動き出し始める、各々の想い 中
…セナスティと後続隊…
「大丈夫?」
場所の窓から顔を出したセナスティは、馬に乗っているビッグベアへと言葉をかけた。
ナンバー4に斬られた横っ腹に回している包帯は、すでに真っ赤になっている。
「馬は振動があるから…」
「俺が馬車に乗れる訳無いだろう!」
巨体であるビッグベアの身長は2メートル以上であり、横幅もかなりで、馬車に乗れば、何人かは馬に乗らなければならない。
馬車の中では、ケイティからは離れないレアが、手を回して眠っており、ケイティは、レアの眠っている表情を見つめ、レアを挟んでシスティナが2人を見ており、その傍では、システィナにもたれ掛かってセラが眠っている。
向かいには、横になっているキャンディに背を預けながら、ライザが大きな口を開けて寝ていた。
その隣にセナスティがおり、馬車の横の小さな窓を開けて、ビッグベアへと言葉をかけていた。
少し窮屈にはなるが、乗れない事は無い。
本当は、横になって安静にしていた方が一番いいのだが……
「今夜は強行軍で、明日の昼には王都へと着く予定だから…」
「わかっている。」
セナスティの言葉に返すビッグベアは、小さく苦悶の表情を見せた。
「ライザさんの知り合いが…」
「わかっているから、お前は眠れ!」
ビッグベアの言葉に首を竦めたセナスティは、前方へと視線を移した。
進んでいる馬車から発せられている明りは、数十メートル先までをもしっかりと照らし、道にある小さな石や道脇に樹勢している木や大きなシダなどの姿をはっきりと浮き上がらせており、その明るさに小さく驚いた表情を見せたセナスティ。
この世界のモノではない明りの種類、セナスティの知っている明りは、炎である。
炎だけでは、このような昼間のような明りは作り出す事は出来ない、これが、どのような原理で成り立っているのかも、皆目、見当がついてはいない、自分がどれだけ、無知なのかを感じていた。
ただ、周りの者…、セナスティだけでは無く、手綱を持っているタイロンの隣に座るキエフや、馬に乗っているメルディスにポアレアまでも驚いていたのには、少しばかり安堵感を覚えた。
チームアサト…。
このチームが、どのようなチームであるのか?
アサトが持っていた武器やシスティナが放った魔法、そして、セラの召喚獣…。
いずれにしても、ただの狩猟者チームでは無いと感じており、その者らが、自分の行動を手伝ってくれている事に、今は亡き、ベラトリウムが言った。
『何かあったら、デルヘルム、ギルド、パイオニアのチームアサトを頼れ…』
その言葉がよ蘇っていた。
彼が、彼らに何を見たのかわからないが、今は、その言葉の意味の小さな部分を見ているような気がしていた。
それに、エギアバル監獄で、アサトが放った言葉と、その言葉に表情を変えた仲間達…。
カギエナでのケイティ達の行動…。
そこには……。
しばらく照らされている道を、考えながら見入っていると、行く手に人影が3つ映し出されてきた。
その姿にタイロンも目を細め、手綱を握りしめ、キエフも目を細めた。
近づくにつれてその姿が確認できる。
ライトを下向きに変えたタイロンと、目を細めて確認しているキエフの目の前には、白鬼のロジアンに、ロスと言う予言をする鬼の姫、そして、体の線を強調し、胸を大きく開かせている服を着ているコウレナが、眩しそうな表情で立っていた。
急に止まった馬車に、後ろを追随していたメルディスとポアレアが、顔を見合わせてから進み出し、とりあえずしがみついている状態のジェンスを乗せた馬が、後について進み、ビッグベアは小さく苦悶の表情を見せている。
「姫!」
メルディスの声に、システィナとケイティが顔を見せあい、眠い目をこすりながら、ライザが大きく背伸びをしている後ろでキャンディは寝ていた。
「ほほほ、みな無事…ではないようだな…」
ロジアンはビッグベアを見て言葉にすると、ロスに向かって小さく頷いて見せ、その仕草に進み出し、ビッグベアの傍に近づいた。
「降りて…」
小さなロスを見下ろしているビッグベアは、馬車の横から顔を出しているセナスティにむかい視線を向けると、彼女は瞳を見開いて見ており、その様子をタイロンがのぞき込む。
「姫は、治癒の能力を持っている…。お前たちで言えば…神官だな…」
ポアレアが馬から降り、ロスの近くまで進みながら説明をした。
「神官?」
セナスティの言葉に小さく頷き、共に見ていたポアレアが、馬上のビッグベアへ手を差し伸べた。
その手を見たビッグベアは、再びセナスティを見ると、彼女は小さく頷いて見せ、その様子を確認すると、ゆっくりと馬を降り、手を差し出したままのポアレアは、その手の行方をどうすればいいか、わからないような表情を見せながら、降り立ったビッグベアを見上げた。
外の様子を見る為にセナスティが動くと、レアが目を覚まし、ケイティに預けていた体を、再び強く押し付け、セラも目を覚まし、眠い目をこすりながら辺りを見渡し始めた。
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