終結した反乱の意思達 下
「門で捕まって終わりだぞ、王と話をしたいからって言っても…」
クラウディスが眉を上げ、その言葉に持って来たモノへと視線を向けた。
馬車近くには、シーツが掛けられた大きな箱が3個、荷車に積まれてある。
「話をしたいと、面と向かっては言いません。我々は、フーリカから来た商人を装い、クレリアレシクの港にて、セナスティ皇女を捕え、新国王即位の祝いの品を持参しながら、お尋ね者を届けに来た…と言う設定で、城に侵入したいと思います」
「ほぉ~、面白そうじゃな…」
ロジアンが顎を撫でて眉を下げた。
「謁見の間で、新国王と言われるセルゼットと面会をして、彼の考えを聞いたのち…」
クラウトはアサトを見た。
「…我々の考えと相違があるなら話し合い…。そして…」
「決裂したら…事を起こすと言う事か…」
ロイドがクラウトを見た。
「はい…」
クラウトの返事に目を細めるロイド。
「そこを制圧してしまえば、なんとかなると言う算段だね。」
ミュムが腕組みをした。
「はっきりは言えません。内情が分からない限り楽観はできないかと…、だが、最終的には、セナスティ皇女とセラスナル皇太子の力だと思っております。」
ロイドはセナスティを見た。
その視線に気付いたセナスティは、ロイドを見て微笑む。
「セナスティ…それでいいのか?」
「それでいいのか…と言われても、私は誰かの力を借りなければ、どうにもできないと思っている。お兄さんの力もそうだけど…。アサト君らは、血には血での戦法を好んでいない…。それに…かけたい……」
セナスティの言葉にアサトを見たロイド。
「君たちは、彼の案に対して反論はないのか?」
「無いです。クラウトさんの案には、僕が考えている事を、重要視して考えてくれていますので…」
「戦わずして勝つか…」
アサトとロイドの会話を聞いていたロジアンが立ち上がった。
「主、わたしもこの者らと共に行ってもよかろうか?」
「え?」
小さく驚いたミュム。
「わ…わたしも……」
隣に座っていたロスも立ち上がった。
「ふぅ~なら、俺とポアレアが付き添う…それに…」
「わたしも行こう!」
メルディスが大きなため息をついて言葉にし、コウレナも声を出した。
「…まぁ~、いいんじゃない?本当は僕も行きたいんだけど…」
残念そうな表情を浮べてミュムは南の空を見た。
「あとは、向かってくる軍勢をどうするかだね…」
ミュムの言葉に、顎に手を乗せて考えたクラウトを見たロイドは、髪を掻きながら大きなため息をついた。
「みんながそう言う動きになるとしたら、俺も同調しなければならないと思う。」
ロイドを見る一同。
「親父の軍とセナスティの軍は、こちらで留めとく」
ロイドの言葉に大きく目を見開いたセナスティ。
「え?どういう事?」
「あぁ~。悪いが…。お前がルヘルムに駐留させていた軍の招集をした」
「なるほどね…」
ロイドの言葉に、納得した表情を見せて、言葉を発したミュムを見た一同。
「もう一つ、軍が動いていると思っていたんだ。あれは味方って事だね」
ミュムの言葉に頷いて見せたロイド。
「なら…ジア・ドゥは僕らで…」
ミュムが言い笑みを見せた。
「あとは…」
クラウトが一同を見る。
「西から王都へ向かってくる、小規模の軍を…どうするか……」
「私に心当たりが…」
セナスティの言葉に視線を向けた一同。
「ここ当たり?」
「えぇ~、これから手紙を書きます。クラウトさん手伝ってもらえますか?」
クラウトの問いに返したセナスティ。
「いいですが…、相手は?」
「私の婚約者だった人です…」
「え?」
セナスティの言葉に驚きの表情を見せた一同は、互いの顔を見合わせた。
「婚約者って…」
一番驚いているのはロイドだったかもしれない。
「はい…。でも、破局されましたから…」
「された?」
ロイドの言葉に、何故かケイティが立ち上がった。
「そんなのどうでもいい!とにかく、あたしはクレミアを殺す!」
怒りに、満ち溢れている表情のケイティを見たアサトは、困った表情をみせた。
…うちの姫は、クラウトさんの話を聞いてなかったの?…
「それじゃ…、城に行く者は、我々アサト一行と…ロジアンさんにロスさんにメルディスさんとポアレアさん、そして、セナスティ皇女に…」
「俺もだ!」
ビッグベアである。
彼を見たクラウトはメガネのブリッジを上げた。
「…俺は、こいつの母親に連れてきてくれと頼まれた、俺のいない場所で、死なれては困る。俺が皇女を守る」
ビッグベアを見たロイドは、小さく顎を引き、セナスティは、ビッグベアに向かい小さく微笑んでいる。
クラウトもビッグベアを見ながらメガネのブリッジを上げた。
「それじゃ…こ…」
「俺も行く!」
クラウトの言葉を遮ったロイド。
「兄さん!」
「お前だけに、重荷を背負わせる訳にはいかない…俺も約束したし…」
「約束?」
セナスティの言葉に目を細めたロイド。
彼の頭の中では、セナ・エナの言葉が走り、それと同時に、この事を話してよいのかと言う葛藤が入り乱れていた。
まっすぐに見ているセナスティ。
その目を見たロイドは小さく笑みを見せた。
「…気にするな…」
その言葉は、これからある出来事だけを見ていて欲しいと言う、わずかながらのロイドの気持ちであった。
「…じゃ、セナスティさんは、手紙を書いていてください。僕らはこれから…ショッピングをしてきます」
「ショッピング?」
ケイティがニンマリとしてクラウトを見た。
「遊びじゃないぞ!」
「キャラ…買っていい?」
さっきまでの表情が嘘のように、大きな笑みを見せて言葉を発したケイティを見て、小さな笑い声が一同から上った……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます