0ー11【煙幕】
一番見つかりたくねぇ奴に見つかっちまった。数学教師の志野日、通称忍者。
しかも乙音の馬鹿が半裸状態の時に……
「神原殿、お主遂にやらかしたでござるな。前々からお主は危ないと思っていたでござる。」
ち、んな事言ってるお前の目線が完全に乙音に向いてるじゃねぇか。
「何でござるか神原殿? クラスメイトへの性的暴行、不純異性行為は停学、もしくは退学もあり得るのでござるよ?」
俺は乙音が見えねぇように忍者の視線上に敢えて立つ。そして後ろの半裸に服を着ろと目とリーゼントの揺れで促した。
何とか通じたらしく、わざわざポニーテールを揺らして頷いた乙音は制服に着替え始めた。
忍者は少し名残惜しそうに眉をひそめる。何なんだコイツは。学校中の教師が恐れる俺を、忍者だけはビビらねぇ。
嫌な奴だぜ。見透かされてるようで虫唾が走る。
「さて、神原殿。今から職員室へ連行するでござるよ。伊草殿、お主もそれがしと二人でゆっくり話そうでござる。ぐふふ。」
くそ……ハァハァしやがって忍者が。
振り返ると制服に着替え終わった乙音が今にも泣きそうな顔で震えていた。
そんな顔したら
「さぁ伊草殿、こちらへ。そのような輩から離れるでござるよ。伊草殿はそれがしが……」
「おい忍者……お前……何かと
あーぁ、言っちまった。停学くらいは覚悟しねぇとな。でもいいよな、親父。
俺、コイツ嫌いだわ。
「遂に化けの皮が剥がれたでござるな? それがしに難癖をつけるとは。」
「気に食わねぇんだよ、お前の
「きえぇぇっ! 言わせておけばでござる! こうなったら忍法、親に連絡を使うでござるよ?」
お、親に連絡かよ。
初手から究極奥義で来るとは……
チックショウ……流石に万事休す、か。
「ま、待って下さいっ! 忍者先生っ!」
今まで聞いたことないくらいの大きな声を上げたのはラケットと白球を持った乙音だった。
乙音は俺の前に出ては忍者を見上げ更に続けて言葉を放った。
「か、神原さん……いえ、悠一郎さんとわたしは付き合ってるんです……それにわたし達はここで部活をしていただけで……その……な、何も悪い事なんてしてませんっ!」
「神原殿にそう言えと脅されているでござるか。そもそもこんなヤンキーと伊草殿が付き合っているとかあり得ないでござるよ。無理があるでござる。」
「ほ、本当なんです……!」
「神原殿、職員室へ。お主も来るでござる。この輩にされた事を洗いざらい吐くでござるよ。じ、実際にやって見せて説明を……」
この野郎、言わせておけば。
俺はまだ乙音と手も繋いでねぇってんだ!
……体育ん時におんぶはしたがな。
あーっ、もう我慢出来ねぇ、このまま乙音を忍者に引き渡したくねぇ!
下手すりゃコイツ、乙音に何かしやがるかも知れねぇ、そんな顔してやがる……!
悪いな乙音、もしかしたら部活、もう手伝ってやれねぇかも知れねぇ!
だけど俺はコイツを一発ぶん殴らねぇと気がすまねぇみたいだ。
「に、にんっ!?」
俺が拳を握りしめ忍者に殴りかかろうとした、
——その時だった。
ペチィィィー……ン
忍者の顔面に白球がめり込んだ。乙音の打ち込んだスマッシュが見事にヒットしたのだ。
「お、お前……」
「悠一郎さんっ! 逃げましょうっ!」
乙音は膨らんだ大きな鞄から大量の白球を取り出し、それを連続で忍者に打ち込んでいく!
「スマッシュ! スマッシュ!」
「にんっ! にんっ?」
「このこのこのこのこの!」
「ににににんっ!?」
「全部いっぺんにいっけぇぇ!」
「え、煙幕でござるっ!? ぐあっ!」
確かに煙幕並みの白球の量だ。と、そんな事を考えていると、乙音が俺の手を握り言った。
「悠一郎さんっ! 走りましょう!」
「お、おうよ……! なるようになれってんだ!」
俺はその手を握り返し全力で地下から脱出した。
この後だが、
言うまでもなく、俺と乙音は停学処分を受けた。
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