正直筆をへし折りたい。

@kuro07rin

第1話

【正直筆をへし折りたい。】



どうも画面越しの皆々様、お久しゅう御座います。ええ、生きておりますとも。誠に残念でありましょうが、私は今の所死にそうにはなっても死ぬ気は毛頭御座いませんので。


却説、この癖の強い題名に驚かれた方も…多少は、いらっしゃる事でしょう。いらっしゃると勝手に思っておきます。『正直筆をへし折りたい。』これは日頃、私の胸中に、常に在住する一言であります。嗚呼、いえ、何も本気で筆を折りたいとは思っておりません。行き詰まった時につい口走ってしまう、言葉の綾と言うものです。

ジャンルを問わず創作者にとって欠かせない存在の、インスピレーション──奴は本当に気紛れであります。厄介であります。目紛しい日常からやっと絞りに絞り出した時間を作品作りに当て、いざ向き合おうとしても中々顔を出してくれず、他の事で忙しい時に限って、急に降ってきやがります。猫か貴様は。貴様にそんなツンデレは求めておらぬさっさと筆に宿り給えカス…ぁっ嘘です御免なさい見捨てないで。

この様に、全く作り手の言い分を聞き入れないインスピレーションは、来ない時は本当に来やがりません。まるで家出した猫か反抗期の生娘の様であります。そうなるといよいよ作者は筆が進まなくなります。書けない。書こうとしてるつもりでは居るが全く書けない。筆が一ミクロンも動かない。これも違う、違う違う。繰り返される入力とデリートは、まるで天国と地獄のメロディーに合わせて徒競走し出したかと思えば殴る蹴るの乱闘に発展し、作者のモチベが下がるに比例して思考がイカれ一種の混沌と化していく地獄絵図の様です。いっそ一思いにへし折った方が良いのではないか。あ、いえ、折るのは万年筆かシャーペンかラップの芯かと言う話ではなくてですね、作者の言う所の筆、つまり作品を書こうとする気持ちの方をです。然し、正直かなりの頻度で掻き立てられるその衝動は、あくまでも衝動的なものでありまして、ふぅと一息二息吐いておけばその内徐々に冷えていくので御座います。そして襲い来るデリートの後悔。デジタルでの入力を消去したならば記憶の雑巾を絞りに絞って何とか思い出し再入力、アナログだった場合はビリビリのくっしゃくしゃに破り丸め屑篭に放り込んだ憐れな原稿を拾い集め、何とか継ぎ接ぎにして安堵の息を漏らします。創作者とはきっとそう言う面倒で厄介で、どうしようもない生き物なので御座いましょう。


てか知らんし落ちは御座いませんしこの作品はフィクションです。

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