0ー13【発覚】


 旧校舎を歩くのも一週間ぶりか。

 ここだ、この階段を降りて廊下を少し歩けば俺達の部室に到着する。

 俺は階段をゆっくりと降りる。相変わらず薄暗いが俺のリーゼントアンテナでカバーするぜ。


 部室の明かりがついてやがる……

 忍者の奴、何しに来やがったんだ?


 忍者は苦手だ。だが、嫌な予感がしやがる。このまま引き下がる訳にはいかねぇ。

 真相を突き止めてやるぜ。


 俺は気付かれないように息を潜め部室へ足を運んでいく。忍者じゃねぇが、忍び足で。

 そして到着した俺が見たもの、それは——


「にんっ?」

「おいテメェ……そりゃ何だ?」


 俺の声に飛び跳ねて驚いた忍者は慌てて尻もちをついた。忍者の手から落ちた黒い塊が俺の足元に転がってきた。俺はそれを拾ってレンズに自分の顔を映してみる。


「何だってんだ、コレは!」

「にんっ!」

「にん、じゃねぇぞゴルァッ!」


 盗撮機じゃねぇかコレは!


「テメェ……知ってやがったんだな……乙音がずっと一人で……この場所で壁打ちをしていた事を。アイツが着替えてるのを盗撮してやがったのか!」

「……か、神原殿っ……誤解でござるよっ!」

「黙れやエロ忍者、いや、淫者だテメェは!」

「インッ!?」


 俺は渾身の力で盗撮機を握りつぶし淫者に投げつけてやった。いつも乙音の頭にぶつけるチョーク手裏剣みたいに思いっ切りな。


「……な、なんて事するでござるか……お、乙音メモリーズが……一年からずっと撮り続けた成長の記録が……っ、あ……」

「吐いたな、ゲスが。お前は終わりだ忍者。」


 忍者はヨロヨロと立ち上がり不敵な笑みを浮かべる。そして声を荒げて言葉を放ってきやがった。


「貴様のような輩がいくら吠えようがいくらでも捩じ伏せてやるでござるよっ……誰もヤンキーの言葉なんざ信用しないでござる……逆に、せ、拙者に暴行した罪を着せて退学にしてやるでござるよ!」


 ……クソ野郎が。


「俺をただのヤンキーだと思うなよ?」

「……な、なんでござるか?」

「今の会話は全部、スマホのボイスレコーダーに保存した。もう一度言うぜ。忍者、お前は終わりだ。この学校から消えやがれ。」


 馬鹿にするんじゃねぇ!

 俺は現代のヤンキーなんだぜ。どうせ俺みたいな奴は機械に疎いとか油断してたんだろうよ。こちとらブラインドタッチも習得済みだってんだ。


「……あばばば……」


 忍者の奴、泡吹いて崩れ落ちやがったか。



 俺はそんなクソ忍者を放置して職員室へ直行。ボイスレコーダーを聴いてもらい事の経緯を説明した。最初はビビってやがった先生達も俺の話を信じてくれた。俺は後の事は任せますとだけ言って職員室を後にする。待たせてるからな、


 ——俺の彼女を。




 待ち合わせ場所に着くと乙音が膨れていた。


「あ、悠一郎さん遅い……」

「うるせ〜、う○こしてただけだっての。」

「う、……もうっ!」


 顔を真っ赤にして恥ずかしがる乙音は何も知らない。……知らなくていい。

 ずっとあんな奴に覗かれていたなんて知ったら、コイツは哀しい顔するだろうしな。


「よっしゃ、寄り道するか!」

「え、悠一郎さんっ、寄り道って不良のする事ですよっ?」

「俺、ヤンキーだぜ?」

「で、でも寄り道って何処に行くんですか?」

「何処でもいいだろ、ほら行くぜ?」

「あ、待ってくださいよ〜悠一郎さ〜んっ!」



 翌日から、忍者の姿は消えた。

 俺は乙音に数日はテレビを見るなとだけ伝えほとぼりが冷めるのを待つ事にした。

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