0ー12【忍者】


 ヤンキーの俺、遂に停学処分を受けてしまったぜ。これも一つの勲章みたいなもんさ。


 あの後、忍者の究極奥義が炸裂した。

 しかしだ。乙音があんな行動に出るとは思ってもいなかったぜ。

 あの時の忍者の顔が忘れられねぇな。意外と俺の彼女に相応しいんじゃねぇかな。



 一週間後。

 停学が解け、俺と乙音は再び登校を始めた。

 しかし何やら様子がおかしい。俺と乙音の事を見る目が明らかに違う。


 俺が歩けば道が開く。それはいつもの事だが……少し実験をしてみるか。


「乙音、お前一人で廊下を歩いて来い。」

「え、何のために?」

「いいから。」

「わ、分かりました。」


 乙音はオドオドと周囲を気にするように廊下を歩く。体育教師が避ける。乙音を笑ってやがった女連中スケバンもどきも小さくなる。

 勿論男共も道を開けた。……これはいったいどういう事だ?


 俺は廊下を歩いていた隣のクラスの男子の額にリーゼントを突き付けて声をかける。


「おい、俺と乙音の事……なんか噂になってんじゃねぇだろうな?」

「ひぃっ神原くんっ……お、おとね……あ、伊草さんの事か。」

「あぁんっ?」

「ひゃー、乙音……さんと神原君は付き合ってるって……う、噂がっ。ち、地下で……そ、そそその……エ、エ……」

「ち、もういい。」


 どうやら乙音は俺の女だからって理由で恐れられちまってるみたいだな。


「あの……悠一郎さん、もういいですか?」

「お、おう。お前も立派なヤンキーだな。」

「えっと……意味が分からないんですけど……あ、そんな事より悠一郎さん。今後は部活、あの場所では出来ませんよね……」


 確かに。あの場所は忍者にバレてしまったしな。

 何とかならねぇもんか。




 放課後、俺と乙音はいつもの待ち合わせ場所で落ち合う約束を交わした。先に乙音の奴が学校を出た。それを確認した俺は下駄箱で靴を履き替えて駐輪場をヤンキー歩きしていた。


「……ん、あれは……」


 俺のリーゼントが反応した。

 ふと旧校舎の方を見ると忍者が入って行くのが見えた。間違いない、あれは忍者だった。


 しかしこんな時間に旧校舎に何の用だ?


 俺は乙音が少し気になったが、少しくらいならと旧校舎へ足を運んだ。どうせすぐに行ってもシャイ呼ばわりされるだけだからな。


 ……

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