる!」
アサトの言葉を遮ったセラへと視線を向けた一同。
その視線に、そばにいたシスティナへと体を寄せて見せた。
「召喚士?」
「あぁ~、そう言えば、大狼とデカいライオンが戦っていた。」
クラウトの問いに、ジェンスが大きく背中を倒して、地面に寝転がって答えた。
「デカい…ライオン」
「キマイラね…」
クラウトのつぶやきに答えたのは、クレアである。
「キマイラ?」
「そう、幻獣の一種よ。対して強くは無いけど、召喚獣であるはず…。その召喚獣を扱うと言う事は…」
アサトの言葉に返したクレア、そのクレアにアサトは訊いた。
「オークプリンスと同じ感じなのですか?」
アサトの言葉に小さく頷いた。
「うぅ~ん…、そうね。ランクから言えば、オークプリンスと同等と思える。オークプリンスもキマイラも見た事無いけど、書物では、そんな感じでは書いてあったと思う…。」
セラは、その言葉に顎を引き、その様子を見ていたシスティナがセラの肩に手を回した。
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