0ー8【登校】


 翌朝、俺は妹達に、いや……主に悠香の方に叩き起こされ目を覚ました。

 俺のセット前のサラサラヘアを拝めるのは妹達の特権だぜ。って、痛い痛いっ……


「お、起きるから髪を引っ張るんじゃねぇやい! 髪は漢の命、抜けちまったらポマれねぇだろ。」


 俺に戯れつく活発な双子の妹悠香を、少し離れたところから見てるだけの姉悠奈は、頬を赤らめながら小さな身体を左右に振る。


「……おう、悠奈。おはよう、おら、頭撫でさせろや〜うりうり〜!」

「兄ちゃん兄ちゃんっ、くすぐったいデス〜!」

「あーっ、ズルいノ悠香も撫でろナノ!」




 そんないつもの朝、俺は『一日キープポマーレ』で今季最高の反り具合をマークした。

 ふ、リーゼントは最高だぜ。親父、俺も少しは親父に近付けたかな……


 天国から聞こえて来そうだな。この未熟者ってな。俺は今日も立派に突っ張ってるからな。

 安心しやがれ、コイツらの事は俺が……




 さて、朝飯も食った。そろそろ登校時間だ。遅刻すると先生に叱られちまうからな。べ、別にビビってる訳じゃねぇぞ?


 玄関を開けた俺は、とりあえず、そっとそのドアを閉める。何か見てはいけないモノを見た気が。


 深呼吸を一つ、そしてリーゼントチェックの後、気を取直してもう一度玄関のドアを開けた。


「おはようございます、悠一郎さんっ!」


 なんで乙音コイツがいるんだ。


「学校の近くまで一緒に登校しましょう。あ、大丈夫です、近くまで来たら離れますから、悠一郎さんピュアだから。」


 ピュアとか初めて言われたってんだ!


 相変わらず前髪が目にかかってて表情は良く見えない。昨日はポニーテールだったが、今日はいつものように髪を下ろしていて、おばけ感が引き立つ。


「な、なんでお前と一緒に……」

「そ、それは……わたしが悠一郎さんの彼女だからですよ。……駄目、ですか?」


 コンチクショー、そんな上目遣いで見るんじゃねぇやい! 仕方ねぇ奴だぜ、ったく。


「か、勝手にしやがれ。」

「はいっ!」


 コイツといると調子狂うぜ……




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