何者

ヒガシカド

何者

「目が覚めたかい」

 僕の視界に彼が映る。

「僕は何を?ここはベッドの上?」

「覚えていないのかい、僕達はセックスをしていたんだ」

 一拍後に、衝撃がやってきた。

「な、ナンデエ!?」

「僕達が恋人同士だからさ」

 僕は努めて冷静になろうとした。そう、彼は僕の恋人だ。

「絶頂する時に妙な事を言っていたね。誰、誰エー!?って」

 おどけた調子で彼は僕をからかった。言い返そうとして身じろぎしたが、僕は満足に体を動かせなかった。というより拘束されているではないか。

「あれ、こんな趣味だったっけ?」

「そそるね、そのぽかんとした面」

 僕は彼との性生活を思い返した。回数が多いわけでも、アバンギャルドでもない、でも愛のあるセックス。素敵だ。でも今は何か違う。

「そんな喋り方したっけ?」

「君の恋人は、右目の下にほくろなんてあったのかい?」

 彼は僕に顔を近づけ、顎に手を添えた。

「付けボクロじゃない、本物だ!」

「怖いか?でもこれは初めてじゃないんだよ。自分の穴に聞いてみると良い」

 彼は僕に挿入した。

 声が出ない。

「最高だなあ」

 よく見ると彼とは異なっている。輪郭や瞼、細かい所が。

「イきそうだ。どうやら君もそうらしいね」

 裏返った呻き声、僕の声だ。

「誰!?誰ナンダッ!?アァ!」

「愛してるよ」

 彼が僕に液を注ぎ、僕は気を失う。

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何者 ヒガシカド @nskadomsk

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