炎の神に誘われた事と思わぬ人たちの登場 下
階段を登っている途中で、たしかにケイティの声が聞こえてくる。
昇りきった場所では大きな巨体が腕組みをしており、その傍にはセナスティの金髪ボブヘアーが見えていた。
登って来たアサトらに気付いたセナスティが視線を向け、その視線を見ながら登りきると、食堂入り口でタイロンとセラが立ち、その手前にはシスティナとアリッサの姿があり、食堂内では、ケイティとジェンスが何やら大声を上げていた。
よくみるとそこには、パンやスープに肉料理と…多くの料理が並べられており、椅子に座っているケイティとジェンスが、フォークを向けて叫んでいた。
…といか、どう言う状況なの?
アサトとクラウトがシスティナとアリッサに並び、一度2人へと視線を向けてから食堂へと視線をかえた…と?
椅子にふんぞり返っているケイティは、フォークを向けてなにやら話している…。
「ってか、なんであんたらがいるの?料理はともかく!なんで?」
そのフォークが向いている先には、赤い肌をしている鬼?と黄色い肌をしている鬼が、テーブルに並べられてある肉を食っていた。
「…ってかいいじゃなぇ~か!ここに食い物があるんだから!」
「そうだよ!」
…え?
アサトらが来たのが分かったのか、調理場の方から声が聞こえる。
「なにぼさっと突っ立っているの!早く座って食べな!」
女性の声で聞き覚えは無い…だが…。
「クレアさん!」
クラウトの声に、調理場へと視線を向ける一同。
そこには、ワンレングスヘアで片目が髪で隠れ、うっとりとした視線を向けた大人の女性が、顔に似合わない白くピンクのハートの刺繍を施しているエプロンを着けてアサトらを覗いていた。
「クレアさんって…」
…そう言えば、クラウトさんがクレアシアン討伐戦で、一番目を輝かせていたチームの名前であり、そのチームのリーダーがクレアだったような…。
「どうしてここに?」
「クラウト君、とにかく、お腹を満たしてからよ!」
その言葉に、茶色い髪のカーリーヘアの小さな女性と、タイロン程に大きなツインテールの女性が、大きな皿を持って調理場から食堂へと進んできた。
調理場では、大きな炎が上がるのも見え、そこには、体格のいい男が大きなフライパンを振っている姿が見えた。
「とにかく…いただこう…」
クラウトの言葉にアサトら一同は席に就く、ケイティは、怒りながらもテーブル上に並べられている料理を、口いっぱいに頬張っており、システィナとアリッサも手伝いに向かい、ケイティの隣にジェンスが座っていて、その向かいに赤鬼のメルディスに黄鬼のポワレアが座っていた。
ケイティの隣にアサトが座りクラウト、ジェンスの隣にセラが座ると、うるさいジェンスの頭をロッドで小突き始め、その隣にタイロンが座った。
メルディスの隣にカーリーヘアの女性、大きな体格のツインテールの女性がポワレアの隣に座り、クラウトの正前にクレアが座ると、その隣にビッグベアが座った。
タイロンの隣にアリッサが座り、クラウトの隣にセナスティ、システィナが座ると、調理をしていた男が現れ、ツインテールの女性の隣に座り、とりあえず、全員が席に就いた。
「ってか、なに?なんなのこれ?…おいしいけど…」
「うまいものはうまい!」
ポワレアが言う。
「うまいものは仕方ないけど…なんなのあんた達わぁ!」
「俺たちは、鬼たちだ!」
「ってか、分かっているよ!そんなの!なんでいるの!」
「いるから仕方ないだろう!」
「あぁ~答えになってないけど…うまいわこれ!」
ケイティ姫はいまだにご乱心であるが…。
「そこの3人!とくに小さいの!そろそろやめなさい!」
「あぁ?なに?おばさん!小さいって背だよネ?背?」
「…おばさんって…。」
立ち上がったクレアは、ケイティを見下ろした。
「あなた…いま、さらぁ~っと言ってはいけない事をいったよね。おチビちゃん?…小さいって、背?…そう思っているなら、そう思えばいいわぁ~。でもね…」
「…あぁ?おばさん!なに?なんか、さらぁ~っと、言ってはいけない事を言おうと…」
「ケイティ!」
アリッサの声に言葉を止めたケイティ、その様子を見ていたとメルディスにポワレアも目を見開き、静かにフォークをテーブルに置いた。
…。
…ってか、赤鬼さんと黄鬼さんは、なんでいるの?
…ってか…クレアさんたちわ…なんで?
「それでは…食事にしましょう!」
クレアの言葉にテーブルの上の料理に手をかけ始めた一行。
「それで…、ここにいる事を教えてもらえますか?」
クラウトが目の前にあるエールをクレアへと向けた、その行動にカップを差し出して笑みを見せる。
「…それじゃ…」
クレアの話によると…。
『クレアシアン討伐戦』後に、『デルヘルム』商業組合からの依頼で、王都『キングス・ルフェルス』の状況視察を行う事になったようである。
クレアを入れた6人で王都へと向かい、王都の医者『カルファ』と言う女医が開いている診療所を拠点に偵察行動を行っていたようであった。
クレアが『キングス・ルフェルス』に着いた時には、人間至上主義の流れは、さほど感じなかったようであるが、ここ一週間ほどで情勢が急激に変わったようであり、王都の依頼は3人に任せ、アイゼンの依頼でアサトらが、無事にオースティア大陸からフーリカへと渡航できるかを、確認してもらいたいとの事で、砦付近で待ち、そのあと、気付かれずに共に行動をしていたようである。
これもアイゼンの依頼で、アサトらの旅を見守ってほしいとの事であったようだ。
ミュムの村に『オア』の村を通り、黒いモノらとの戦い…そして…。
今に至ったようであった。
監獄に着くと、監獄前にいた鬼たちと出くわし、一戦を交えたようであったが、話を聞いたら、彼らも『ミュム』に頼まれ、アサトらを追いかけている内容を説明したようであり、その内容を半信半疑で取ったが、とりあえず、アサトらと合流してから、どう対処するかを考えたようである。
メルディスの話しでは、ミュムの村を去った後、ロスの予知で、近いうちに王都で、この国全体を巻き込む戦が起きる状況になると言う話で、詳しい内容は、ミュムと白鬼のロジアンしか知らないが、アサトらの行動が鍵になると言う事であった。
そこで『オア』の村で向かった方向を訊き、監獄方面と『クレリアレシク』の分かれ道で見かけ、後追って来たら…クレアのパーティーの襲撃に会ったと言う事で、話をしている内に、悲鳴が聞こえて来たので向かってみたら…アサトの言葉が聞こえて来たようであった。
…まぁ~、とりあえず、よしとしとこう…。
カップに入っているエールを飲んだクレアはクラウトを見てからアサトへと視線を移す。
うっとりとした大人の女性の雰囲気に、小さく息を呑んだアサトへむかい、小さく微笑んだクレアはコップを置いた。
そして……。
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