正直な二人と異なる回答
ノソン
彼女の体験談
久しぶりに彼女と会ったときに、
「正直村で二人の人に同じ質問をしたら違う答えが返ってきたの。」
こんなことを言われたので、思わず、
「一人は嘘つき村の人だったんだ。」
と返してしまった。正直村と嘘つき村というのは、論理パズルとかによく出てくるやつ。質問をうまく考えると、相手が正直でも嘘つきでも同じ答になる。僕らはそういうクイズみたいなのが好きで、お互いに出しっこすることが多い。正直村以外だと自分の帽子の色を当てるのとか、そんなクイズ。この時もそういうのだと思ったわけなのだけど、少し違っていた。
「これは私の体験をもとにした話なんだけど、不思議な体験だったので聞いて欲しい。」
「そうすると正直村というのも本当なの?」
「うーん、正直村というか出てくる2人の人がどちらも質問に正しく答えたんだけど、それが違っていたという話。」
「なるほど。」
「私は、Aさんに会う為にある村に行きました。Aさんとは約束がしてあったけど、会うのはこれが初めて。」
「ふんふん。」
「待ち合わせの場所の近くでBさんに会って、ある質問をしました。Bさんの答を聞いて、私はそうなんだと納得。嘘をつく必要もないし、後から得た情報からしても本当。」
「最初はAさんではなく、Bさんに会ったんだ。」
「次に待ち合わせの場所で、Aさんにも同じ質問をしました。」
「その回答がBさんのとは違っていたということだね。」
「その通り。さて、その質問と回答は何でしょうか?」
「違う答というのは、片方は『○○である』で、もう片方は『○○ではない』といった形式?」
「うーん。そうそう、『○○ではありません』と『○○です』という答えだったわ。」
「なるほど。質問の答じゃなければ簡単なんだけど。」
「じゃあ、言ってみてよ。」
「『この文は肯定文である』と『この文は肯定文でない』のどちらも正しい。」
「あ、そうか。肯定文であるとすれば肯定文だし、肯定文でないとすれば否定文になるからということか。『この文はるで終わる』『この文はるで終わらない』なんてのでも同じね。」
「その通り。でも、これは質問の答えとしては不適切だ。」
「『あなたの答は肯定文ですか』なんて質問はしないものね。」
「もう少しましなのとしては『あなたは男ですか?』のようなのもある。」
「それはAさんとBさんの性別が違う場合ね。でも、」
「そんな質問も、普通はしない。これもダメだ。」
「そうなのよ。でもわりといい線いっているかも。」
「でも何だろう。学歴、誕生日、血液型、どれもあり得なくはないけど、初対面でいきなり質問するには適切ともいえないし。」
「もっと単純に考えた方がいいかも。」
「なんだろう。もしかして待ち合わせに関係してる?」
「あっ。」
「時間とか。待ち合わせが10時だとして『今10時ですか?』と聞いたら質問した時間によって、『10時ではありません』と『10時です』になるけど。」
「ああ。」
「そんな質問もしないか。AさんとBさんで異なる属性の何かで、待ち合わせに関係するもので何かあるか、なあ。」
「もうちょっとなんだけど。」
「うーん。ダメだ。わからない。降参。」
「『あなたはAさんですか?』って聞いたの。」
正直な二人と異なる回答 ノソン @NOSON
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